いざ、ギルドへ
「うん・・・・・・熱はもう無いみたいだね」
「だからそれはもう昨日の時点でそうだったでしょ。もう心配要らないって」
結局、体調不良はあの晩だけですっかり良くなり朝にはもうなんともなかった。
それでもラヴィの宣言通り、その日は一日中家でのんびり過ごし・・・・・・そして迎えた今日。
わたしはうずうずしていた。
あの晩、わたしのコードに何かが起こったのは間違いない。
正直だいぶ酷い目に遭ったけど、過ぎ去ってしまえば残るのはコードに対する期待だ。
その答えを知るのが楽しみだったし、一日焦らされたのもあったから、柄にもなく今日は早起きだった。
まぁラヴィよりは遅かったけど。
今日の予定。
そんなのは決まりきっ・・・・・・てはいないけど、初動は決まっている。
ブラッドコードの確認。
そのためにわたしたちは家を発つところだった。
向かう先はギルド。
頼れるアナライザーの友達はいないし、もちろん辻アナライザーに偶然遭遇するのを待つわけにもいかない。
そんなわたしたちの頼れる味方、コード観測機だ。
その後の予定は実際わたしのコードがどうなっているかと、掲示されてる依頼のラインナップ次第。
この間の忍者襲撃のおかげで多少金銭的余裕がある状態なので、そこら辺はわりと適当で大丈夫。
「よし・・・・・・!」
追放されてから・・・・・・って言うとなんだかちょっと違和感があるけれど、あの日から何かが噛み合い出しているような感覚があるのだ。
だからとっくに期待していなかったはずのコードに、また胸を高鳴らせられる。
言うてもこの間は大して強くならなかったけど、もちろんそれだけで折れるほどわたしの希望はやわじゃない。
他の、ちゃんと強いコードの人からしたら、今のわたしなんてお笑い草かもしれないけど、それでも漠然とした感覚でしかなくても、わたしは確かに前へ歩んでいる気がするんだ。
「ほんとに大丈夫・・・・・・?」
「もう! 大丈夫ったら大丈夫!」
あの晩の様子が側から見た分にもだいぶ酷かった様で、ラヴィは現在心配性発動中。
そのせいで結局昨日もラヴィの部屋で一緒に寝たし。
わたしがわたしの部屋で夜を明かす日はいつ来るのだろうか。
いまいち煮え切らないラヴィの背中を追い越して、家のドアを押し開く。
眩しい日の光がきらりと流れ込み、太陽の熱を柔らかく包んだ風がわたしの鼻先を出迎える。
一日中家で過ごすのがあんまり性に合ってなかったのかもしれないけれど、こうして“外”に触れるだけで何かがみなぎる。
駆け出したくもなってくるような気持ちを抑えて、外への一歩を踏み出した。
この一歩は物理的には小さな一歩だ。
だけどこの一歩が、きっと大きな一歩・・・・・・であってくれよってコトで。
「いざ、ギルドへ!」
はやる気持ちを結局抑えきれず、ラヴィの手を取って駆け出す。
そして・・・・・・。
「おわっ・・・・・・!?」
畑から帰る途中だったっぽいおじさんにぶつかりそうになった。
やっぱり危ないから走るのはよそう。
なんて行き当たりばったりで、なんて考えなしなんだろう。
それがどうしてこんなに楽しいんだろう。
わたしの様子にずっと心配性モードだったラヴィが笑って、それで一気に力が抜ける。
しつこいくらいわたしを気にかけてくるラヴィは、それはそれで変な感じがして面白かったけど、やっといつもの調子が戻って来たみたいだった。
「ま、結果がなんであれ・・・・・・コーラルが倒れたから不発だったアレ。帰ったらやり直そうか」
「あ、そういえば結局何買って来てたの?」
「教えてあげないよ。もっかい買ってくるんだから」
「え、また買うの!?」
「日持ちしないやつだからね。あのとき買ったのは全部私が食べちゃった」
「日持ちしない、ね? ヒントゲーット!」
他愛もない会話が、しかし足取りを軽快なものにしていく。
はちゃめちゃな頭痛でゲーッとしてたその苦痛の分だけ、今日は楽しい日にするんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます