第28話:菜々美と口論をしていくと……

「何よアンタ? 邪魔しないで貰える?」

「流石にそれは無理です。大樹君が困っているのに見過ごす事は出来ないので」

「はぁ? 何よそれ? アンタは一体大樹の何なのよ?」

「それは……まぁ普通の友達ですけど」

「はん。それじゃあアンタ関係ないでしょ。私はコイツの恋人なんだから私達の話し合いに口出ししないでよね」

「そ、そうはいきません。そもそもアナタは大樹と今現在付き合ってる訳じゃないですよね? だったら彼女面するのは止めてあげてください」


 先ほどまでは凪は菜々美の悪意に面食らって狼狽えていたけど、今は調子を取り戻してそう言い返していった。


「別に今日寄りを戻すんだから別に彼女面して良いでしょ。ってか何でアンタはそうやって私達の邪魔するわけ? 空気読めないの??」

「だからそれは大樹が困ってるからですって。むしろ空気を読めてないのはアナタの方です。大樹に迷惑をかけるのを止めてあげてください」

「はぁ、アンタさぁ……そうやって良い子ちゃんぶるのやめてよね。そういうヤツ私大嫌いだわ。どうせアンタみたいな変な女は大学でも友達とか全然いないんでしょ?」

「い、いや、友達くらい多少はいますけど……」

「ふん、どうせ全員男なんじゃないの? 女子でアンタみたいな変人と友達になりたいなんていう子いないでしょ」

「そ、それはまぁ……確かに大学の友達は男の子ばかりですけど」

「あはは、やっぱりねー! アンタみたいな変な女、私なら絶対に友達になりたいなんて思わないもん! ぷははー!」

「……っ……」

「あー、面白かったー。ふふ、それじゃあもういいでしょ? アンタそろそろ邪魔だしそろそろ帰ってく――」

「いや邪魔なのはお前だよ。さっさと帰れ」

「帰って……って、えっ?」


 俺は菜々美の言葉を遮ってそう言っていった。すると菜々美はキョトンとした表情を浮かべながらもすぐに苛立った表情を浮かべていった。


「は、はぁ? 何でアンタそんな顔して睨みつけてきてんのよ? 別にアンタには何も言ってないじゃん。それなのにそんな顔を私に向けて来るとか生意気じゃない?」

「いや俺だってキレるに決まってんだろ。俺に対して罵倒するのは幾らでもやってくれて全然構わないけどさ、でも俺の大切な友達を侮辱されるのだけは絶対に許せないからな」

「あ……大樹……」

「い、いや何でよ。大樹はそんな気持ち悪い女が大事なの? そんな気持ち悪い女よりも私の方がよっぽど大事じゃないの?」

「そんなの凪の方が大事に決まってるだろ。友達の事何だと思ってんだよ」

「は、はぁ!? そ、そんな馬鹿な……!?」


 俺がそう言っていくと菜々美はビックリとした表情を浮かべていった。どうやら自分の方が凪よりも圧倒的に良い女だと本気で思っていたようだ。


(まぁ確かに顔とかスタイルは滅茶苦茶良いけどさ、その反動で性格が酷すぎる事になってるのに何で自分の方が選ばれると思ってんだコイツは……)


 俺はそんな事を思いながらため息を付きつつ、俺はそのまま菜々美に向かってこう言っていった。


「それで? もう俺に用事は無いのか? それじゃあもう帰るぞ?」

「えっ!? い、いや、ちょっと待ちなさいよ! ってか何でそんなキレてんのよ! だって別に私は何も悪い事なんて言ってないじゃん! 私は本当の事しか言ってないのに!」

「いや、全然本当の事なんかじゃねぇだろ。ってか何でお前は初対面の相手に対してそんな罵倒する事が出来るんだよ? お前には人を思いやる気持ちとかそういうのはないのかよ? はぁ、全くさぁ、少なくともお前が小学生だった頃はさ……俺達が一番仲が良かったあの頃の菜々美は他人を思いやる気持ちが凄くあったぞ?」

「は、はぁ? 何よそれ? ひ、人を思いやる気持ちが無いって……そ、そんなの……アンタだって同じじゃん!」

「俺が? それどういう事だよ?」


 菜々美に向かって思いやりがないと苦言を呈していくと、菜々美はキレ気味になりながら俺に向かってそう反論してきた。


「だってアンタは付き合ってた時に私の事を思いやる気持ちなんて全然持って無かったじゃん! 私は仕事で毎日疲れてるってのに、アンタは私の事全然思いやってくれなかったじゃん! 毎日毎日ちゃんと勉強しろとか、無駄遣いをするなとか、変な遊びするなとか、規則正しい生活を送れとか、いつもそんな酷い小言ばっかり言ってきてたじゃん!」

「それは小言ってか注意だろ。というか俺は今までずっとお前の事を労わってきてたじゃんか? 疲れてる菜々美の代わりに俺が家事全般をやってきてあげてただろ」

「はぁ? 何よそれ? 恩着せがましい事言わないでよね。私の彼氏なんだから代わりに家事全般をするのは当たり前でしょ。私は仕事で忙しいんだからさ!」

「いや別に恩を着せようと思ってそう言った訳じゃねぇよ。でもお前のために今までずっと色々な事をやってあげたのは事実だろ? こんな彼女のために尽くしてやる彼氏今時いねぇよ」

「何それアンタ生意気過ぎでしょ。ってか私の方がお金を稼いでるんだから偉いのはアンタより私の方なのよ? だからアンタはとやかく言わないで家の事をやってれば良いのよ!」

「は、はぁ? さ、流石にそれはふざけすぎじゃねぇか……お前は俺の事なんだと思ってんだよ……!」

「……」


 菜々美は俺に向かって高らかにそう宣言してきた。まるでコイツは自分が正しいと言わんばかりの主張をしてきた。


 そしてその言葉には流石に俺も我慢できなくなってカチンと来たのでそろそろブチギレそうになっていった。しかしその瞬間……。


(……ごめん、大樹。流石にもう限界だよ)

(……え? な、凪?)


 しかし俺がブチギレそうになったその瞬間、凪は今まで見せた事が無いような表情をしていた。そしてそんな表情のまま凪は菜々美に向かってこう言っていった。


「えっと、すいません、菜々美さんでしたっけ? ちょっと良いですか?」

「? って、あぁ、まだアンタいたの? 早く帰りなよ?」

「いえ、そうはいきません。だって私は大樹……いえ、大樹君と関係がある者ですから」

「? 大樹にって? いやアンタはただの友達なんでしょ。ただの友達のクセに私たちの話し合いに勝手に入り込まないでよ」

「いえ、大いに関係があります。だって菜々美さんには言ってませんでしたけど、実は私と大樹君は……正式にお付き合いしているんです!」

「え……?」

「え……って、えっ!?」


 凪は唐突にそんな超衝撃的な話を菜々美にぶち込んできた。


 それを聞いて菜々美は滅茶苦茶ビックリとした表情を浮かべていったし、当然俺も同じようにビックリとした表情を浮かべていった。

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