【第三話~放送する生徒会~】
「他人との
会長がいつものように小さな
「なんですか? それ」
よく意味が分からなかったため、聞き返す。すると会長は、ホワイトボードにキュッキュと議題を記し、「これよ!」と、バンッとボードを
「ええと……ラジオ放送?」
ホワイトボードにはクッキリとそう記されていたが……しかしやはり意味が分からなかったため、首を
会長は一人、胸を張ったままで続ける。
「そう! これから生徒会で、ラジオをやろうと思うの!」
「ら、ラジオって……」
気弱で引っ込み思案の
「あの……ラジオですか? 音楽かけたり、
「そうよ。その、ラジオ」
「……えと。それって……あの、なんで生徒会がするんですか? そういうのは、放送部とかの仕事だと、真冬は思っていたのですが……」
全くその通りだよ、真冬ちゃん。真冬ちゃんだけじゃなく、
「何言っているの! 生徒会って、生徒をまとめる立場にある
「政見放送なんて言葉、よく知ってたわね、アカちゃん。よしよし、いい子いい子」
知弦さんが、
「政見放送ぐらい、知ってるよ! 子ども
「そうね、アカちゃん。ごめんなさいね」
「わ、分かればいいのよ」
「ええ。……そういえば昨日、
「…………。……と、とにかく! 政見放送よ!」
どうやら、思いつきらしい。テレビ番組に思いっきり
しかし、会長は言い出したら聞かない。俺の
「まあ、
「それも考えたけど……放送部に
そう言いながら、会長はてきぱきと
……
「か、完全に準備されちゃってます……」
真冬ちゃんが元気をなくしていた。まあ……元々こういう「目立つこと」が好きなタイプの子じゃない。ご
全員が引きながらも
「ほら、最近は
「会長、声優やパーソナリティ、そしてリスナーを
ツッコム。しかし、会長はこの
「可愛い声でキャピキャピ喋りあっていれば、
「
「
「いつも通りといっても……」
「あ、杉崎はあんまり喋らないでね。杉崎は、
「ひでぇ!」
まあ、分かるけど。
そうこうしている間に、セッティングは
真冬ちゃんも、元気が無いものの、
深夏はと言えば、既に落ち着き払い、腕を組んで、堂々と
「さあ、始めるわよ!」
会長が声を上げ、何か手元に
……さて。仕方ない。やるなら、俺も、ちゃんと取り組むか。
*
ON AIR
会長「
杉崎「放送
♪ オープニングBGM ♪
会長「さあ、始まりました。桜野くりむのオールナイト全時空」
知弦「夜じゃないけどね」
会長「この番組は、
深夏「どうしたんだ、富士見書房……。
会長「まあ、ギャラもゼロ円だし、機材も放送
真冬「じゃあなんで提供を読んだんですか……」
会長「それっぽいじゃない。うん、今のところ、とてもラジオっぽいわ」
真冬「……はぁ。いいですけど」
会長「こら、真冬ちゃん! そんなテンションじゃ
真冬「そ、そうでしょうか……」
会長「うん。男子リスナーなんて、そんなものだよ」
杉崎「こらこらこらこら! なんでリスナーを見下げた発言すんの!? 生徒に
会長「パーソナリティあっての、リスナーじゃない」
杉崎「リスナーあっての、パーソナリティだ!」
深夏「おお、
会長「……そうね。私が
杉崎「分かればいいんですよ、分かれば……」
会長「そうよね。やっぱり、ある
杉崎「だから、そういう発言を堂々としちゃ駄目だって──」
会長「お便りのコーナー!」
杉崎「
知弦「それがアカちゃんクオリティ」
杉崎「なんで
知弦「…………」
杉崎「ラジオで無言はやめましょうよ!」
会長「さて、一通目のお便り」
杉崎「進行重視かっ! 会話の流れ無視ですかっ!」
会長「『生徒会の
杉崎「え、なにその
女性
杉崎「俺以外の共通
会長「『オールナイト全時空、いつも、楽しく
杉崎「
会長「時系列なんて、
杉崎「さすが『全時空』!」
会長「あと、言い
杉崎「どうりでメールが来るはずだ! っていうか、じゃあもっと発言に気をつけて下さい!」
会長「はいはい。じゃ、メールの続きね。『ところで、皆さんに
杉崎「『くりねえ』って
会長「そうねぇ……。これは
杉崎「男と手
会長「
杉崎「なんかテキトーなアドバイスした──────!」
会長「知弦はどう思う?」
知弦「そうね……好きにすればいいんじゃないかしら。私には関係ないし」
杉崎「パーソナリティがリスナーに冷てぇ──────!」
会長「真冬ちゃんはどう?」
真冬「え? そ、そうですね……。えと……真冬は……。……わかりません」
杉崎「まさかの『わかりません』発言キタ──────!」
会長「深夏は?」
深夏「当たって
杉崎「もっとリスナーのハートを
会長「次のお便り。『妹は
杉崎「スルーしていいの!? 今の
会長「『生徒会の皆さん、こんばっぱー』こんばっぱー!」
女性陣『こんばっぱー!』
杉崎「だから、なんでこれだけ皆ノるの!? いつ打ち合わせしたの!?」
会長「『くりねえ。どうしよう。私、お金が
杉崎「ディープなお
会長「ううん……そうねぇ。分かった。ラジオネーム《
杉崎「ええええええええ!? 用意すんだ! しかも勝手にスポンサーから引き出すんだ! いいんですか、それ!」
会長「全ては富士見書房
杉崎「なんでアンタそんなに
会長「よし、じゃあ、ここで一曲。先日私が出したニューシングル。《妹はもう帰ってこない》を聴いていただきましょう」
杉崎「空気読め───────────────────!」
会長「どうぞー」
♪ 《妹はもう帰ってこない》フル
会長「さて、聴いていただきましたのは、
杉崎「アンタの
会長「じゃあ、ここで恒例のコーナー。《椎名
杉崎「…………。……そ、それはちょっと
真冬「
深夏「そうだ! 聞いてないぞ、そんなの!」
会長「このコーナーは、リスナーから送られてきた
杉崎「人気な
会長「私
杉崎「だからそういう発言は、本番中にしないで下さい!」
会長「じゃ、椎名姉妹、よろしくー。はい、これ、台本」
真冬「う、うぅ……ホントにやるんですか?」
深夏「うわ、なんだこれ! こんなの読んでられっかよ!」
会長「こら深夏!
杉崎「副会長の
深夏「……やるしかねーようだな」
杉崎「なんで
真冬「真冬も……
杉崎「なにキッカケで!?」
知弦「ふ……それでこそ椎名姉妹よ」
杉崎「
会長「じゃ、いってみよー」
♪
『真冬……。あたし、もう……』
『あぁ、おねぇちゃん……。んっ! あ、はぁはぁ』
『真冬……
『おねぇ……ちゃ……。……んん!』
杉崎「待て待て待て待て待て! 個人的にはドキドキワクワクだけど、これは、校内放送でやっていいレベルじゃないでしょう!?」
会長「う、うん……そ、そうね。こ、これは、なんか、やりすぎたわ」
真冬「えええええ!? こ、これだけやらせておいて!」
深夏「ひでぇ! そういう
知弦「……椎名姉妹の
深夏「
真冬「そ、そうです! リスナーの
知弦「……そうね。うん。ここは、そういうことにしておくべきだったわね。
椎名姉妹『もうやめてぇぇぇぇぇぇ!』
会長「さ、さて、じゃあ、次のコーナー! 《杉崎鍵の『
杉崎「なんですかそのコーナー!」
会長「このコーナーは、校内でもし
杉崎「俺の
会長「生徒のいざこざを
杉崎「するな──────────────!」
会長「仕方ないわね……。希望者もいないようだし、今日はこのコーナー飛ばすわ」
杉崎「なんで俺の
会長「じゃあ、次は私のコーナー! 《桜野くりむへのファンレター》!」
杉崎「明らかに差別してね!? コーナーの
会長「
杉崎「ファンレターと言うより、ラブレターじゃないですか! 誰だ! 俺の女にちょっかいかけるヤツは! いい
会長「な、なにを口走っているのよ、
杉崎「だ、だって、俺の彼女にラブレターなんて送るヤツがいるから……」
会長「私は杉崎の彼女じゃないよ! ラジオ放送で変なこと言わないの!」
杉崎「すいません。カッとなってやりました。反省はしていません」
会長「なんでそんなにふてぶてしいの!?」
杉崎「うぅ……。で、でも、その、
会長「う……」
深夏「…………どうでもいいけど、イチャついてないで、早く進めろよ」
会長「い、イチャついてなんかないわよ! 深夏まで変なこと言わないで! も、もう……調子狂うわね。こほん。……じゃあ、次のコーナー……」
真冬「あ、なんだかんだ言って
会長「う……。と、とにかく、次! 《学園 五・七・五》」
杉崎「……なんか、急に、
会長「うん、ネタ切れだからね」
杉崎「言っちゃうんだ!」
会長「このコーナーは、リスナーが考えた、この学園にまつわる
杉崎「
会長「こほん。では、いきましょう。匿名希望さんからの五・七・五」
『
会長「……
杉崎「…………」
会長「? えっと……杉崎? 私が言うのもなんだけど……ツッコマないの?」
杉崎「いえ……。…………。すいません。リアルに身の
会長「あー……」
深夏「……ちょっと笑いのレベルを
真冬「真冬も、
知弦「まあ、でも、そうよね。キー君って、そういう立場よね、
杉崎「う、うぅ……。え、ええい!
会長「だから?」
杉崎「火、つけるのだけは勘弁して下さい。すいませんでした」
会長「……杉崎がラジオなのに泣きながら
『金が無い
杉崎「
会長「え? なに? どういうこと?」
杉崎「いや、だから、さっきの
会長「それはないけど……
杉崎「二万円かよ! 安いな、うちの生徒の妹の
会長「私に言われても……。杉崎。世の中には、
杉崎「そ、そうですけど! ……なんかこの事件……
会長「そんなの誰もが最初から気付いているわよ。まあ、うちはラジオを続けましょう」
杉崎「……
会長「では、最後の五・七・五です。こほん」
『
杉崎「
会長「まったく、失礼しちゃうわよね」
杉崎「いえ……俺が言うのもなんですが、すげぇ気持ち分かります」
深夏「あたしも分かる」
真冬「真冬も分かります」
会長「なによ! やるべきことはちゃんとやってるわよ!」
知弦「やらなくていいことも大量にやっているけどね」
会長「
杉崎「そういう
会長「さて……じゃあ、そろそろ終わりも近いし、フリートークしましょうか」
杉崎「今までも
深夏「お、会長さん。メール来てるみたいだぜ」
会長「え? なになに?」
真冬「ええと、ですね。『妹が誘拐されていた件ですけど、無事
杉崎「おお……解決したか。良かった良かった」
知弦「……ちっ」
杉崎「すげぇ聞こえてますけど、知弦さん。今の
知弦「なんのことかしら」
杉崎「
知弦「でも……
真冬「ええと……よく分からないですけど、最終的には、
杉崎「二万円
真冬「妹さんも、
杉崎「俺達のせいかっ!」
深夏「結局、なんで二万円欲しかったんだ、コイツは……」
真冬「えと……ですね。メールによると……うん、なんか、犯人は、
杉崎「いたたまれね──────! っていうか、
真冬「そのリスナーさんから送られてきたメールの最後は、『悪は
杉崎「このラジオのリスナーはろくでもないな!」
真冬「ま、まあまあ。
杉崎「……俺、この放送終わったら、犯人のとこ
会長「こ、こほん。ええと……色々ありましたけど、このラジオも、そろそろ、お別れの時間が来たようです」
杉崎「やっとか……。短い番組の割に、
会長「最後は、『今日の知弦
♪
知弦「では、今日の知弦占いを。
当校の
ラッキーカラーは《殺意の色》。どす黒いか、
ラッキーアイテムは《
最後に一言アドバイス。
死なないで
以上、知弦占いでした」
杉崎「
知弦「また来週、この時間に会いましょう。……獅子座以外」
杉崎「獅子座ぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああ!」
♪ ED曲 《弟は
*
「今日の放送は
例の番組の放送があった後の放課後。会長は大満足の顔で、生徒会室でふんぞりかえっていた。知弦さんも、楽しそうにニヤニヤしている。
しかし……俺と椎名
会長に聞こえないよう、小声で、深夏と会話する。
「(おい深夏……。あれ……好評だったように見えたか?)」
「(いや……少なくともうちのクラスは、ドン引きだったよな)」
「(ああ……皆、
「(会長さんは、なにをもって、大好評だと思ってんだ?)」
「(おおかた……会長と知弦さんのクラスは、二人に気を
「(ああ、なるほど……)」
深夏が
「二人のクラスではどうだった? 皆、
「う……」
そんな
俺はぎこちなく、笑う。
「え、ええ……。大人気でしたよ」
「そうでしょう!」
いかん。これでつけ上がらせるのもまた、問題だ。
「ええ……そうですね。言うなれば、小学生のなりたい
「それ、人気なの!?」
会長は首をかしげていた。……うむ、うまくごまかした。深夏が「グッジョブ!」と俺を
しかし、会長の
「真冬ちゃんのクラスでも、人気だったよね!」
「え」
真冬ちゃんが、カチカチに固まる。……ああ、彼女のクラスも……うちと同じか。
真冬ちゃんが、すごく、すごく
「は、はい。そ、そうですね……言うなれば、スーパー○リオブラザーズにおける、《
「それは本当に人気と言えるの!?」
真冬ちゃんも、うまいこと(?)かわしていた。……
会長はしかしすっかり気が
「じゃあ、第二回もやらないとねー!」
『…………』
会長以外全員……今回は知弦さんも
全員で、アイコンタクト会議開始。
(どうしますか……。会長、まだやる気ですよ)
(アカちゃんにしては、
(どうすんだよ……あたし、もう、あんなの
(真冬も、もう、無理ですぅ……)
全員で、うーむと考え込む。会長は一人、
俺は……仕方ないので、
「会長」
「ん? なぁに、杉崎」
「その……ですね。こういうのは、ほら、たまーにやるからこそ、味が出るんじゃないかと」
「? どういうこと?」
「つまり、ですね。二回目をやるにしても、ある程度間をおいた方がいいんじゃないかと……」
「…………」
俺の提案に、会長が考え込む。その
会長は数秒たっぷり
「そうねっ! このラジオは、クオリティ重視だもんね!」
「え、ええ」
その
「分かったわ、杉崎! 次は……そうね。一ヶ月は置いてからにしましょう!」
「そうですね」
全員、
こうして、この、
これで、未来は
「じゃあ次は、生徒会のPRビデオの
ドンッと、
…………。
『え?』
全員、信じられないものを見たように、固まる。
会長だけは……一人、ニッコリと、
「さぁ、これからが本番よ~!」
『…………』
……………………。
『いやぁあああああああああああああああああああああああああああ!』
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