第二章──挑戦者《チャレンジャー》

 エルキア王国、首都エルキア──西部区画三番地。

 マスターを脅すようにして獲得した連泊を、一泊もすること無くチェックアウトし。

 兄妹は翌日の朝を、ステファニー・ドーラの家で迎えていた。

 いや、正確には──その浴室で、朝を迎えていた。


「……にぃ、説明、ほしい」

 が、頭を洗われながら言う。

「説明? ギリギリ健全なら、入浴シーンなしにはじまらん、それ以上の説明が?」

「……にぃ……入浴シーンは……修正……小学生…は、かんぺきNG……」

「安心したまえ、妹よ『湯気さん』が仕事してくれてるから、ギリで『健全』だ」

 と、不自然なまでに湯気が立ち込める浴場を眺めてそらが言う。


「ひょっとして、それだけのために、『大浴槽を沸騰させろ』と言ったんですの?」

 あきれた様子で、しろの髪を洗っているステフが言う。

「それだけのためとはなんだ。重要なことだろうが」

「そのために、使用人たちがどれだけ無駄に薪を燃やしてるかわかってるんですの?」

 しかも沸騰している湯船には当然、入れない。

 湯気を起こすのに無意味な水を使わされているわけだが……。

「それ言ったら、こんな大浴場を一人で使ってたおまえの無駄はどうなる」

「──うぅ……」

 さすが元王族の血筋というべきか。

 ステフは、空の想像を上回る金持ちだった。

 彼女が保有するかローマっぽい建築様式の屋敷は、日本しか知らない兄妹には『城』と言わても納得する大きさで、たった今使っているステフ個人の浴場も、十人は使えそうな広さだった。

 同じく、ローマっぽい装飾のその浴場を、『全年齢』にすべく沸騰させた浴場は。

 負け込んで滅びかけている人類の家とは思えない豪華さだった。


「まあ、スマン。妹は嫌いでな──『十一歳の裸は十八禁でもアウト』ってこねておれに洗わせないし、中々風呂に入らないんだよ。ギリギリ健全ならオッケーと昨日自分で言ったのを、利用しない手はないと思ってな」

「……うぅ……にぃ、嫌い」

 だいたいそのルールは、ステフに適応するもののはずでは。

 と言外に抗議して言うしろ

「妹よ、おまえはちゃんとすれば、すげー美人さんなんだから、ちゃんとしろって」

「……美人じゃなくて……いい」

「兄ちゃんは美人さんの白のほうが好きだなー」

「……うぅぅぅ……」

 そこまで言われてもなおかつとうは続くのか、白がうめく。

 ──別にどうでもいい。

 いや、兄妹の仲の良さに多少むくれる感情があるのは事実だったが無視して。

 それより、どうしても気になることがあった。


 この状況だ。だ。

 何故裸の白の髪を洗い、


「──ソラ……何故わたくしは、んですの」

 ──いや、みなまで言うな。

 、は重々自責した上での質問だった。

「話を聞いてなかったか? そうしないと白がに入らないからだよ」

「な、じゃあ私はどうでもいいんですのッ!?」

「ん、見て欲しいの?」

「そ──そんなわけないでしょっ! 嫌がらせかと聞いてるんですのよ!」

「安心しろステフ。おまえの裸体は後で『別の手段』でしっかり確認する」

「──なっ」

 言われて、真っ赤な顔で体を隠す。

 一方で、自分に興味がないわけではないというそらの言葉に。

 あろう事か〝あん〟を覚えて。

 頭をぶつける壁を探して周囲を見回すステフに、しかし空は悲痛に言う。

「だがしかし、今は許せ──『湯気さん』を過信は出来んのだ」

「………はい?」

おれも一緒に風呂に入ってドラ息子がやる気を出したり、湯気さんの活躍不足で妹を直視してしまったら十八禁どころではない、になってしまうのだ」

「───は、はぁ」

 意味はよくわからなかったが。

 つまるところ、空には今は見る必要がないということらしかった。


 それがステフの理解の限界だったのは仕方ないのだろう。

 浴場に仕掛けた二つのケータイとタブレットPC。

 その小さなカメラの意味を、ステフが知る由もないのだから。


 ──後でかんとくに動画を確認してもらい、大丈夫そうなら見せて貰おう、と。

 そらは心に誓い、振り向きたい気持ちを抑えつけた。


   ■■■


「ふー……サッパリしたぁ……」

「……むぅ……髪さらさら……かゆい……」

 しろから上がるのを待って素早く自分もシャワーを済ませた空。

 久しぶりに体を洗えてすがすがしい様子の空と、対比的に不機嫌そうにこたえる白。

 ──なるほど、空が言う通り、髪を洗い丁寧にかした白の姿は。

 雪のように白く、柔らかそうな、緩やかなウェーブを描いた髪が、陶器のように白い肌を更に引き立たせ──整った丸い顔立ちと赤いひとみによって、職人芸の人形のようだった。

「いつもそうしてればいいのに、もつたいい」

「……どうせ、にぃ以外……みせない」

 だが、そういう空も、無精ヒゲをってさっぱりした姿は。

 なんというか。

(し、失敗しましたわ)

 と、直視したステフに思わせ、鼻血を抑えることに必死にさせる程度には、その……。

 初対面のゲスっぽさが抑えられ、「好青年」といえるさわやかさだった。


 が──問題は、そこではなく。

 鼻血がこぼれるのを必死で我慢しながらステフ。

「ふ、ふ、二人とも──服を着なさいなぁぁッ!」

 ──と、きょとんとする、タオルを巻いただけのに叫ぶ。

「……洗いに出せつったのはそっちだろ。こちとら一張羅だったのに、乾いたのか?」

 この世界に乾燥機があるとは思えず、そう問う空に。

「そ、そそ、それは……じゃあ別の服を用意して来ますわよっ──だ、男性用の服なんてあったかしら……う、うぅ……なんでこんな……」

 ぶつぶつ言いながら、ステフはきびすを返して、服を探しにでる。


 ────そして十分後。

 先ほどと同じ場所で、ひざを折って頭を垂れてステフは激しく後悔していた。

(し、失敗しましたわ………っ)

「ほっほー、これが執事服──いわゆる『えんふく』ってやつかぁ……ちょっと堅苦しいけど、コスプレみたいでおもしろいなっ! しろも似合ってるぞ、それ」

 うなだれるステフの眼前には、執事の格好をしたそらと。

「……ひらひら、多い。動きにくい……」

 ステフの幼少時のドレスに身を包んだ白がいた。


 半裸の二人にあう服を探しにでたはいいものの。

 男性ものの服なんて使用人の──つまり執事達の服くらいしかなく。

 同じく十一歳の少女にあう服など、自分の幼い時のものくらいで。

 兄妹のその姿は、高貴な出自のれいじようと、それに仕える執事さながらで──。


 ちらりと。再度それをいちべつするステフ。

 肩幅が広く細身故か、妙に似合いすぎている執事風の空に、高鳴る胸と。

 それを従えているとも見える妹に、締め付けられる胸に三度ステフ。

「失敗、しましたわ……」

「うん? なにが」

「何でもありませんわよっ!」

 知らず口からこぼれていた内心に焦りつつ、頭を振るステフ。

 床についていたりようひざを払って立ち上がるステフに。

 そんな乙女の機微に気づけるなら、十八年どうていやってないそら

 さてと、とつぶやいて。

「睡眠もとって、にも入ってさっぱりしたことだし──ステフ」

「え、あ、はい? な、何ですの?」

「何慌ててんだ。この家……屋敷──城?」

 生まれも育ちも日本国・東京である空には、ステフの〝すみ〟を当てはめるカテゴリーが思いつかないのか、しまいには「まあ何でもいいが」と結論づけて。

「ここ、図書室とか書斎とか、なにか調べ物出来るようなとこ、ないか?」

「あ、はい……ありますけど……何をするんですの?」

「ステフたんはお耳が遠いのかな? 調に決まってございましてよ?」

「そ、ソレは聞こえてますわよっ! 何を調べるのか聞いてるんですのよ!」

「何って……この世界のことに決まってるだろ」

「──〝〟?」

 まるでがあるかのような言い方にステフが戸惑っていると。

「……にぃ、それ……言ってない」

 まだパサついた髪に納得してないのか、不満げにしろが言う。

「──ん? あれ? そうだっけ?」

「あの……何のことか話が見えないんですけど?」


「あー、なんだ。改まるとなんて説明すりゃいいのか困るな」

 では、信じてもらうのがネックになるお約束イベント。

 どう言えば信じて貰えるか、空は慎重に言葉を探し。

 ──頭をかいて、ため息ついて。

 明らかに面倒くさくなった様子で。

 無造作に、テキトーに言いはなった。

「よーするにおれら『』なのよ。だからこの世界の知識が欲しいわけ」

 ──と。


   ■■■


 案内された書庫──いや。

 もはや高校程度の『図書館』の広さのステフの

 相当数な本が壁一面、理路整然と並ぶ本棚を埋めており。

 確かに調べ物にはうってつけだが──。

「……なあ、ステフよ」

「はい? なんですの?」

 そらは一つ、想定外の大きな障害にぶちあたっていた。


「──?」


 さっぱり読めない本を手に、空は頭を抱えてうめいた。

「ニホンゴ? よくわかりませんけど人類種イマニテイの公用語は『人類語』に決まってますわ」

「うわ……ド・シンプルな世界ですこと」

 つまるところ、会話はか成り立っているのに。

 本に書かれた文字は、全く読めないという問題に突き当たっていた。

「……じゃあ、ソラ達は、本当に異世界から来たんですのね」

「ああ、まあ信じてもらえないだろうけど──」

 こういうのは中々信じて貰えないのが定番だ、信じて貰う気もない様子の空に。


「あ、いえ。別にそれに関しては、なんとも思いませんわ」

 さらっと答えたステフに、空がきょとんとする。


「は? なんで」

 逆にきょとんとステフが返す。

「なんで、と言われても。森精種エルフ達が使う高度な魔法には、異世界からの召喚魔法もありますし、そんなに信じられない話でもないからですわ。第一、少なくともこの国の人じゃないのは、服や顔でわかりますし、かと言って人類種イマニテイにしか見えませんし……」

 ──そして、今や人類の国はここを残すのみ──と。

「あぁ……そっすよね~。ここファンタジー世界ですもんね~……はぁ」

 大きく肩透かしを食らって、ため息をこぼす。

 そして改めて読めない本に向かい合って、頭をかきむしる空。

「んー、しかし自分達で情報収集できないのは面倒だなぁ。覚えるかぁ……しろ?」

「……ん」

「どうだ?」

「……ん」

 空と白。

 兄妹にしか伝わらない意思疎通が行われたようで。

 二人は静かに本に目を落として、黙り込む。

 その静寂をしり目に、ため息ついてステフ。

「……それで、わたくしはどうすればいいんですの?」

 今度は家庭教師でも『貢げば』いいんですの、と皮肉気味に付け加えて。

 が、本から視線を外さずそらが違う要求をする。

「いや。別の頼みがある」

 そう言った空に、昨夜、そして今朝のことを思い出し、さっと身構えるステフ。

 どんな変態チックな要求をされても驚くまいと覚悟だけは決めるステフだが──

「さしあたって幾つか質問に答えてくれないかな」

「──は……あ、はあ。それは、構いませんけど」

 予想外にまともな要求に、胸をなでおろすステフに。

 至ってな顔で空が言う。


「昨日さ、胸をんでも無抵抗だったのに、スカートをめくろうとした途端突き飛ばしたのはなんで──わかったって、真面目にやるよ冗談だって……」


 ステフの射貫くような視線を受けて、再び視線を本に落として空が言う。

「んー、じゃあ『人類種イマニテイ』って言葉、良く耳にするけど、他の『種』ってなんだ」

 だが、それが心底意外な質問だったようで、ステフが問い返す。

「……ソラの世界には、人類種イマニテイしかいなかったんですの?」

「少なくとも意思疎通が可能だったのは『人類』だけだったかなぁ──で?」

「あ、えっと……そうですわね……」

 自称通り、異世界人ならから説明したものか考え、ステフが切り出す。

「まず──〝神話〟はご存知で?」

「『十の盟約』が生まれた経緯か? 噴水で楽器鳴らしてた吟遊詩人から聞こえたな」

「わかりましたわ──では──」

 ──こほん。

「『種』は、神が『十の盟約』を適用した知性ある【十六種族イクシード】を指しますの」

「イクシード……」

「【十六種族イクシード】は、『十の盟約』のもと、互いに対する権利侵害、殺傷、暴力、殺し合い──その一切を禁止され、その結果、世界から戦争はなくなったわけですのよ」

「……なるほど。食料はどうするのか不思議だったが──知的生命同士のみの『盟約』か」

 本を読みながら、それでも話はしっかり聞いている様子の空を。

 内心、器用ですこと、と感心しながらステフは続ける。

「でも、とでも言えばいいんですの? つまり領土取り合戦──『くにりギャンブル』は、今も続いているんですの」

 〝国盗りギャンブル〟──同じく聞いたことのある単語に空は反応する。

「──人類種イマニテイの国はここ一つしかないんだったな?」

「……今は、そうですわね……別に各種族、国は一つなんて決まりはないんですけど──人類種イマニテイは、このエルキアが最後ですわ」

 ──と。そこまで聞いてから。

 そらはあえて、答えのわかっている疑問を提示する。

 と、の常識を比較するために。

 すなわち。

「戦争がなくなったのに何でくにりする。話し合いで解決出来ないのか」

「……え、えっとそれは……」

 だが、言いよどむステフに代わり、妹が答える。

「……資源は有限……生物は、繁栄すれば無限……有限を無限で割れば……共倒れ」

「そ、そう。そういうことですわ!」

 先にこたえた妹の意見に、乗っかるようにしてステフが慌ててうなずくのを見て。

「……おまえさ、実は考えたことなかっただろ……」

 妹が先に答えてしまったために、参考にならなくなった意見にあきれてステフを見る空。

「ななな、何を言ってるんですの、そのくらいのこと!」

 ──まあ、生まれた時からそれが常識だった世界なら。

 ゲームでのか、疑問に思っても答えは出しにくいだろう。

「……ともあれ、やっぱそのへんはおれらの世界と同じってことだな」

 ため息ついて空。

 〝戦い〟はなくなっても〝争い〟は、なくならない。


 ──すなわちそれは『完全な平等』がありえないからで。

 限りあるを譲り合うくらいなら奪い合うのが『椅子取りゲーム』だからで。

 その結果『少数』の豊かさの代償に『多数』が貧乏くじを引く──

 全く、自分たちの世界となにも変わらないということで………


「……で、その【十六種族イクシード】って具体的にどんな種族がいるんだ?」

 思考をカットして、話を戻す空に。

 えーと……と、覚えさせられたものを、指折り数えながら思い出すようにステフ。

「唯一神に敗れた一位の神霊種オールドデウス、二位の幻想種フアンタズマ、三位の精霊種エレメンタルとか──あと龍精種ドラゴニア巨人種ギガント……森精種エルフとか獣人種ワービーストとか──ですわね」

「……なるほど、王道的ファンタジー世界ってとこか」

 途中から十六種すべてあげるのをあきらめたのか。

 とかで締めくくったステフに感想をこぼし、ふと疑問を覚える空。

「なあ、その『何位』……とかってなんだ」

「え、と。私もあまりわかってないですけど、のことらしいですわ」

「──位階序列?」

「ええ、簡単にいうと魔法適性値の高さ、と聞いてますわ」

「らしいとか、聞いてるとか、あいまいだな随分。ステフ、ちゃんと勉強してるか?」

 ニートの自分を棚にあげて言うそらに、むっとした様子でステフ。

 いいですわよ、と言い添えて、せきばらい一つ。

「言っておきますけど、わたくしはちゃ~んとアカデミーまで卒業してますわよ! 位階序列については人類はそもそも研究が進んでないんですの──だって人類種イマニテイは第十六位──つまりなんですもの。研究しようにもんですのよ」

「……ゼロ?」

 本から視線をあげて、空が問う。

「ん──? ちょっと待て、使のか?」

「ええ。それどころか魔法の感知すら出来ませんわ」

「……なんかこう……アイテムを使えばとか、そういうのも?」

「魔法で作られたゲームを使うことは出来ますけど……それはゲームが魔法で動いているだけですし──人間が魔法を使うことは、出来ませんわ」

「──絶対?」

 しつこく問いただす空に、しかしステフ、気を害した様子もなく。むしろ──

「絶対ですわ。『精霊回廊』──魔法の源に接続する回路が人類種イマニテイにはないんですの」

 少し顔を伏せてステフ。

「だから、『くにりギャンブル』で負けるんじゃないですの……」

 ──ほう。

 薄く苦笑して、空が続けて問う。

「……じゃあ逆に、一番く魔法を使うのは? やっぱ一位?」

「あ、いえ。一位まで行くと、神々──存在そのものが一種の魔法で、一般的に、一番魔法を使うのが上手い、と言われているのはやっぱり第七位の『森精種エルフ』ですわね」

 エルフ。典型的なイメージが脳裏をよぎる。

「──エルフ……エルフってアレか、耳がとんがってて、色白で?」

 異世界人なのに、よく知ってますわね、という顔でステフ。

「ええ、そうですわ。現在、世界最大の国『エルヴン・ガルド』も、その魔法を駆使して大国に上り詰めているわけですし、魔法と言えば、森精種エルフの代名詞ですわね」

 ──ふむ、とつぶやいて。

 あごに手をあてて、これ以上ないほど真剣な眼差しで虚空を見て考えふける空。


「──っ」

 えんふくで、身なりを整えたその真剣な横顔に高鳴る心臓を。

(錯覚錯覚錯覚──植えつけられた感情ですわ)

 とじゆのように心の中でステフが唱えている間に、考えがまとまったらしい空。

 何かを探るように、言葉を選んで、問う。

「……魔法を使えない種族の……〝大国〟はないのか?」

「え、あ、いえ、たとえば十四位の獣人種ワービーストは、魔法を使えないですわね……」

 しどろもどろになりながらも、何とかこたえるステフ。

「そのかわり、けたはずれた五感で魔法の気配や、人の感情を読みとるそうですわ。東南の大海洋の島々を併合した獣人種ワービーストの国「東部連合」は、今や世界第三位の大国ですけど──」

 苦々しく、腕に添えた手に無意識に力を込めて、ステフが続ける。

「……魔法そのものは使えなくても、人類種イマニテイが及ばないような能力で『エルヴン・ガルド』を──圧倒は出来ないまでも、きつこうしてる種族、国は確かにありますわ。でも逆に言えばそれはすべて、人類種イマニテイからみれば『超能力』や『超感覚』の類を使ってのことですわ」


「──へぇ。なるほどな」

 人間は魔法を使えないし、使われたことすら気づけない。

 一方的に、見破れないイカサマを使われては、勝ち目はあるまい。


 ───


「なるほど、そういうことか」

 と、そらが合点が行った様子で深くうなずくのとほぼ同時。

「……にぃ──おぼえた」

 という、しろの声が響いた。

「お、さすが」

「……もっと、ほめる……」

「おう、当然だとも。さすがおれの自慢の妹、天才少女めっ! このこのっ」

 立ち上がって白の頭をくしゃくしゃになで回す空に、猫のように目を細める白。

 ──それを、意味が分からずぼうぜんと眺めるステフがつぶやく。

「……え? 何を、おぼえたんですの?」

「なにって、だろ」

 きょとんとした顔でステフに視線を向けて、さらっと言ってのける空。

「しっかし、マジさすがだな。俺もうちょいかかりそうだわ」

「……にぃ、遅い」

「ふふふ、男は早いより遅い方がいいんだぞ?」

「…………にぃ、小さい」

「ち、ちちちち小さくないわ!! な、何を根拠に────ステフ、どうした?」

 ぜんと、二人のやり取りを眺めていたステフ。

 声を裏返して、言う。

「あの……聞き間違いですの? ──って言ったんですの?」

「うん? そうだけど?」

「……こくっ」

「──この、短時間で? 冗談ですわよね?」

 ひきつった顔で再度確認をとるステフに、こともなげにそらが答える。

「別に驚くことじゃないだろ。こうしてしやべれる程度には文法も単語も全く同じなんだ。だったら文字さえ覚えれば終わりだろ」

「……それを……まだ覚えられない、にぃ」

「十数分で覚えるお前が早すぎるの。兄ちゃんお前ほど頭良くないんだ、あと一時間は欲しいわい。それよりさ、これなんて読むよ。この記号の法則性がつかめなくてさ──」

「……それ、は日本語、じゃなく……ラテン語系の文法、で読めば……」

「いや、その線は考えたんだけど、すると文法的に述語の位置がおかしいだろ」

「……漢、文……」

「え、記述だけ倒置前提かよっ ややっこし──あ、でも確かに成立する」

「……にぃ、もっと言葉、おぼえる……」

の古文まで出来るおまえが特別なんです~ぅっ。一般ピーポーな兄ちゃんはも出来ればゲームやるには困らないから問題ないんですぅ」


 ──そのやりとりを、信じられないものを見る目でステフ。

 だが、兄妹は特に気にする様子もない。

 当たり前のことのように、さらりと言っている二人だが。

 言葉が同じ、会話が出来る、文字を覚えるだけ。

 なるほど羅列すれば、いかにも簡単そうに見えることだろうか。

 だが彼らは、そこに重大な事実を織り込んでいない自覚は、あるだろうか。

 すなわち──。


 〝だれにも教わらず〟それをやるのは、『』ではなく『』だと。


 それを、こんな短時間でやってのけ、誇りもしない。

(か、彼らの世界では──これが普通なんですの?)

 もはやおのれの理解を完全に逸した生き物二人。

 異世界人の兄妹を見るステフは、背中に寒気がはしるのを。

 だが同時に、胸のあたりにはうっすらと熱がこもり出すのを感じていた。

 ……ひょっとして。

 もしかして自分は。

 とてつもない人達に出会ってしまったのではないか。


 それこそ──


「──ん? どした?」

 ステフの視線に気づいたのか、振り返るそらにステフの鼓動が跳ね上がる。

「え、あ、いえ、その──ちょっと、お茶を、れてきますわね」

 言ってそそくさと図書館を出て行くステフは、ほんのり耳が赤い気がした。

 それをいぶかしげに見送って空が言う。

「……なんだありゃ」

 だがその様子に目も向けず、相変わらず本を読みながらしろ

「……にぃ、女心……わかって……ない」

「──わかれば十八年どうていやってません。つか今のやりとりに女心関係あったか?」

 十一歳の妹に乙女心を説教される十八歳男子の図。

 男は女より精神的な成熟が遅いと言われるが……。

 少なくともこの場に限ればそれは事実のようだった。

「……人の心、読むの……しろより、得意なのに……ね」

 ぼそぼそ言う白に、だがむしろ誇らしげに言い切る空。

「それをゲームに反映させることと、気遣いが出来ることは全く別問題だからな」

 いわば女というのは──いや〝人間というのは〟……そう。

 毎秒数万の、時間制限付きの選択肢が浮かぶギャルゲーと同じだ。

 そんな無理ゲー、出来るわけがないのは自明の理ではないか。


 ──が、今はそんなことはどうでもいい。

「よしっ……」

 妹のアシストによってようやく人類語を読めるようになった空。

 本を一冊読み切れたのを確認し。

 パタン、とハードカバーの本を閉じる。

 そして、真剣な顔で、顔の前で手を組み。

「さて──白」

「……ん」

「もう気づいてるよな」

「……うん」

 兄妹が、二人しかわからない言葉を交わし。

 兄は珍しく自信なさげに、問う。

「──どう思う?」

 だが、白はただ目を閉じて、答える。

「……しろは──にぃに……ついてく」

 わずかに目を開いて、いつもの無表情で、淡々と。

「……──どこへ、でも」


 ──、か。


 親父おやじの再婚相手が連れてきた『妹』──しろ

 生まれつき頭が良すぎた妹と。

 生まれつき頭が悪すぎた兄。

 いびつすぎた故に本物の兄妹より兄妹らしくみ合った二人は。

 やがてその両親にさえ見捨てられて。

 友もなく味方もいなくなった二人は、ある約束を交わした。

 ──出来すぎる故に、他人ひとを理解出来ない妹。

 ──出来なすぎる故に、他人ひとの顔色を読めすぎた兄。

 お互いを補完し合うため、当時十歳の『兄』が出した提案に。

 当時三歳にして多言語を操った『妹』は、うなずいて指切りをした。


 そんな『妹』の頭をでる。

 あれから八年──。

 こんな自分について来てくれると言った妹──白を。

 だが結局、部屋から連れ出すことも出来なかった兄──そらに。

 後悔がないかと言われれば、それは。


「ま──〝アッチの世界〟よりは、楽しいとこに連れてってやれるか?」

 遠く地平線の彼方かなたに見えるチェスのコマを見て。

 空はケータイを取り出し、タスクスケジューラーを起動させた。


   ■■■


 コポコポと沸くお湯を凝視するステフ。

 茶葉を蒸す時間は当然ながら、茶をれる時は湯の温度が重要だ。

 お茶菓子は先日作ったパンケーキ。

 砂糖が人類の領土で取れなくなって久しい今、茶菓子としては物足りないが。

 その分、シナモンなどの香料で作った、自信作だった。

 ──ティーセットと、カットしたパンケーキを載せた小皿をトレイに載せて。

「……よし、たぶんこれでいいはずですわ」

 一仕事終えた達成感に、ふぅと額をぬぐうステフに。

「あのお嬢様」と。

 ずっと声をかけるタイミングを計っていたらしい、メイド達が声をかける。

「あら、どうしたんですの?」

「いえ……失礼ながら、お嬢様こそ、どうかなされたので?」

「……ほんとに失礼ですわね。なんですの突然」

「いやその……申し付けてくだされば、私ども、メイドがお茶もお茶菓子もご用意致しますのに、無言でご自分でれはじめるものですから……しかもそんなに頑張って……」


 ────……………。

 あれ?

 そういえば、なんで自分がお茶を淹れなきゃいけないのか?

 と、その疑問に至ったステフの脳裏に。あるイメージが過ぎる。


『お。しいな。ステフ家庭的なことも出来るのか』

 という、ティーカップ片手に笑顔の、そら


 ────…………ぼっ、と。

 顔に血が上る感覚に。

「────あぁぁぁあああッもぉぉぉぉおおお!!」

 叫んで壁に頭を打ち付けるステフ。

「なんでお手製のお茶菓子で家庭的な面もある、とかアピールしようとしてるんですのよわたくしわっ! あんな男、そこの水と──あと石か草でいいじゃないですのよっ!」

「お、お嬢様っ! お気を確かに!!」

「メ、メイド長! お、お嬢様がっお嬢様がお気をお触れに──!」

 ゴスゴスと鈍い音を響かせるステフの額を止めるべく、メイド達が狂乱に落ちる。


   ■■■


「……はぁ~……」

 ため息ついて廊下を歩くステフの手には、銀のトレイ。

 その上には、二人分の──つまり兄妹のためのティーセットと、お茶菓子。

 結局感情に勝てず、自分で淹れたものを持ってきてしまったことに再度ため息。

 自己嫌悪、だが同時に、美味しいと言ってもらえたら、と思うと──

「……期待してる自分がいるのも否定出来ないんですのよね……はぁ」

 だが。

 ぴたりと歩みを止めて、ステフ。

「ちょっと、待ちなさいステファニー。異世界人の口に、合う味ですの? これ」

 確かにステフはお茶も、料理の腕も自信があった。

 だが、相手はである。

「あ──しまっ──」

 再び、脳裏をよぎるイメージ。


『うげ、ごめん、おれコレ、パス』

 顔をしかめてそういうそら


「あぁぁぁ………ま、まずいですわっそれじゃ『メイドがれたものだから』という逃げ道もなくなるじゃないですの──って、何の逃げ道なんですのよッ! 別にどう思われようがどうでも──よくないですわ! あぁぁんもう……これ、のろいですわ……」

 もう混乱しすぎて収拾がつかなくなっているステフ。

 深呼吸して、思考整理という名の、言い訳を組み立てる。

「そ、そうですわ。散々鹿扱いされてるんですもの、この上お茶の一つ、お菓子一つも作れないと思われたんじゃ、ドーラの家名が廃りますわ。これは間違いなくしいですわ、口に合わないなら文化の違いであって──つまりこれは断じて──その」

 ブツブツと。

 言い訳をつぶやきながら、両手がふさがった状態で。

 書物庫の扉を苦労して開けて、戻るステフ。

「──あれ?」

 ──が、見渡したそこに、先ほどまでいた兄妹の姿はない。

 見回すと、部屋の

 階段を登った先、ベランダに続く扉が開かれ、風にカーテンが揺れていた。


 ベランダに出るステフ……そこに兄妹ふたりはいた。

 執事服の兄は、ベランダの手すりから身を乗り出すようにケータイで街を撮影し。

 白髪の令嬢を思わせる妹は──その兄の足を背もたれに、本を読んでいた。

 ──まるで、離れたら死ぬとでも言うように、違和感のない二人一組。

 絵になりすぎる光景──関係性に。

 少なからず胸が締めつけられる感覚を覚えたが、気のせいと言い聞かせるステフに。

「……街、盛り上がってるな」

 と、空が外のけんそうを眺めながら、声をかける。

「──そう、ですわね。まだ国王選定のギャンブル大会は、続いてますもの」

 答え、ベランダのテーブルにトレイを置き、ティーカップにお茶を注ぐ。

「……その……お茶、ですわ」

「お、サンキュ」

「妹さんも」

「……ん」

 お茶を一口含んで、再び街を眺めるそら


 最初の印象──『典型的なファンタジー世界』の街並み──とは、少し違った。

 ──街は、戦争が禁止され、壊されないからだろうか。

 ローマ建築、古典建築、バロック建築と似た建物が混在していた。

 街路は舗装されているものの、走るのは馬車で、遠く港には三本マストの帆船。

 蒸気機関すら発明されていないと見える。

 更に遠く見える山に作られた段々畑は、都市の様式と比べてすら古い農作法だった。

 ──戦争をしない反動がここに出ているのだろう。

 戦争は『化学』を加速させ、肥料や燃料に依存する技術を躍進させる皮肉な面を持つ。

 そもそも、ステフの図書館で眺めた本はほとんどが手書き──つまり写本だった。

 活版印刷すら、発明されていないのか、普及していないのか。

「ルネサンス中期のヨーロッパ、か。工業革命で空が汚れる前の……れいな街だ」

「……ストラテジーゲーム……丸引用……乙」

 ──だが、と空は思う。

 神話によれば、星を焦土と化したは、数千年前というレベルですらない。

『盟約』が交わされてからすら、数千年が経過しているという。

 魔法が一切使えない〝人類種イマニテイ〟が。

 つまり自分達の元いた世界と対等な条件の〝人間〟が。

 数千年かけて、十五世紀初頭の自分たちの世界の水準にとどまっているなら。

 ──魔法なんてインチキが使える種族の文明は今、いったいどうなっているのか。


 ふと、空が問う。

「なぁステフ──おまえ、王になりたかった?」

「──はい?」

「王族じゃなくなるから、必死だってうわさは聞いたが」

 宿を兼ねた酒場の外で聞いた話を思い出して問う。が。

「──それは別に、どうでもいいですわよ」

 ──しよせん、噂は噂だ。一笑に付されて流される。

 空の隣に並んで、ベランダから身を乗り出して、街並みを眺める。

「……この国──エルキアも、そこそこ大きな国だったんですのよ?」

 遠くを──過去を見るような目で、そう言う。

「昔、人類種イマニテイの国は世界にいくつかあって。その中でも最大の国だったんですの」

 少し誇らしげに、しかし、皮肉のように続ける。

「『十の盟約』以後、負け続けの人類種イマニテイの『──ね」

「………」

「盛り上がってるように見えまして? でも……もうエルキアはたんしてるんですの」

 再び街のけんそうを、しかし今度は、かなしそうに眺めて。

 その視線を追って、想像はつく、とそら


 領土を失い、狭い国土に過大な人口。

 資源・食糧の不足は経済的な行き詰まりを産み。

 食料を作ろうにも土地がなければ、生産物がなく生産物がなければ職がない。

『十の盟約』のおかげで治安こそ安定するだろうが、

 ──この世界に来てすぐ。自分達を襲った盗賊を思い出す。

 兄はがけの方向を見据え。

 足にもたれかかって本を読んでいた妹もまた、視線をステフに向ける。

「前国王──わたくしじいさまくにりギャンブルで負け、今の首都を残すのみまで追いやらせたのは事実ですわ。でも元々人類種イマニテイはとっくに負け込んで、ジリ貧だったんですの……」

 手すりを握りしめ、歯をみ締めるようにステフが言う。

「愚王とののしられ、それでも国を救おうとした御爺様は、間違ってなかったですわ──っ」

 ──国土を取り戻さなければ、どのみち人類は長くはない。

 座して滅びを待つなら、死中に活をいだそうとした──か。

「私は──このエルキアを、救いたかった……」

 そしてステフ、涙があふれるのをこらえるように。

「そして──人類種イマニテイが生きていくには……攻勢に出てでも領土を、近いうちに、本当に滅びますわ」

 ──沈痛な顔でそう絞り出すステフに。

 相変わらずの無関心そうな顔で、しろが問う。

「……ステフ……この国、世界……好き?」


「ええっ──もちろんですわ!」

 ──涙まじりの笑顔で。

 そう即答したステフに。

 しかし兄妹は、対照的にうつむく。

「……いい、な……」

「……ああ、そう言い切れるのは、ホントにうらやましいよ」

 だが──兄は静かな声で、しかし問答無用に。

 ステファニー・ドーラの、

「──なっ……」

「更に、悪いが──」

 絶句するステフにすかさず、追撃を加える。


「お前のじいさんは──


 ──……………。


 ひどく長い沈黙を破って、絞り出すようにステフが口を開いた。

「──どう、してそう……思うん、ですの」

 唇をんで、握ったこぶしつめが刺さるのを感じるステフ。

 ……この世界で暴力が禁止されていなければ、その質問の代わりに、平手がそらほおに飛んでいたであろう、確かな怒りを込めて、言葉を紡ぐ。

 れた相手──いや。

 だろうと許せる暴言ではなかった。

 だがその問いに、ため息ついて、空はケータイで撮影した写真をスライドさせる。

 十五世紀のヨーロッパを思わせるような、街並み。

 戦争がない故に、古い建築と、新しい建築が入り交じる、美しい街だ。

 だからこそ──惜しい。


「このままじゃ──この国は滅びる。


 まったく想定していなかった言葉に。

 ステフが、困惑より、ヒステリーに近い声で反論する。

「ど、どうしてですのっ! そうさせないための新国王選定──」

 あきれ気味に空としろ、二人頭上を見上げる。

 自分達の知る灰色ではない、原色のインクをこぼしたように青い天上。

 ──そして二人、この世界に来た時のこと。

〝神様〟が言ったことを、思いだす。

 すべてが単純なゲームで決まる、盤上の世界「ディスボード」。

 おれの───

 しろの───

 ──夢見た世界。

 ─────世界。

「……ステフ、このギャンブル大会は、いつまで続く」

 まだ納得いく解答をもらってないことに不満げに、しかし答えるステフ。

「──今日が、最終日ですわ」

 ベランダから東に視線を移して、見えた城らしき場所を眺めて。

「夕刻、王の広間で最後の対戦が行われて、勝ち残った人にだれも異議を唱えなければ、その方が新しい王になりますわ……それがどうしたんですの?」

 ──パタン、と本を閉じて、立ち上がる妹。

 大きく伸びをして、ほおたたく兄。

「──うっし! なぁ妹よ」

「……ん」

「兄ちゃんが何をしようと、ついて来てくれるか」

「うん」

「即答だなぁ。こっちは結構覚悟固めるのに──」

「……うそ

「ん?」

「……にぃ、たのし…そう」

 いつものように無表情に。

 だが、兄にだけ分かる程度の、笑顔を浮かべていう妹に。

「──ははっ、やっぱわかる?」

 言うや、二人きびすを返して、歩き出す。

「ちょ、ど、行くんですの!?」

「王城」

「──へ?」

 即答したそらの意図をみかねて、ステフが間の抜けた声を上げる。

 だが、そんなのお構いなしに、続ける。



「──────え?」

 慌ててついて来るステフの気配を背後に感じながら。

 ケータイに入力した、タスクスケジューラーの項目を確認する空。


 ──『目標』──

 苦笑してポケットにケータイをしまって、空が言う。

「せっかく生まれ直した世界、いきなり住む場所なくなっちゃ、困るしな」

「……こくこく」


「ちょいと、王様になって、領土取り戻して来るか」


 ──聞き間違いだろうか、と。

 ステファニー・ドーラは、聞こえた言葉をはんすうさせて確認した。

 そして、聞き間違いではないと確認し終わると、その男の背中を見た。

 ちょっと近所に買い物へ行くかのような軽いノリの。

 だが、確定事項を確認しに行くかのような、そんな自信と信頼感に満ちた──

 を宣言した、男の背中を。


「あ、そうだ」

 そらがベランダのテーブルに置いたままだったお茶菓子をつまみ、ほおる。

「──あ」

 自分でも忘れていた様子のステフに、空。

「ん、美味い。お茶もお菓子も、美味かったぞ。サンキュ」

 振り向いて、笑顔でそう言った空に。

 高鳴った鼓動が、はたして「盟約」のせいなのか。

 ステフには、もはやわからなくなりつつあった。

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