【第四話~更生する生徒会~】
「人生やり直すのに、
会長がいつものように小さな
かなり聞き
「そうっすね」
──と、
「
なぜか会長はビシッと俺に人差し指を
「
深夏がそう会長に返しながら、腕に込める力を上げる。……む。ちょっと首が
目の前では、先日ドSだと
「いいわね。今のキー君もいいけど、更生したキー君というのにも少し
「ちょ、更生って! 俺は元から
そこまで言ったところで、首を
「
知弦さんの隣で、真冬ちゃんまで
「げ、げほっ! なにげに……今の俺を
俺は深夏の腕をなんとかはずそうともがきながら、真冬ちゃんに
真冬ちゃんは目を
そうして、
「ごめん、真冬。お姉ちゃん、生まれて初めて真冬のお願いを……
「なぜこんなところで!?」
俺が
あれれ。ここは生徒会室じゃなくて……お花畑? あ、
『
ああ、なんか素敵な水着のお姉さま方が対岸に! なんだあれ! あっちはユートピアか! 行くしかない! もう行くしかないぞ、杉崎鍵!
「今、会いに行きます!」
俺は超ダッシュで
そう……あまりに俺の
『きゃあああああああ!?』
俺は
「なんてこった。ちょっとした美人お姉さまじゃ、俺の欲望を受け止めるには足りないというのかっ! ……仕方ない」
というわけで。
俺は川を
…………。
……暗い。
「……おーい? 鍵? あれ?
「『やっちゃった』ってなに!? お姉ちゃん!?」
「ちょ、深夏! 杉崎に人生やり直せとは言ったけど、一回終わらせろとは言ってないわよぅっ。どうするのよぅ、生徒会長の
「生徒会室で初の死人ね……。まさかこういう
「ちょ、知弦? そんなに顔が
「さ、アカちゃん。まずは
「されてたまりますかぁああああああああああああああああああ!」
深夏がぽつりと
「あ、生き返った。……つまんねーの」
「軽くね!? 俺の生死の
「隠し通す自信あったのに……」
知弦さんがとても残念そうにのこぎりを
「よ、良かったですぅ」
「お姉ちゃんが人殺しにならなくて、本当によかったですぅ」
「そっち!?」
相変わらず、
会長の方に視線を向ける。彼女は……俺を
お、これは……デレたんじゃないか? そうだよ! いつもはぞんざいに
俺は会長を見つめ返す。
「会長……」
「杉崎……」
「……ボクは、死にません。
「……杉崎……」
会長がまじまじと俺の顔を見る。……お、おいおい、会長……いや、くりむ。ここでキスかよ。マジかよ。まいるなぁ。
「……はあ」
「?」
──と、俺が
俺は
「あ、やっぱりファーストキスは、二人きりが良かったですか?」
「……はあ。ちょっとは期待したんだけどなぁ」
「? キスですか? いえ、俺の方は
「……ちょっと、期待したのよ。『
「はい?」
ここに来て、俺もようやく、どうやら会長はデレたわけじゃなさそうだと気付いた。
会長は、俺に
「一回
「……ああ、なんだ、そんなことでしたか。
「なにが?」
「俺はとてもマトモです!」
「それがマトモな人間の発言じゃないわよ!」
「皆、俺、マトモだよな!」
『…………』
なんか、
…………。
……杉崎鍵、さすがに
俺はようやく臨死体験直後のテンションから冷めると、どんよりとした気分で着席した。会長が、「こほん」と、ロリな
「とにかく、杉崎は
「……威厳、ねぇ」
会長のロリな容姿を
「と、に、か、く! 今日は杉崎の
「どうしたんですか、急に。そんなこと言い出すなんて」
俺の
どうやらそれは新聞部が不定期で
深夏がわざわざ声に出して読み上げる。
「なになに? 『
「あらあら、大変ねぇ、キー君」
知弦さんは大変と言いつつ、楽しそうにしていた。ったく……この人は。
真冬ちゃんだけが俺をフォローしてくれる。
「
なんか
全員の
「生徒会役員ともあろう者が、こんな記事を書かれて!」
「……あの新聞部は好きですからねぇ、こういうの」
問題の新聞を手に取り、
それを、うまいこと、「証言者A」だの「友人B」だのハッキリしない情報
部長とは
今までは美少女だから全然
「杉崎! まずは、その記事の内容が事実かどうなのか、ハッキリして
会長がとてもご
「あ、会長。もしかして
「そうやって逃げようとしても
こういう「会長モード」の時の会長は、ちょっとからかいづらい。
まいったなぁと思っていると、知弦さんが
「キー君。アカちゃん、こうなったら事実関係
「分かってますけど……」
どうしたものかと考える。ううん……まあ、詳しく話す必要は無いか。
よし……仕方ない。
俺は会長の目を
「
俺の言葉に、会長は……特につっかかってはこなかった。軽いノリで言っていたら「杉崎!
それは、知弦さんも深夏も真冬ちゃんも同じだ。誰も、いつものノリで俺を
会長は「そう」と息を
「杉崎は、詳しい
「いえ。今はちょっと、
こんな俺でも、
俺の言葉に、会長は
「でも、事実なのね」
「はい」
「
「ありません」
「そう」
「はい」
「……ん、わかった。じゃ、この件はこれでおしまいっ!」
会長はそう言うと、んっと
そうして、いつもの元気な会長に
「さて、杉崎!
「……そうですね。まあ、更生というより、表面を取り
そう言って、俺は
……ただの美少女なら
その
「ま、真冬も、杉崎
「そうだぜー、鍵。お前、ここだけじゃなくて、
「こんなことでケチつけられちゃ、それこそつまらないわよ、キー君。ハーレムを
皆、もう
……この生徒会は、つまり、そういう場所だった。本人が
俺はニヤリと笑っていつものように告げた。
「しょうがないなぁ。皆がそんなに俺を求めているなら、俺も、つまらないことで足元
「いや、別に杉崎がいなくなるのは
「ふふふ、分かってますって、会長。会長がツンなのは、
「いや、本気で」
「…………」
え、えと……皆、
なんか、皆の
なんか
「で、更生って、具体的には何をするんです?」
俺の
ああ、なんでこの
「杉崎。まずはその、
会長はジト目で俺を見ていた。
「む。俺は、いつだって
「真面目に思考するテーマがいつも変態的なのよ!」
「ど、どうして俺の思考のテーマが分かるんですかっ!」
「むしろ分からない方がおかしいぐらい、顔に出てるのよ!」
「なんですって!? この俺のカッコイイ顔が
「その
「ええぇ!」
「いい
「シット!」
「意味もなく外人かぶれしない!」
「無念!」
「必要以上にキャラ作らない!」
「……でも、
「なんの!?」
「このエロゲ……『ハーレム生徒会、
「この世界はそんなタイトルの世界だったの!?」
「ええ、今は会長ルートで
「……って、そういう頭おかしい発言も
「そんな! そんなことしたら、この物語、かなりオーソドックスですよ!」
「さっきから
会長の体力が
会長を打ち負かすと、しかし、今度は真打登場とばかりに知弦さんが出てきた。長い
「キー君の
「え……えと。ち、知弦さん、なんかいい案でも?」
「ええ。まずは……そうね。この、科学部に作らせた『
「いつの時代の
「古代ギリシアの、とある……」
「スパルタでしょう! それ、スパルタって言うでしょう!」
「あら心外ね。愛の
「いくら俺でも、こんな
「仕方ないわね。……じゃ、二つ目の案聞く?」
「あるんですか?」
「ええ。まずは、女性を見ると言い知れぬ
「三つ目に行って下さい!」
「じゃあ、とりあえず
「わぁん! どんどん
俺はがっくりと崩れ落ちた。……怖い。知弦さん、怖い!
当の知弦さんは俺を散々いじめて満足したのか、「はふぅ」と
知弦さんが引き下がると、今度は待ってましたとばかりに、
「ま、真冬も、色々案、あります!」
「あたしもあるぜー、杉崎鍵改造計画!」
二人とも身を乗り出して来る。話題がなんであれ、美少女に
「
「す、杉崎
「真冬ちゃんは俺にどんなキャラを求めてんの!?」
「いや、ここはいっそ
「深夏の『硬派』のイメージはなんか
「よしっ……と。はい! 先輩のケータイ、
「全部サン○オ
「おい、鍵! とりあえずお前は明日から《番長》を名乗れ!」
「お前のは
「……ん、よし、っと。出来ました、先輩! えへん。真冬、
「って、なに勝手にクマさんのアップリケを俺の
「……あ、じゃ、よろしくー。ピッ、と。……おい鍵! やったぞ!
「なに『バスケの練習試合組んだよー』みたいなノリで
「先輩先輩っ! これ読んでおいて下さいね! 勉強になりますから!」
「なになに、《
「なーなー。ロゴどうする? とりあえず《
「お前は俺をどうする気だ! 鍵盤連合とかやめろよ! なんか自信満々だが、鍵が番長だから、鍵盤連合とか、特にうまくないからね!?」
「…………ぽっ」
「そこ、自分で持って来た《私立美少年学院》読んで
「あー、生徒会予算かさむなぁ。オリジナルのメリケンサック作って、
「お前こそ生徒会から出てけぇー!」
「杉崎先輩は……逆に受けがいいと思います!」
「なにが!? 真冬ちゃん、既に色々見失ってない!?」
──と、ここまで来て、
二人は
結局、
「
俺のその言葉に、会長だけは
「ジョーダンじゃないわよ! 私はマトモよ!」
「会長。
「う……。み、
前回のこの俺、杉崎鍵に続き、生徒会長、桜野くりむが生徒会に問いかける!
果たしてその結果とはっ!
「…………」
一分後、ずーんと
逆に、自分で目立っていると思っているヤツが、実は誰にも気にされていなかったりもする。
……更生、か。
俺は、ぽつりと
「個性をなくすのが更生だって言うんなら……なんか俺、ずっとこのままでいいって気もしてきました」
「…………」
会長が死んだ目でこちらを見る。知弦さんも教科書から視線を上げ、椎名姉妹も暴走をやめて俺を見た。
俺は続ける。
「俺だけじゃなくて、ここに居る生徒会メンバー、全員、ちょっと頭おかしいでしょう?」
「ちょ、だから、私はマトモだって──」
会長が立ち上がり、また反論しようとする中、俺は、満面の笑みを
「でも
「…………」
会長が
知弦さんも椎名姉妹も、
「俺のハーレムは、多少
『…………』
……あれ? 気付いたら、また全員、それぞれの作業に
…………。
……す、
俺が
「……いいわよ、杉崎は、そのままで」
「? なんですって?」
「……なんでもない」
会長はもう一度嘆息すると、「あーあ、私、変だと思われてるのかぁ」と、また机にくたーっとしていた。……? なんだったんだ? なんか、聞き取れなかったけど。
あ、そうだ。そもそも、新聞部のあの記事が問題になって、
「ええと、それで俺、明日からどうします?」
その
そうして……全員が
…………え、えと。俺、なんか
その日は、結局最後まで、俺の
*
俺は、とっても目立つブロンドの彼女に声をかける。ちなみに彼女、ハーフだ。
「や、リリシアさん。自ら貼り出し作業なんて、
「ん? あら、杉崎鍵。ごきげんよう。昨日のネタではお世話になりましたわね」
新聞部部長、
藤堂リリシアは、
俺は彼女が壁に新聞を貼り終えるのを見守ってから、声をかけた。
「で、昨日の今日でもう貼り
「ええ。あんな下らない、間に合わせネタより、もっと
「…………」
俺の
壁新聞を
「この記事に負けた俺の過去って……」
「どう? 面白いでしょう? この藤堂リリシアにかかれば、
「え? これ、一晩で作ったんですか?」
もう一度壁新聞を見る。ただでさえ学生レベルを
藤堂リリシアは、サラリと答えてくる。
「ええ、そうですわよ。ネタは
「……へぇ。でもよく新聞部も動きましたね。俺の記事作り終わったと思ったら
「いえ、集めてませんわよ?」
「へ?」
「さっき言いましたでしょ。鮮度が命ですもの。この事件が起きたのは昨日の放課後でしたの。わたくしが聞いた時点で部員は
「…………」
そう告げる藤堂リリシアの
俺は彼女と壁新聞を眺めながら、質問する。
「どうして、リリシアさんはそこまでするんですか? お
「あら。道楽に入れ込むことのどこに、おかしいことがあるのかしら」
「え?」
「楽しいことあってこその世界じゃない。
わたくしはね、杉崎鍵。自分の
でも、それでしたら……せめて、
「うわ」
いい話のようで、やっぱり
「そんな動機で始まったことですけど、今は他の楽しみもそこに
「は、はぁ」
リリシアさんの言うことは、俺にはよく理解できなかった。でも、「あ、そういうことなのか」とも思った。理解できないからこそ、リリシアさんという人間は、面白い人間なのかもしれない。なんだかんだで、悪い意味だとしても、
それは、生きていく上では全く必要の無い
それでも……。
「あら、もうこんな時間。では、杉崎鍵。ごきげんよう。
「あ、って、な、ちょっと!」
俺の制止も聞かず、リリシアさんはスタスターっと去って行ってしまった。まったく……。
普通に考えれば、あの怪談ブームを起こさないためにも、生徒会役員としてはすみやかにこれを
しかし……。
「藤堂リリシア、美少女なので、
俺はそう告げると、
だって。
それが、俺、杉崎鍵なのだから。
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