【第五話~恋する生徒会~】
「恋、だけじゃ
会長がいつものように小さな
「そ、そうですね。ええ、愛は、ないといけませんよ」
「そうよねー」
「え、ええ」
「ねー」
「……ええ」
チクショー! なんだこの
会長は
「
「あのお子様会長は、ホント
「あー、それは分かる。いやだよなー、正論って」
「『悪いのは分かっているけど、そういう問題じゃないんだよー』っていう感じのこと、多いだろ、世の中。でも、正論を振りかざすヤツっているわけよ。そうやってふんぞり返るヤツっているわけよ。……アレみたいに」
深夏と二人で会長を眺める。小さい胸をむんと張って、とても偉そうだった。……それが
「真冬もわかりますー、そういうの。あのあの、真冬はテレビゲーム好きなんですけど、親に、すぐ言われちゃいます。『目悪くしてそれクリアして、なんか意味あるの?』って。その通りなんですけど……その……」
「あー、分かる。人に
「そ、そうですそうです!」
「あー、あたしもあるなー、それ。あたしは……信号つき
「
「注意されたら、そっちが正しいから、
俺と
「でも
『うっ……』
「テレビゲームは目に悪いから、ほどほどに」
「あぅ」
「横断歩道は、ちゃんと信号
「うぅ」
「まぁ、私は暗い中ゲームもするし、信号より自分の視力を信じるけど。ゲームでダメダメになったこの視力をねっ!」
『一番駄目じゃん(ですよ)!』
正論を振りかざすくせに自分には特例を
そうこうしていると、ようやく会長が
そうして、ホワイトボードに今日のテーマ。
「『校内の風紀の
俺の
「定番だからこそ、
「う……」
また正論だった。……あーもう、今日はどうも
ボードのテーマを見て、知弦さんが首を
「でも、こういうのは風紀委員に
そんな中において、この
だから、風紀委員会も生徒会も、そんなに仕事は
そんな学園において、これ以上、わざわざ生徒会で議題に取り上げてまで正すような風紀の乱れなんてないと思うのだが……。
しかし、そんな考えに
「なに言ってるの! 乱れているわ! 主に……その……せ、
「性?」
真っ赤な顔でそんなことを言うロリ会長に
「副会長のせいかもしれないけど。最近、どうも、その、校内でナンパな光景を見ることが多くなった気がするのよっ! その……男女が手
「? 手繋ぐぐらい、そんなに問題にするようなことですかね?」
「も、問題よ! 二人っきりでっていうならまだしも、その、生徒がたくさんいる前で手を繋いで歩くなんて……
「はぁ」
深夏が、「はーい」と手を挙げる。別に挙手の必要はないのだが……。会長が「はい、深夏さん」と教師のように当てると、深夏はあっけらかんと告げた。
「会長は知らないかもしれないけど、そんなのより大変なことしているのなんて、いくらでもいるぜ? 放課後の校舎内を見てみなよ。ちょっと
「な──」
会長が
「まー、確かに乱れていると言っちゃ乱れているけどさ。別にいいんじゃねーの? それで
深夏に、俺も
「そうだぞ、会長。会長だって、数ヶ月したら俺に
「
言葉の
「そ、そ、そんなことしている人を見かけたら、今後は、全部退学! 問答無用で退学! お、おかしいわよ! ここをなんだと思っているの!」
「フラグを立てるための場──」
「杉崎は
「期間なげぇ!」
いつになるか分かったもんじゃなかった。4じゃないところが
そんな中、知弦さんがあくまでマイペースで、クールに告げる。
「でもそれは仕方ないわよ、アカちゃん。
「止めるんじゃないの!
「そんなことしたら、杉崎じゃないけど、かなりの生徒が消えちゃうわよ、この学校」
「仕方ないわよ!」
「……アカちゃん。生徒会長は、風紀の乱れを正すのも大事だけど、まず最初に生徒のことを考えるべきなんじゃないかしら。『生徒』の『会』の『長』なのよ」
「う……」
知弦さんは
「いや、おめぇのは誰でも却下するから」
深夏がまたも俺の思考を読んでツッコンで来た。むむむ。俺は、こんなにも生徒達を愛しているというのに……。
しかし会長は、知弦さんの説得にも、やはり
そんな中、これまで場を静観していた真冬ちゃんが、おずおずと手を挙げた。「はい、真冬さん」と会長に当てられ、小さく口を開く。
「ま、真冬も、そういうのはあまり得意じゃないですけど……その……したい人には、させてあげればいいかと……」
「したい人?」
「い、いえ、そういう意味じゃなくてっ!」
俺の
「こういう時なんだよなぁ、鍵に殺意が
深夏が非常に
真冬ちゃんの意見に、会長が「駄目よ!」と、
「そんなだから、
「いや、昔はもっと
「と、とにかく! この学校では、そういうことはあってはならないのっ!」
「どうしてですか」
「私が会長だからっ!」
『…………あー』
なんか
しかし……。
「そうは言っても、知弦さんも言いましたけど、こういうことって上から
「え?」
「
「む、むむ。杉崎にしては
「そりゃそうですよ! 学校で○○○○出来ないなんて、
「……とりあえず杉崎を
会長が
しかし、会長はいたって
むぅ。いつものノリじゃ、流せないか……。
俺はちょっとトーンダウンして
「そういう会長こそ、
俺に、と言おうかと思ったけど、なんとなく会長の
会長は「そうねぇ」と
「たとえしたとしても、ケジメをもって
「ま、それは
でも……
いつも思うが、この生徒会で
俺が
「で、でも、その、
「そうかしら? 私は、
「う……」
それも正論。その通り。制服で問題を起こすのと私服で問題を起こすのでは、やはりまるで
不純異性交遊……ね。でも、不純かどうかなんて、誰が決めるのだろう。
……まあ、一方で、遊び半分でそういうことするヤツが多いことも事実だから、強くは出られないけれど。遊びか
「で、会長はどうしたいんです? 恋愛
「そ、そこまでは望まないけど……」
会長は俺の言葉にたじろいだ。ま、ちょっと意地悪だったか。
「私はただ、けじめをつけてほしいだけよ……」
「…………」
……まあなぁ。ついついふざけすぎちゃったけど、
うまい落としどころはないものだろうか。
そう考えていると、知弦さんがペンをくるくる回しながら
「じゃあ、生徒会からのお知らせとして、ちょっとした
「ん、んー」
しかし会長は、それでも
「警告じゃなくて、
「禁止なら
「で、でもでも、今はそんなの、あってないような
「だったら、
「う、うぅ」
会長は知弦さんに言いくるめられて、泣き出しそうになってしまっていた。
さすがに、俺も椎名姉妹もちょっと
俺は場を仕切りなおす。
「最初に会長、言ったでしょ? 愛に
「う……。そ、そんなことは、ないけど。で、でも、今の生徒達って、そんなの少ないと思うっ!
「……まあ、ね」
会長は
それに、愛し合っているからなにをしてもいいのかというと、そんなこともない。規則は規則という意見も分かる。それでいて、深夏のいう「
どうしたものか。今回は会長が結構マジだから、本当に
「そ、そういえばさー。サッカー部のキャプテンとマネージャーも付き合っているらしいぜー。でも、あのカップル、もう二ヶ月付き合っているのに、
「……そういうのが、健全です」
会長が
「会長は、例えば大学生なら、エッチなことしてもいいと考えますか?」
「……。……ううん。どう、かなぁ。それでも、校内でそういうことするのは、
「手
「駄目」
「
「いい」
「高校生は?」
「……帰宅後も、ちょっと、駄目」
「大学生は?」
「……ううん、いい、かな」
「なるほど」
会長の
「ま、真冬も、会長さんと同じように思いますけど……。で、でもでも、他の考え方の人もいるわけで、そ、その、
あー……これは、まずいな。この議題は、まずい。答えが出ない。こういうのって、
知弦さんとアイコンタクトを
「会長の言い分は分かりました。それはもっともなことです。正論です」
「そ、そうでしょう?」
俺の
「そうね。アカちゃんの意見はもっともだわ。プリントを配って、次の全校集会でも、注意を
「う、うん」
会長に
空気を
「そ、そうだなー。
「で、ですよね。ま、真冬も、あんまり変な光景は見たくないですし……」
それらの言葉を受けて、
「そ、そうよね! やっぱりたるんでいるのよ、
「わー、会長カッコイイー」
「えへん! 次の集会で、ビシッと言うわよー!」
「…………」
ちょっと考える。集会で……この
(「み、皆しゃん! あ、か、
さ、最近っ。そ、そのっ! こ、こ、ここ、校内で、は、
み、皆さん、健全なお付き合いをお願いします! ぺこり!」)
…………。
なんか、
これはいけない。知弦さんも椎名姉妹も同じような
俺は
「つ、次の全校集会ですけどっ! その、俺が
「ふぇ? 杉崎? どうしたの、急に。そんなに張り切って……」
会長がキョトンとする。俺は席から立ち上がって続けた。
「い、いえ! ほら、俺みたいなヤツだからこそ、
「そ、そうかな?」
「そうです!」
たじろぐ会長に
かくして全員がほっと胸を
で。
今回の結末。
*
では次に、生徒会副会長、杉崎鍵さんお願いします。
「えー、皆さん。副会長の、杉崎鍵です。……ほらそこ! 会長じゃないからってブーイングしない! 美少年たる俺に何の不満があるというんだ! ……っておい、なんで全校生徒
ふぅ。……ま、まあ、今日はこの辺にしといてやるよ、ふん。
というわけで、本題だ。……ええい、ブーイングやめい! っていうか二年B組、耳
はいはい、静まれっ! 静まれ
美少女くのいちだったら
こ、こほん。おいてめぇら。会長が
…………。
……会長の名前出した
最近、校内の風紀が
……OK。お前らのその、「てめぇが言うな」的
聞けっ、てめぇら! 俺はただのエロゲ好きだ! だが
……おい。やめろよ。その
こほん。
まあとにかく、そんな俺からしても、校内であんまりイチャつかれるのは
…………。
おい、いい
ちっ。ま、それはいい。よくないけど、いい。忍者は後回しだ。お前は後でたっぷり相手してやるから、チャクラでも練っとけや。
とにかくだ。このままでは、やりたかないが、生徒会も動かざるをえない。ルール化して
そういうのは……全員にとって、不幸だろう? マナーの
だから、悪いけど、ちぃっと
こう考えろ。我慢することによって、逆に、自由を得ているんだと。
我慢するからこそ、もっと
かまどってあるだろう? あれは、
同じ火遊びするなら、かまどでやれや。
やりたいこと全部、
楽しいことは長く続いた方がいいだろう? ケチをつけられて終わりたくねぇだろう? だったら、
ま、
別に時折ハメをはずすのまで規制しようとは思わねぇ。ただ、「
……ん、まあ、俺からは以上だ。……おい、やめろよ、そのちょっとマジな
って、お前ら、
以上、生徒会副会長、杉崎鍵の「生徒会からのお知らせ」でした。
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