追放者アベンジャーズの成り上がり英雄譚! ~追放者たちの寄せ集めはチート蟲毒パーティーでした!~
純クロン
第1話 追放されたのでボコボコにしました
「な、何故だ……! どうしてこんなひどいことを……!」
俺は背中から剣を何度か刺されて、痛みのあまり地面に膝をついていた。
そんな俺を囲んでいるのは他の三人のパーティーメンバーたち。ここはダンジョン内の洞窟なので、俺たち四人以外には誰もいない。
近くにあるのは狼の魔物であるキングウルフルズの死体たちだけだ。二十体ほど出てきたので全部俺が倒した。
「うるさい! ヴァルム、お前は追放だ!」
パーティーのリーダーであるダリューンがそう叫ぶ。
「ここで死ね! お前が俺たちの足を引っ張ったせいで、どれだけ今まで危険が危なかったと思ってやがる!」
「そうなんだな! 死ぬんだな!」
魔法使いのベルベルがもっちゃりとしたお腹を揺らして叫ぶ。
俺が他の魔物と戦っている時に、こいつらは俺の背中に剣をグサグサと突き刺してきたのだ!
流石の俺も仲間だと思っていた奴らに、戦闘中に仕掛けられては反撃できなかった。そうして致命傷を受けて今に至る。
「そんな……!? 俺はこのパーティーのメインアタッカー兼メインタンク兼メインヒーラーとして頑張ってきたのに! いったい何が不満だったんだ!」
「黙れ! お前が足を引っ張ってるのが悪いんだ!」
「そうだそうだ! 足手まといは失せろ!」
「そうなんだな! 死ぬんだな!」
俺は今までこのパーティーのために尽くしてきた。どんな魔物だって俺が先頭に立って戦って、身を粉にして頑張ってきた。
むしろ俺がパーティーを引っ張ってきたと思っている。なのにこんなことって……!
「待ってくれ! 俺は必死にこのパーティーのために頑張って来たんだ! 出来る限りのことをして! それを追放だなんてあんまりじゃないか!」
「黙れ! 雑用を俺たちに押し付けやがって!」
確かに俺は他の三人に雑用を任せていた節はある。料理、ダンジョン内のマッピング、夜の見張りなどだ。
だがそれは彼らが「ヴァルムは戦うことに集中しろ」と言ってきたからだ。だから俺はその分だけ必死に戦ってきたのに!
「だってそれはお前らが……!」
「黙れよ! お前が俺たちにした仕打ちを忘れたとは言わせねえぞ!」
「し、仕打ち!? いったいなにを……!?」
「もう話すことはないんだな! さっさと死ねなんだな! 背中をめった刺しにしたんだから成仏しろなんだな! おらぁ!」
「ぐわああああああ!? や、やめろ!? 背中に刺さった剣を蹴るな!?」
ベルベルに背中に刺さった剣を蹴られて、背中がズキズキと痛む。
みんなで仲良くSランクパーティーを目指そうと思っていた。でも俺の頑張りはまったく認められてなかったんだな……。
だがそれでも俺は、仲間だったこいつらを憎むことは……いや恨めるわ。ものすごく怨めしい! こいつら殺したい!
「ちくしょう。よくも、よくもやってくれやがったな! いずれ化けて出て恨みを晴らして……」
いや待て。化けて出るというのはあまりに消極的過ぎる考えだ。
そもそも本当に化けて出られるかも怪しいから、そんな細い可能性に賭けるのはダメだろう。ならば……。
「いやここでだ! ここで恨みを晴らしてやる!」
俺は怒りに身を任せて立ち上がり、三人を睨みつけて背中に力を入れる。すると刺さった剣が抜けて地面に落ちた。
血が背中からボドボド落ちるが問題ない。こいつらを殺す時間くらいは残っているはずだ!
「このっ……化け物がっ!」
「さっさと死ねよクソがっ!」
「その身体でボキュたちに勝てるわけないんだな!」
「メインアタッカー兼メインタンク兼メインヒーラーを舐めるなよ! 俺が死ぬ前にお前らも道連れだ!」
俺は血まみれの身体で三人に襲いかかって……。
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「というわけで恨み晴らして帰ってきました」
「なんでその状況で生きて帰って来たんですか???」
俺は冒険者ギルドの受付で、受付嬢さんに事の顛末を報告していた。
俺はあの三人をボコボコにして半殺しにした後、なんとか回復して無事にダンジョンの外に出れたのだ。
いや死んだと思ったが案外死ななかったんだよ。俺のとある能力のおかげで。
「あの、ところで着替えるという発想はなかったのですか……?」
受付嬢さんは俺の姿を見て、恐る恐る訪ねてきた。
俺はダンジョンを出て着の身着のままで、この冒険者ギルドへとやってきた。なので服は血まみれである。背中とかたぶん血で染料した感じになってるだろう。
「急いで報告をと思いまして。ほら報連相は基本ですし。いつも言ってたじゃないですか。冒険中になにかあればすぐに、なにを置いても報告を優先してと」
「そ、そうですね」
冒険者ギルドは冒険者の問題を裁くところでもある。なのでなにかあればすぐに報告しろと常に言われているのだ。
それにもし俺よりも他の三人が先に戻ってきたら、大嘘をばらまかれる可能性がある。なので着替える時間すら惜しいので、急いで報告しにギルドにやってきたわけだ。
あの三人は半殺しにしておいたが、他の冒険者が見つけたら回復するだろうからな。
……俺はどうやら心優しい人間のようで、あいつらにトドメを刺すことは出来なかった。殺されかけたのに相手の命を奪えなかった。
俺くらいの心の広さを持つ人間はそうそういないのではなかろうか。世界広しと言えども。
「それで俺は『漆黒の牙』から追放されたんです」
「ヴァルムさんが追放されたとなれば、『漆黒の牙』はAランクパーティーからGランクパーティーに格下げですね」
「そこまでですか?」
「はい。はっきり言ってあの三人は戦力外ですし。メインアタッカー兼メインタンク兼メインヒーラーを追放なんて、なにを考えているのか理解できませんよ。『漆黒の牙』から『漆黒の牙』が抜けたようなものです」
「それなにも残ってないのでは?」
「なにも食べれず餓死する無能三人が残りますよ」
俺はパーティーのために頑張ってきたと思っている。
それは決して勘違いではなかったのだ。そう思うと目頭が熱く……はならないが、あいつらへの怒りで身体が暖まってくる。今なら冬でも薄着でいけそう。
「ともかく俺は追放されたので、もう『漆黒の牙』では活動できません。なので他のパーティーに入れてもらいたいのです。そうじゃないと冒険者として活動できません」
冒険者法、十四条一項。冒険者として活動するには四人以上のパーティーを組まなければならない。
この法があるから一人から三人では、冒険者の依頼を受けられないのだ。この法律が生まれてから死者数がかなり減ったそうだ。
ちなみにギルド法の一条から十三条までは全く知らない。だって法律に興味ないし……十四条は散々言われたから覚えただけだ。
受付さんは俺を見てぎこちなく微笑むと。
「わ、わかりました。ではヴァルムさんがメンバーを求めてると募集してみますね」
「ありがとうございます!」
俺は仮にもメインアタッカー兼メインタンク兼メインヒーラーをやってた男だ。どこかのパーティーには入れるだろう。
次は裏切らないメンバーがいいな。流石に背中から刺されるのは痛いし。
とりあえず今日はヤケ飲みだ。新しいパーティーが決まるまで、しばらくの休暇を楽しもうじゃないか。美味しいモノ食べたりしてさ。
一週間もあれば新しいパーティーで冒険の始まりだ!
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「あの、今日もパーティーへの誘いとか来てませんか? そろそろお金が……」
「来てないですね……」
そうして一か月が経った。俺は未だにパーティーに入れていなかった。
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