【第六話~遊ぶ生徒会~】
「大事なのは勝ち負けじゃないの! 努力したか
会長がいつものように小さな
しかし……今回はその言葉も、
なぜなら。
「アカちゃん。とっても見苦しいわよ」
「うぐ……」
会長は
負けた人間がカードの
単純に切ったり、二つのデッキに分けてパラパラと指で
「ううん……
知弦さんは
「そうねぇ。負けず
その発言を受けて、全員で会長を見る。彼女は「うぅ」と
そもそも、どうしてこうなったのかと言えば。
今日は本当に仕事らしい仕事、議題らしい議題がなかった。
さすがにそこは生徒会。典型的な
「……
「がーん」
俺の
どういうわけか会長、とことんカードゲームが弱かった。いや、ある
こうなると負けず嫌いの会長、当初の遊び反対という立ち位置はすっかり
「も、もう一回!」
『…………』
その言葉に、あからさまな
俺がシャッフルしつつ「じゃあ、次なにしますー」とやる気のない言葉を会長に投げかけていると、
深夏の方に顔を向けると、彼女はこそこそと小声で話しかけてくる。
「(なぁ……そろそろ、わざと勝たせてやるべきなんじゃねーの?)」
「(それは俺も知弦さんもとっくに考えているんだが……)」
それでも、知弦さんとの「アイコンタクト会議」の結果は、「いや、それはやめておいた方がいい」だ。深夏にそれを伝えると、彼女は
「(えー。なんでだよー。そろそろあたしも
「(よく考えろ深夏。うまくいけばいいが、会長に不正がバレたらどうなるか……)」
「(…………。……かなりの期間、
「(だろ? 会長、こういうことに関してはかなりしつこいぞ。お前、数週間会長のテンションが低くて空気暗いのと、今日だけカードゲームを
「(
「(なら、
「(う、うう……。なんか切ねぇー。
「(ようやく
「(もう何が
「(世の中そんなものさ。それぞれがそれぞれの正義を
「(ああ、まさかこの小説でそんなに深いテーマが
「(ライトノベルの宿命だ。受け
「(く……。エロゲキャラもいやだが、ライトノベル人生も
「(かもしれん。しかし深夏。世界が
「(ねぇよ。むしろ世界の
「(どんだけバッドエンド扱いなんだよ、俺の
深夏はそれ以降、すっかり何か
一方で、会長と知弦さん、真冬ちゃんは次のゲームを決める話し合いをしていた。
「真冬は……ドキドキしないのがいいです。だ、
大富豪なら、
「大富豪ねぇ。
「あ、え、あの……。……どうして、ですか?」
「それこそ、まったりしすぎているのよっ! 大富豪って! なんか『みんなで和気
「そ、それがいいと、真冬は思いますけど……」
「
……その技や知略や運が誰よりも
さすがにこの会長の相手は、真冬ちゃん単体では荷が重すぎた。「す、すいません……」と
それを見かねたのか、ようやく、この
「じゃあアカちゃん。ポーカーなんてどうかしら?」
「ポーカー?」
ポーカー? と、俺も会長と同時に首を
俺達のやるポーカーなんて、コイン
こうなると、相手の手を読むなんて
…………。
……いや。まさか、これは……。
(そういうことなんですかっ、知弦さん!)
(……こくり)
知弦さんがカ○ジばりのゆったりした時間進行の中、
なんてギャンブラーなんだ……
俺には分かる。これは……コペルニクス的発想の
つまり!
会長を勝たせるんじゃない!
俺達が勝たないんだ!
そう、
イカサマなら他のゲームでも出来る! それこそ、大富豪で手を抜くことも出来るだろう! しかし……しかしっ! バレ
今の会長なら、クズカードばかり来る可能性は高い。しかし……その
しかし! ポーカーなら、短い、一回きりの勝負ばかりだ! ゲームの
要はこういうことだ。俺達は……出来る
もちろん、引くカードは分からないから、
ならば。
会長は、ワンペアを代表とする「ちょっとした役」を作るだけで、勝利できる!
しかし……これは、賭けだ。
いくらポーカーと言えど、対戦数が多くなれば、イカサマがばれる可能性は高くなる。
何度も何度も全員がワンペアさえ出さなかったら、さすがのお子様会長でも、おかしいと気付くだろう。そこで、捨てた札を確認されて「手を崩した」ことが発覚してしまったら、もう、アウトだ。
これは
ふ……
というわけで、会長以外の全員が、
……
生徒会室で今、
しかし……俺達は、勝ちに行くんじゃない。
そう、これは、相手を勝たせるための、
人類の歴史上、かつてこれほど切ない戦争があったろうか。
俺達は知っている。
この会長は……勝ったら、まず
それも、中身が
散々自分を
それは、いくら大人な知弦さんや俺でも……問答無用で
俺達は何も知らずにご
だがっ!
俺達は今、自らその道を歩もうとしている!
知弦さんの目を見る。決意を
深夏の目を見る。
真冬ちゃんの目を見る。愛に
「ポーカーをしましょう、会長」
「
「気にしないで下さい会長。さあ始めましょう……。……戦争を」
「始めないよ! なんで急に戦争が始まることになってんの!?」
「く……」
これが……これが戦争かっ!
俺達がこんなに苦しんでいるというのに……この会長は、何も知らずにツッコミかよ!
こんな……こんな
なんて……なんて不公平。神よ。どうして俺達ばかりに……こんな。
会長は一人、「ちょ、みんな、どうしたの?」とキョトンとしていた。
くぅ……。……
ポーカーだ。うまくいけば一分でカタがつく。一分だ。一分、自分を押し殺せっ!
一分戦争。後にこの戦役はそう
いいだろう。見せてやろうではないか。
いざ、
「俺のターン! ドロー!」
「ちょ、杉崎!? なに勝手にゲーム始めてるの! っていうか、ポーカーってそういうゲームじゃないでしょう!」
「……今のはただの
「は、はぁ。まあ……ポーカーやるのはいいけどさ」
会長が一人
シャッシャッとカードを配る小気味良い音だけが生徒会室を満たす。会長はと言えば、
全員に五
ちなみに、このゲームのルールは
手札を見て、一回だけ、山札のカードと
カードを捨てる。
五枚。
『!?』
全員の顔に
(なんて……なんてことをっ!)
オールチェンジだと?
ポーカー、
会長の
少し思い当たることがあって、おそるおそる会長に声をかけてみる。
「あ、あの、会長」
「なに? 杉崎」
「その……参考までに、今捨てたカード、見せてもらっていいですか?」
「? いいわよ? あ、ズルとかする気?」
「い、いえ! じゃあ、俺も手札確定してからにしますから!」
そう言って、俺は
そして……俺は、この戦争の真の
「な……そんな……。まさか……。そんなことが許されるのか……神よ」
俺はがっくりと
そうして……全員が一様に、ショックを受ける。
会長が「え、ちょ、な、なに?」と
俺達は……舐めていたんだ。戦争というものを。
ここまで……ここまで
こんな……こんな行いが
俺達は完全に打ちのめされていた。
最後に会長の捨てカードを確認した真冬ちゃんの手から、はらりとそれが落ちる。
そのデッキを……もう見たくもないのに、見てしまう俺。
A・A・A・K・K。
つまり。
フルハウス。
初手から、フルハウス。
それを。
この会長は。
捨てやがったのだ。
全部。
そして、恐らく……。
「じゃ、オープン!」
会長が高らかに告げる!
全員、ダラリと、カードを公開する。
ブタ・ブタ・ブタ・ブタ・ブタ。
全員ブタ。
全員。そう。会長も。
そうして、会長が、言ってはいけない一言を……俺達にとって
「むー。出ると思ったんだけどな……ロイヤルストレートフラッシュ」
『…………』
全員が思った。
『(こいつは……
世の中には、『
たとえ太陽が
この会長がカードゲームで
知弦さんの目を見る。絶望に
俺達は……無力だ。いや、
俺達が絶望に包まれている中、会長が自主的にカードをかき集めながら告げる。
「じゃ、次はなにするー?」
『!?』
ざわ、ざわ、ざわ。
俺達のバックに、そんな
真冬ちゃんと深夏の目が
俺も……会長を、
なん……だって? 次? 次、だって? しかも「なにするー?」って……もう、ポーカーは終わり? そんな……そんなっ! あんだけ……あんだけ決意して
「ふ……ふは……ふははははは」
「す、杉崎?」
俺は思わず笑い始めてしまった。会長がキョトンとしている。
「いえ、なんでもありませんよ、会長。いえ……ベルセルク」
「意味分からないよ! ベルセルクじゃないよ、私!」
「ふ……では、
「会長か桜野くりむと改めてよ! なんで修羅になったのよ!」
「修羅よ。貴女は、そこまで戦争が好きなのかっ!」
「好きじゃないよ!? なんでそんな
「いいでしょう。貴女がそこまで血を望むのならば、
「口調とテンションがまるで
「さぁ
『おおー!』
「なんで
俺の言葉に
こうして俺達は、長い長い戦いへともつれこんでいくのであった。
これが、後に「クリムゾンの
*
《戦争、絶対ダメ》という共通
俺達は少し
知弦さんが切り出す。
「さて……私達は昨日、あの戦争を『もう
知弦さんの言葉に、椎名姉妹が
どうしてこんなことになったのだろう。それもこれも……。
「真冬……あんたがトランプなんて持ってくるから」
深夏が、言ってはいけない一言を言う。真冬ちゃんは「ひぅ」と
「そ、そんなこと言ったら、す、杉崎
「な、真冬ちゃん、そりゃないよ! それに、あそこまでの
「あ、あら。私がいけないというの? 何もしてない人よりいいと思うけど。……そこの……今回の
「な──。あたしは
「ひ、
……というわけで、生徒会室は
会長以外の四人で今日の
なんてこった……今回の話のタイトル、変えるべきじゃねえか、これ。
というわけで勝手に新タイトル。
【真・第六話~
やべぇ。最終回だこれ。もしくは、最終回の一回前ぐらいだ、このタイトル。
っていうか、
ここは、主人公たるこの俺がビシっと決めてこそ、ライトノベルだろう。
「聞け、俺の女ども!」
『キー君(先輩・鍵)は
「いつまで!?」
というわけで俺、すごすご
ごめん、これ、どうやらバッドエンドらしいぞ、読者
サービスカットを期待していた人。
次のプレイではこの反省を
…………。
ライトノベルなんだから、ここで都合のいい時間
さてさて、どうしようか。バッドエンド
あ、そうか。
死ぬか。デッドエンドか。
というわけで。
「
『はい?』
「死のう」
首にカッターナイフを
『わー!』
今までケンカしていた知弦さんと椎名
結果。
『…………』
喜べ、読者諸君。
サービスシーンの完成だ! ここは
俺の上に、知弦さん、深夏、真冬ちゃんが
俺が、
残念なことに、
やーらかい。やーらかい体がむにむにと、三方向から俺に押し付けられているのだ。
これが……。
これが、ハーレムルートかっ!
俺は
なんて
もう俺は
そうだ! 戦争がなんだ! そんなもの、
ゲームやアニメで用いられる、あの手法を……最後の
「……いったぁ」
知弦さんが
「こら、鍵、何するんだ!」
「せ、
椎名姉妹の
時間を
「さぁて、今日も元気にトランプするわよーっ……て」
それは、会長の声だった。
「え、えーと」
どうやら
しばしの
「す、すぅ~ぎぃ~さぁ~きぃ~!」
とりあえず
計画通り。
同時に、俺の
「な、なにするのよキー君! まさかそこまで
「くそ、この、死ね! てめぇいよいよ
「ぐす……。杉崎先輩……
全員が俺を
そうして。
会長の、決定的な一言。
「そこになおりなさい、杉崎! 今日はずっと説教よ!」
*
こうして、この「クリムゾンの
この後、実に三百年に
『青年は、実は敵ではなく救世主だったのではないか』『彼は自己を
しかし、その解釈は多くの者に
真実は今も、
…………。
っていうか、ぶっちゃけ皆、どうでもよかったのである。
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