4:巨人のフィールド

四月二八日 二二四一時(日本=北朝鮮標準時)

朝鮮民主主義人民共和国 スンアン航空基地



 けっきょく宗介のえりりることで、なんとかかなめはなつとくした。

 するどいしやげきあいをぬって、宗介がトレーラーの反対側へと飛び出す。ぐずるかなめの手を引いて、近くにめてあった電源車へと走った。

「乗れ! はやく!」

「って……きゃっ!」

 かなめをじよしゆせきに放りこみ、エンジンをかける。すぐさま発進。おくれてはいから銃撃。後ろのナンバープレートが吹き飛び、トレーラーにつながっていた送電ケーブルが引きちぎられた。

「頭を低くしてろ!」

「もう、なんなのよ───っ!?」

 けつけた兵士が後ろから発砲を続ける。だがそのころには、宗介たちの電源車はの北に向かって毎時八〇キロで疾走していた。

「あんた何者? どこにいくの? これからいったいどうする気!?」

 かなめは無数のもんれんぱつした。

「説明してよっ!」

 向かい風に負けない声でさけぶ。宗介はひびの入ったバックミラーをちらちらと見ながら、

「実は転校してきて以来、ずっと君をけていた」

「なにをいまさら。んなこたー、わかってるわよ! だからその辺の事情を聞かせなさいよっ!?」

「実は俺も、くわしい事情を知らない。君がなにかとくしゆそんざいで、あるちようほうかんが生体実験に使おうとしていたことくらいだ」

「チョーホーキカン!? セータイジッケン!?」

「そうだ。それをぜんに防ぐため、えいとしてけんされた兵士……それが俺だ」

 かなめはこつうたがわしそうな顔で、

「兵士ぃ……? えいたい?」

「ちがう。〈ミスリル〉だ」

「みすりる?」

「いずれの国にもぞくさない、みつぐんしきだ。各国のがいえていきふんそうを防ぎ、対テロ戦争をすいこうするせいえいたい。俺はそのSRT──スペシヤル・リスポンス・チームしよぞくしている。専門分野はていさつ作戦とサボタージュ、そしてASのそうじゆうだ。階級はぐんそう。コールサインはウルズ7。にんしき番号、B─3128」

 宗介はすらすらと答えた。だが彼女は、相手のことを本気で心配している様子で、

「あのね、相良くん。あなたが軍事マニアだってことは、よくわかったわ。でもね、そういうのは……ちょっと、マジでヤバいわよ?」

「? なんの話だ」

「あたし、本で読んだことあるの。こういう大事件にちよくめんすると、強いショックで自分が見えなくなって、日頃のもうそうとかに取りつかれちゃう人がいるんだって。どうやって飛行機から抜け出したのかは知らないけど、あなたはいま、さくらんしてるの」

「錯乱?」

 むしろ錯乱しているのはかなめの方だったのだが、彼女は宗介をなだめるように、

「そう。だから落ち着いて、自分に言い聞かせるの。『僕はただの高校生だ』って。さあ、いつしよしんこきゆうを──」

 突然、宗介がハンドルを切った。

 車のすぐ右を、きかんじゆうたまがかすめ、アスファルトの破片が二人の頭にそそいだ。ついせきしてきたそうこうしやが、ジープめがけて発砲したのだ。

「きゃあ───っ! 止めてっ! 降ろしてっ!」

だまってつかまってろ」

 右に左にと車体を振り、敵のしやげきをなんとかしのぐ。そうこうしているうちに、基地のほくたんかくのうが、ぐんぐんと近付いてきた。

「ふせていろ」

「な、なんで?」

「突っ込むからだ」

「ちょっ……」

 かなめががまえるのとほとんど同時に、電源車は格納庫のシャッターにげきとつした。

 さびだらけのシャッターは簡単にひしゃげた。格納庫内に飛び込んだ車は、中にめてあったけんいんトラクターをかすめてよこすべりし、大きなコンプレッサー車にぶつかってようやく止まった。

 宗介は運転席から立ち上がり、

「千鳥、動けるか?」

「……もう死ぬ」

「立つんだ。敵が来る」

 かなめは格納庫の中を見回した。正面のかべに、大きな人影が並んでいた。合計三体。高さは三階立ての家ほどあるだろう。パイプやケーブル類につながれて、がんじようほねぐみの中に立っている。カーキ色で、うでの長いたいだ。

「アーム・スレイブ……っていうやつ?」

 しばしばニュース映像やハリウッド映画などに出てくるので、かなめでもこの兵器の呼び名くらいは知っていた。

「君は奥に隠れていろ」

「ま、まさか、あれに乗る気じゃないでしょうね?」

「そうだ。乗る」

 彼はASの足下に走り、コックピットへのはしを登りはじめた。

「ちょっ……」

 かなめは青くなった。『自分は秘密組織のソルジャーだ』などといった、危険な妄想に取りつかれた軍事マニアが、自分を巻き込んで体当たりアクションをり広げたすえ、今度はせんとうロボットに乗ってあばれ出そうとしている。

 もうおしまいだ。

 じきに追っ手がやってくる。プロの敵に、ただのマニアが勝てるわけがない。自分はこのまま、あのバカもろとも殺されてしまうのだ。

「やめてよ! シロウトがそんなロボット、動かせるわけないでしょ!?」

 さけんだかなめを、梯子の上から宗介が見下ろした。

しろうと……?」

 彼の顔は暗がりの中で、はっきりとは見えなかった。ただ彼女には、しゆんかん、彼の目がぎらりと光ったように思えた。そして──きっとさつかくだったのだろうが──彼がぞっとするような笑みを浮かべた気がした。

「俺は素人ではない。スペシヤリストだ」


 宗介はASの肩に乗り、コックピット・ハッチの開放レバーを引いた。

 こうあつ空気のれる音。

 目の前でASの頭部がスライドし、その下──胸部にせまくるしいコックピットがろしゆつした。人間ひとりをすっぽりとつつみ込むだけのスペース。『乗る』というより、『着る』『包まれる』と表現した方がしっくりくる空間だ。

 これがアーム・スレイブのコックピットだった。

 このコックピットは『マスター・ルーム』などとも呼ばれ、そうじゆうしやどうを読み取り、たいに伝えるのうを持つ。マスターの小さな動きを、スレイブが大きくさいげんする。ひじを一〇度ほど動かせば、機体の肘は三〇度ほどすばやく曲がるみだ。

『AS』の語源は『アーマード・モービル・マスター・スレイブ・システム』。

 操縦法についてのみいえば、ほとんどのASはこの方式でせいぎよされる。

「とにかく引っ込んでいろ、千鳥」

 宗介は叫ぶと、ソ連製AS──Rk─92〈サベージ〉のコックピットにすべりこんだ。

 うでの先のスティックをにぎり、親指のレバーをぐいっと押しこむ。

 ふたたび高圧空気の音。コックピット・ハッチが閉じた。ないこつかくがロックされ、金属のみ合う音がひびく。

 宗介の頭の正面で、モノクロのスクリーンがてんとうし、文字がずらりと並んだ。

《コックピット・ブロック──へい/マスター・スーツ──調ちようせい開始》

 らだがゆったりとめつけられる。のんびりしている時間はない。宗介はスティックのボタンをなめらかにそうして、次々とどうの手順をこなしていった。

《動作モード──4/バイラテラル角──2・8→3・4》

 格納庫の外から追っ手のしやげき。シャッターに無数の風穴がうがたれ、火花が散る。

 こうけいが大きい。みようだ。外の敵はそうこうしやだけではない?

《メイン・ジェネレーター──点火/メイン・コンデンサー──でん上昇中》

 シャッターのわきのコンプレッサー車が爆発、えんじようした。くすぶる炎のむこうから、重たげな足音が迫る。足音。こちらに向かっているのは、装甲車ではなく──

 ASだ。まずい。

 スクリーン上に文字のれつが浮かんでは消える。あとすこし……。

《全ヴェトロニクス──強制どう

《全アクチュエーター──強制せつぞく

《最終起動チェックをぜんしようりやく

「さっさと動け……」

 ロシア製コンピュータのしよそくにいらだつ。ごうおん。穴だらけのシャッターを引きいて、こちらとまったく同じ型のAS、Rk─92〈サベージ〉がみ込んできた。

 赤い、てきな二つ目が、こちらを見る。

《全関節ロック──強制かいじよ、実行中》

「はやく……」

 敵ASが巨大なライフルの銃口を向けた。気付いてる。つ気だ、いま──

《コンバット・マニューバー──オープン》

 敵のライフルが火をくのと、宗介のASが身をかがめるのは、ほとんど同時だった。

 きわどいところで弾丸は空を切る。宗介機はもうぜんと前に飛び出し、敵のライフルをはらいのけると、そのままかたをぶち当てた。

 敵ASは背中から倒れ、格納庫の壁をぶち抜いた。コンクリートがぼろくずのようにくずれ、白いけむりが巻きあがる。

 宗介は敵機が取り落としたライフルをひろい上げ、残弾数をチェックした。それから身を起こそうとする敵機に銃口を向け、

「戦闘開始だ」

 つぶやき、トリガーを引きしぼった。


「うそ……」

 トラクターのかげからそのようを見ていたかなめは、おもわず声をもらした。

 宗介のあやつるASは、いつしゆんで敵を倒し、銃をうばい、手足を撃ち抜いてこうどうのうにしてしまった。その動きのびんさといったら、オリンピックのたいそうせんしゆも顔負けだった。

 敵をほふったカーキ色の巨人は、格納庫を出ていくと、外で待ち構えていた装甲車にライフル弾をびせかけた。へんせんこうが跳ね回り、装甲車が次々と煙をいた。おくれて、小さなばくはつ

 かなめの隠れるトラクターのボンネットが、びりびりとふるえた。

「あ……」

 右側のビルのかく、宗介の背後に、別の敵ASが姿を見せた。……が、次の瞬間、敵機は頭部と両腕を吹き飛ばされて、のけぞり返っていた。

 宗介のASが、背中を向けたまま肩越しにライフルを撃ったのだ。

 倒した敵はいつだにせず、次のものを探し求める。ライフルを両手でていねいに構え、なめらかに、流れるように……。

 彼の戦いぶりには、危なっかしさのかけらもない。電気人形にすぎないASの動作は、ちがいなほどにリラックスして見えた。

 これが、あの相良宗介?

 この、当然のような強さはいったい?

 彼は自分のことを『秘密組織の兵士だ』と言った。車で逃げている間はほとんど相手にしなかったが──こうなってくるとみとめざるをえない。

 彼の話は真実だったのだ。

 相良宗介は妄想に取りつかれた軍事マニアなどではない。本当に、ケタ外れの力を持つ戦士なのだ。

 ハイジャック。これは大事件だ。

 自分のみつ。これも大きななぞだ。

 そしてダメ押しが彼の変身だった。もはや夢の世界に放りこまれた気分だ。だが……彼女の髪をなびかせる風、火薬のにおい、炎の赤さ、せまりくるキャタピラの音、それらすべてが『これはまぎれもない現実だ!』と大合唱していた。

 彼のASが、彼女を見下ろした。

(ようこそ、わが世界へ)

 機体の大きな二つ目が、ごんで語っているようだった。

(これが俺の本当の姿だ。なるほど、おまえはあの学校ではひとかどのそんざいだったかもしれない。しかし、ここではぎやくだ。ここはまったく別の場所。おまえのじようしきは、なに一つ通用しない。おまえなど、ひとひねりで血のみになってしまう。もちろんリセットボタンはない。やり直しはなしだ。さあ、いつしよごくめぐりといこうぜ……)

「いや……」

 帰りたい。いつから自分は、こんな場所に迷い込んでしまったのだろう?

『……険だ。下がっていろ』

 外部スピーカーを通して、彼が叫んでいた。

『聞こえないのか、千鳥!』

「え……?」

 名前を呼ばれて、ようやくわれに返る。

『まだ危険だ。下がっていろ!』

 さっきの声はげんかくだったのだろう。宗介の口調はしんけんで、なにかを楽しんでいるような様子はじんもうかがえなかった。

 見ると、かつそうのむこうから戦車がにりよう、向かってきていた。ほうとうがゆっくりと動いている。こちらにほうげきする気だ。

「う……うん」

 そう。危険だった。それだけは彼女にもはっきりとわかった。



四月二八日 二二四六時(日本=北朝鮮標準時)

黄海 西朝鮮湾 海上 〈トゥアハー・デ・ダナン〉



 夜空はくもり、星一つ見えなかった。

 天地の区別もつかないくらやみ。その暗黒からみ出すように、巨大な船体がふじようした。

 波をたて、〈トゥアハー・デ・ダナン〉はさきをめぐらす。東南東、薄くたなびく海岸に向けて──

 なんのまえれもなく、〈デ・ダナン〉の背中が左右に開いた。ゆっくり、重たげに。はつどうの低いうなり声と、巨大なギアのかみ合う音。

 二重式のせんかくが開ききり、かんこうかんぱんろしゆつした。

 光はほとんどない。まばらにしつらえられた、小指の先ほどのはつこうダイオードが、弱々しく灯っているだけだ。沿えんがんを歩く現地人が、ぐうぜん、艦かられた光をもくげきしないためだった。甲板の作業員はれいがいなく、あんゴーグルをけている。

 わずかなじゆんび時間のあと、大小のヘリとVTOL戦闘機が、次々にりくしていった。

 航空部隊のしゆつげきが済むと──

 飛行甲板にブザーが鳴りひびき、そうの格納甲板から、エレベーターに乗ったアーム・スレイブ──M9〈ガーンズバック〉がせり上がってきた。

 肩には『101』のマーキング。メリッサ・マオの乗る機体である。

「さて……あたしらの番だ」

 M9のコックピットで、マオは静かにつぶやいた。

『BGMが欲しいな。定番で「ワルキューレのこう」とか』

 そう言ったのは、となりのエレベーターでじようしようちゆうのクルツ機だった。

「はん。ワーグナーってガラかい?」

『なら、ケニー・ロギンスだ。「デンジャー・ゾーン」』

「あんた、とつげきバカの曲しか思いつかないの?」

『るっせえな。じゃあ、サダマサシでも流せってのか』

「だれ、それ?」

 エレベーターがていした。暗視センサーを通して見る飛行甲板は、カタパルトそうじようきがもうもうとたちこめ、まるで口を開けたれいぞうのようだった。

 スクリーンの右手に、クルツのASが見える。クルツの機体もマオと同じM9だったが、頭部の形がことなっていた。マオのM9は小隊長機のため、電子へいそうつうしんそうぞうせつされているのだ。

 そしてどちらの機体も、ロケットのついた折りたたみ式のつばさっていた。ASをたんどくで作戦いきに放りこむ、きんきゆう展開ブースターである。

 飛行甲板に上がったマオは、カタパルトのシヤトル・ブロツクへと機体を歩かせた。AS用のそれは、ちょうどたんきよそうしやのスターティング・ペダルによく似ていた。

『……それにしても、あのムッツリじばくおとこ、生きてるかね?』

 クルツが言った。

えんの悪いこと言うんじゃないよ」

『お、ねえさん。もしかして心配してんの?』

「するよ。あんたと違って、ソースケはかわいいトコあるからね」

『俺にもあるぜ、かわいいところ。後でこっそり見せてやるよ』

「……あんたって、すじがね入りのお下品男だね」

 そこで小さな電子音。はつしんかんせいかんからのれんらくだった。

『ウへ。はつかんていこくまであと三〇秒だ』

「ウルズ2りようかい。……聞いたね、ルズ

『聞いた。姉さんの一〇秒後に続く』

 マオは機体をしやしゆつだいていさせ、てんけんさぎようをてきぱきと行った。

 ねんりようポンプが震える。大きなしゆよくと小さな安定翼がきざみに動く。ペダルのロックと、兵装の固定と……すべてかくじつ

「問題なし。いくよ」

 背後の甲板から、ブラスト・デイフレクターがせりだす。甲板よういんが手信号を送った。いつでも出られる。機体のAIもそれを示し、音声でほうこくした。

《カウント5》

 機体が小さくしずみ込む。

《3……》

 蒸気カタパルトが力をたくわえる。

《2……》

 ノズルがすぼまり、

《1……》

 炎が尾をき、

《GO》

 カタパルトが、ブースターがえる。合計一二〇トンのすいりよく。わずか二秒で時速五〇〇キロまでそく。そのまましよう。M9〈ガーンズバック〉は夜の大気を切りき、ぐんぐんと高度を上げていく。

「さあ、戦闘開始だ……」

 はげしいしんどうえながら、マオはうわくちびるを軽くめた。



四月二八日 二二四九時(日本=北朝鮮標準時)

朝鮮民主主義人民共和国 スンアン航空基地



 スクラップと化した車体からい出し、戦車兵たちは先を争うように逃げ去った。

「よし……」

 戦車二輛を片付けた宗介のAS〈サベージ〉は、かなめの待つ格納庫にもどった。別の敵はすぐにやってくるだろう。とにかくどこかに逃げないと──

どりっ」

 外部スピーカーで呼びかけた。くずれたかべの後ろから、かなめがフラフラと現われる。

 青ざめた顔。機体を見上げるそのひとみは、弱々しく、追いつめられたのうさぎのようにおびえていた。彼女もようやく、自分の置かれたじようきようがわかってきたようだ。

「やっつけたの……?」

 かぼそい声を、〈サベージ〉のちようかくセンサーはなんとかとらえた。宗介は機体の左手を差しのべて、

「つかまれ。基地の外に逃げる」

 基地から離れた北西、川と道路のむこうに小高い丘が見えた。しんようじゆしげるそこは、ひとまず逃げ込むにはちょうどよく見えた。

 かなめは、自分の脚ほどの太さの指をさわって、

「こ、これに乗るの?」

「そうだ。手のひらに腰かけるように。さあ」

「で、でも……」

「急げっ」

 せつぱくした声で告げると、彼女はおそる恐るASの手に乗る。かなめを大事にかかえ上げると、宗介は機体を走らせた。

「いっ……!」

 かなめがうらがえっためいをあげ、機体の親指にしがみつく。

 宗介にも、彼女の恐怖はように想像できた。電柱のてっぺんのような高さで、はげしく上下にられながら、時速六〇キロで運ばれたら、だれだってこわいだろう。

 しかし、いまはまんしてもらうよりほかなかった。

「下を見るな。目を閉じていろ」

〈サベージ〉の手の中で、かなめは肩をふるわせながら、

「まっ……待って! みんなはどうするの? あたしたちだけ逃げるなんて……!!」

「いまはこちらの身があやうい。俺の仲間がなんとかしてくれる」

「な、仲間……?」

きゆうしゆつたいだ」

 そうは言ったものの、かくしんはなかった。かなめを助けるためとはいえ、救出作戦の前に戦闘をはじめてしまったのは大黒星だ。らえたしようこうから聞き出した格納庫で、ASを手に入れたまではいいが……。

 追っ手はすぐ来るだろう。たいはそれほどこうてんしていない。

 かなめを抱えた〈サベージ〉は、基地のフェンスを飛びえた。茂みを突っ切り、広い道路を横切ろうとする。そこで、コックピット内にけいほうブザーが鳴り響いた。

《ミサイル警報/四時方向》

 右後方からするすると、ゆうどうしきのミサイルが迫った。

「くっ……」

 機体を振り向かせる。いきなりかなめを胸から引きはなすと、頭部に二門そなわったバルカン機銃でげいげき

「きゃうっ!」

 秒間八〇発のだんまくにさらされ、誘導ミサイルが空中で爆発した。宗介の〈サベージ〉はすぐさま身をひるがえし、木立をける。

 かなりらんぼうあつかいだったが、かたがなかった。機関銃の銃口は、かなめの頭から五〇センチほどしか離れていなかったのだ。そのままはつぽうしていたら、マズル・フラッシュ──銃口から飛び出す炎で、彼女がおおやけしてしまう。ついでにまくやぶれただろう。

「あ、あぁ……!」

 なにが起きたのかもわからないらしく、かなめは身を固くして、むちゆうでASのうでにしがみついていた。

「もうすこししんぼうしてくれ。敵を引きはなすまでの──」

 彼女に答えるゆうはなさそうだった。顔面をそうはくにして、手の中でちぢこまっているばかりだ。

 だが、このていんでいるのは、宗介にとってはむしろ驚きだった。普通の娘ならはんきようらんで泣き叫び、ASの手からのがれようと大暴れしていることだろう。それに比べ、かなめはへいももらさずに、こうしてしっかりとASの腕につかまっているのだ。

(たいしたものだ)

 内心でつぶやき、宗介は機体を急がせる。土をり、低木をかきわけ──

(しかし……)

 ついさっき、ミサイルをってきた敵が気になった。たった一発を射ったきりで、続いての攻撃がまったくない。旧式のたいせんしやミサイルなど、ASには通用しないとわかっているはずなのに。

(こちらのうでだめしか……?)

 追っ手が見えない。こうがくせきがいせんセンサーでははんのうなし。そんなはずはないのだが。

 ひどくいやな気がする。まされた戦士のかくだけが感じとることのできる、危険のにおい。こればかりは、ハイテク兵器のセンサーでもひろうことはできない。

 ていぼうを越して、川を渡ろうとしたその時──

「!」

 まったく予想していなかった方角から、するどしやげきが彼らをおそった。

 川の下流。二時方向。

 とっさに宗介は機体を振った。オレンジ色のほうだんそうこうをかすめ、そばの樹木がばらばらになる。

 さらにを描いて、グレネードだんが迫った。半径数十メートルを焼きはらう、高性能の爆弾である。あれがさくれつしたら、この機体はえることができても、むき出しのかなめはひとたまりもない……!

「しまっ……」

 グレネード弾は〈サベージ〉のすぐ目前に落ちた。グレネードの爆発からかなめをかばおうと、宗介は彼女をかかえて機体の背中を向けた。

 しようげき

 機体の右脚、ひざから下が吹き飛ばされた。バランスをくずし、宗介の〈サベージ〉は川めがけて倒れ込んだ。

「きゃっ……!」

 かなめのらだが放り出され、川に落ちて水しぶきをあげた。

「千鳥っ!」

 残った手足で機体を起こし、宗介は叫んだ。

 そこで気付く。

 グレネード弾は、爆発していなかった。しんかんを抜いたはつだん。右脚は、敵のげきかれたのだ。つまりグレネードは、こちらの動きを止めるためのおとり……!

 かなめが水面に顔を出し、

「……ぷはっ!」

「ちど……」

 ろうとした宗介の〈サベージ〉を、正確なしやげきが三たび襲う。とっさに機体をせさせたが、右腕とわきばらだんした。

《右下腕部──そんせいぎよのう

《メイン・コンデンサー──全損/サブ・コンデンサー──出力低下》

「くそっ……」

 暗闇の中から、銀色のASが一機、現われた。これまでとはことなる機体だ。

 距離はおおよそ三〇〇メートル。それがみるみる縮まってくる。川岸の土手沿いに、じやたててとつしんして──

 宗介の〈サベージ〉はライフルを持ちえておうしやした。手ごたえなし。右腕、右脚を失ったために、まるでりがきかない。

 敵も射ってきた。一発ずつ、まるで砲弾をしむかのような射撃。こちらは這うか、伏せるかしかできないので、機体のあちこちが被弾する。

《メイン・センサー──全損/広背筋アクチュエーターに火災発生》

「くっ……!」

 さらに弾が切れてしまった。片腕なのでだんそうこうかんもできない。

 そこに銀色の敵機が迫る。

 宗介はかたひざをついたまま、ライフルをこんぼう代わりにして、なぐりかかった。敵機はそれを打ち払い、カービン銃を胸部に押しつけた。コックピットを一撃で──

 発砲。

 機体の腰をるのが、あとコンマ数秒遅れていたら、宗介の身体はちけむりになっていただろう。かろうじてしやせんのずれた砲弾は、〈サベージ〉のそうこうばんを引きがし、胸部の電子装置と腹部のジェネレーターをえぐりとった。

 せいぎよシステムをかいされた〈サベージ〉は、糸の切れたあやつり人形のように倒れた。がっくりとあおけになって、大きな水柱をあげ、川岸に腕を投げ出す。

「っ…………」

 夜の大気がほおをなでる。額から流れ出た血が、目に入った。脇腹に焼けるようなげきつう。レバーやあしを動かすが、機体はまったく反応しない。

 たいした〈サベージ〉に、かなめが泳いで近付いてきた。ぼろぼろの腕につかまると、

「さ、相良くん……?」

「来るな、下がっていろ!」

 苦痛をして、宗介は叫んだ。

 銀色のASが宗介の前に立ちはだかった。まったく見たことのないしゆだ。東側ではなく、西側のASに似たスマートなデザイン。そうが銀色なのはすいきようではなく、単に未塗装のためだった。どこかの国の実験機だろうか?

『川の手前までは、いい動きだったな』

 外部スピーカーから声がした。そうじゆうしやはガウルンだ。間違いない。

『しかし、そこから先がいただけない。こちらが欲しいのは、その娘だ。本気でグレネードなどブチ込むと思ったか?』

「……もっともだ」

 基地の方角から、二機のASと一輛の装甲車が向かってきていた。もう逃げる手はない。かんぱいだ。

『はん、あのときの生徒か。まさか高校生のエージェントとはな。さすがに俺もだまされたよ。〈ミスリル〉の人間か?』

「……答えるはない」

『ふん。なら、死ね』

「ちょっ……なにする気っ!?」

 かなめがさけんだ。そんな言葉など無視して、ガウルンのASはカービン・ライフルを宗介に向けた。だが、たない。ガウルンはしばらくちんもくしてから、

『は……くはは……』

 くぐもった声をもらした。ASの肩が小刻みに上下し、巨大な左手が頭部をぴしゃりとたたく。銀色の機体は感情もあらわにり返って、首を何度も横に振った。

 操縦者が、笑っているのだ。

『これはたまげた……! おまえ、カシムか!』

 カシム。かつての宗介の呼び名だ。

『まるで気付かなかったぞ。おまえが〈ミスリル〉にいたとはな……! カリーニン大尉はどうした? あの腰抜けも元気か!?』

 宗介はそれには答えず、

「なぜさまが生きている」

 銀色のASは、額の位置──ちょうどレーザーしようじゆんのある部分を、左手の指先で突ついて見せた。

『くくっ。昔の負傷で、がいこつにチタンの板がめ込んであったもんでね。角度も浅くて、俺は助かった。しかし……うれしいね。こんな形で再会できるとは。イイよ、最高だ』

 みみざわりな笑いがひびいた。

「ずいぶんとようになったな、ガウルン」

『おかげでなぁ! あれからいろいろあったんだよ。くっく。聞かせてやりたいことは山ほどあるが、時間もない。てめえを始末して、その娘の脳みそをいじり回す仕事があるんでな。ちょっとした宝探しだよ』

 ぞうじったなつかしさからか、ガウルンはじようぜつになっていた。

「なんの話だ」

『その娘の頭には、〈ブラツクテクノロ〉がまってるのさ。ラムダ・ドライバのおうようろんとかな。完成すれば、かくへいさえになるかもしれんそうだ』

「……なに?」

『知らないみたいだな。だが、もう教えてやらんよ。さんの川の船頭に、「団体さんがもうすぐ来る」と伝えておいてくれ。じゃあな』

 ガウルンは改めて銃口を向けた。

「やめ……」

 かなめが叫ぼうとしたしゆんかん、それを爆音と水しぶきがさえぎり、ガウルンのライフルが真っ二つになった。

『ん……!?』

 飛びすさるガウルン。それを追って、空から二発、三発とするどい射撃が襲う。ようしやのない、さつのこもった砲弾。たまらずガウルンは身をひるがえした。

 頭上からごうおんがした。見上げると、灰色のASが一機、こちらに向かってまっしぐらにこうしてくるところだった。パラシュートを切りはなし、自由落下してくる。

『イィィィィ……ヤッホ───ッ!!』

 そのAS、M9〈ガーンズバック〉は大型ライフルを乱れ撃ちしながら、宗介たちの目前に荒々しく着水した。かわなみが起きて、宗介とかなめはずぶれになった。

『ウルズ6、着地成功! セブンと天使もここにいるぜ!』

 言うなり、さらに敵に向かってけい良く発砲。五七ミリのだいこうけいだんが、次々に命中する。そうこうしやが吹き飛び、二機の〈サベージ〉がなぎ倒された。ガウルンのASはかい運動にせんねんし、きゆうりようのむこうに姿を隠す。

「クルツ!」

 宗介が叫ぶのを聞いたかなめが、まゆをひそめた。

「クルツ? って、まさか……」

『そ、俺。カナメちゃん、元気してた?』

「なによ、それ!?」

 宗介は、クルツとかなめがすでにめんしきがあることを思い出した。先日の日曜日、彼はかんこうきやくの振りをして、彼女らと街中を遊びまわっていたのだ。

 クルツ・ウェーバーはおうへいな声で、

『ソースケぇ、動けるか!?』

「なんとかな」

 苦痛をこらえ、曲がったフレームを退けて、宗介はコックピットから這い出した。

 彼らの上空で無数の火花がった。〈トゥアハー・デ・ダナン〉からはつしやされただんとうロケットが、がたばくだんをまき散らしたのだ。基地のそこかしこで火の手があがり、爆発のだいがつしようがはじまった。

 こうしてきたのはクルツのASだけではなかった。さらに五機のM9が、きんきゆうてんかいブースターを切りはなして、夜の基地へと飛び込んでいた。

 続いて大気を震わすローター音。攻撃ヘリとそうヘリが丘のむこうから姿すがたを見せ、基地の上空にとつしんしていく。〈デ・ダナン〉からしゆつげきしたきゆうしゆつたいだ。

 間に合った。救出作戦がはつどうしたのだ。

『いいか、ソースケ。カナメを連れて基地へ走れ! かつそうの南だ!』

 クルツは大型ライフルのだんそうを取り替えて、丘陵を駆ける敵ASにたいした。

「基地へ?」

『あとすこしで、17が強行着陸する。待ち時間は五分だ。ここは俺にあずけろ。後でひろってやる』

「飛行機の爆弾はどうするんだ」

『マオとロジャーがしよする』

「わかった。銀色のASに気をつけろ。機体もオペレーターもケタ違いだ」

『心配すんなって。ケツをばしてやるぜ』

 かがんで力をたくわえ、クルツのM9はちようやくした。


「どうなってるんだ……?」

 震える機内のてんじようを見上げて、風間信二はつぶやいた。

 たて続けの爆発音が聞こえてきた。さきほどからさんぱつてきな戦闘が起きていたようだが、今度はほんかくてきだ。いったいなにが起きているのだろうか?

 そのとき、窓の外を大きなかげがよぎった。まどぎわの生徒たちがいつせいさわぎ出す。基地の照明とばくえんに照らされたそれを見て、信二は口をあんぐりと開けた。

「え、M9……!?」

 ただの西側のASなら、まだこれほどはおどろかなかっただろう。しかしまだ米軍でもじつせんはいされていないさいしんえい・M9〈ガーンズバック〉が、いきなり目の前に出現したのだ。しかも、頭部のデザインが変わっている。きっとあのふくらみは、新型のCSセンサーで、ミリ波レーダーの──

『全員窓から離れろ!』

 ASの外部スピーカーから声がした。窓のむこうなので聞き取りづらかったが、それは日本語で、しかも女の声だった。

 M9は刃渡り六メートルの巨大なカタナを、背中からずらりと抜き放った。AS用のかくとうたんぶんカッターだ。刃の部分がさいなチェーンソーになっていて、たいていの装甲はダンボールのように切りいてしまう。普通はコンバット・ナイフ程度の大きさなのだが、あれは特別製の日本刀サイズらしい。

「な、なにをする気だ……?」

 信二たちの目の前で、M9は機械のカタナをどうさせると、をいわさずジャンボ機の横腹にき立てた。耳をつんざくような高音がして、はげしいしんどうが機体を襲う。乗客たちは悲鳴をあげ、座席や壁にすがりついた。

 M9がこわしているのは客室ではなく、その下のもつしつだった。がりがりと機体を切り裂き、突き刺したカタナをえぐりまわし、ようしやなくかくへきを引きちぎると、

『あった!』

 M9は貨物室に手を突っ込み、すばやい動作でコンテナの一つを取り出すと、背後にひかえていたもう一機のM9に手渡した。黄色いコンテナを受け取ったりようきは、すぐさま身をひるがえし、数歩じよそうすると、のむこう、ちゆうきじようの方角に向かってそれを──力いっぱい投げつけた。

 そのこうどうの意味がさっぱりわからず、信二は首をかしげたが、次のしゆんかんに理由がわかった。

 コンテナが、地面に落ちたところで大爆発したのだ。

 五〇〇メートル以上は離れていたにもかかわらず、強いしようげきがジャンボ機を襲った。クラスの女子たちはきもせずにかなごえをあげる。そばの女の子に抱きつかれた一部の男子が、このひじように鼻の下をのばしていた。

『こちらウルズ2! 爆弾の処理はかんりよう、ただちにこうせんに……って、おっと』

 それきりM9の外部スピーカーはちんもくした。

 続けてジャンボ機の出入り口ががちゃりと開き、黒ずくめの兵士たちが十数名、どやどやと入ってきた。大型拳銃でそうし、青いベレーぼうかぶっている。兵士たちはなまりのある日本語で叫びながら、機内をけ回った。

「落ち着いてください! われわれは国連の救出部隊です! 出口から黄色いテープがってあります! そのテープから離れず、外で待っているそうへ歩いてください! 決してあわてず、冷静に! だれひとりとして置き去りにはしません! くりかえします! われわれは国連の──」


 最初のなんかんをクリアしたマオは、すぐさま次のれん──輸送機のえいに集中した。

「フライデー!」

《イエス、マスター・サージェント?》

 音声命令に反応し、機体のAIが応じた。

磁迷をカット! ミリ波レーダーをどう! アクティブIRとストロボ・ライトもけろ!」

《敵に先制攻撃される危険が、おおはばに増えます》

「それでいい。あたしはカモになる」

 なるべく目立って、敵の攻撃を引きつけなければならない。

《ラジャー。ECSオフ。全アクティブ・センサー、オン》

〈ミスリル〉のそうはすでに強行着陸し、ジャンボ機の近くで方向てんかんをはじめていた。さらに味方のM9が、基地のそこかしこであばれ、上空には味方の攻撃ヘリが飛んでいる。

 マオのM9はジャンボ機のそばからゆうどうろじようおどり出した。五〇〇メートルむこうのビルのかげから、さっそく敵の戦車がいちりよう現われ、マオ機に向かって発砲した。戦車の砲弾はきわどいところでM9をかすめ、背後のビルに風穴を開けた。

「このっ……」

 マオはちようこうそくミサイルを背中から抜き、戦車に向ける。〈ジャベリン〉と呼ばれるその武器は、人間用の使い捨てロケット・ランチャーによく似たえんとうけいだった。

 しようじゆん。発射。

 秒速一五〇〇メートルの超高速ミサイルが命中し、敵戦車はいちげきでばらばらになった。

 彼女は空になったミサイルのチューブを捨て、もう一本の〈ジャベリン〉をかまえると、すぐさま新たなものを探し求めた。滑走路の周りには、煙をあげる敵ASと、戦車のざんがいがまばらに見えた。

「意外と敵が少ないね……」

 事前に宗介が暴れたために、はからずも戦力が大きく南北にぶんさんしたのだ。

 背後では、人質グループが列をなし、二機の輸送機へと急いでいる。彼女はスクリーンのはしの時計をちらりと見た。

「あと一二〇秒か……」

 なかなかきわどい。降下前にぶんけんしたクルツは、宗介をフォローできただろうか?


 宗介はかなめに支えられるように、滑走路を走り続けていた。

「しっかりして」

「……だいじようぶだ」

 のうめんのようなひようじようで、宗介は答えた。頭の切り傷はそれほどしんこくではなかったが、脇腹の傷がひどく痛んだ。

「間に合うの?」

「……わからん。クルツが拾いにきてくれるはずだが」

「彼も仲間なわけね」

「そうだ。同じチームの……ぐんそうだ」

 三〇メートルほど後ろに流れ弾が落ちて、コンクリートの破片が雨のようにそそいだ。

「きゃっ」

「かまうな……走れ」

 味方の輸送機は、三キロもなたにあった。走るだけでは、とうていりくの時間まで間に合わない。

 クルツのM9は、なかなか追い付いてこなかった。苦戦しているのだろう。敵のねらいはかなめにあるのだから、クルツは足止めでせいいつぱいのはずだ。

 せめて通信機があれば、上空の輸送ヘリに連絡がとれるのだが……。


「もらった!」

 クルツは大型ライフルをぶっぱなした。もうれつはんどうこつかくがきしみ、周囲の樹木が大きくしなる。

 銀色のASは、さっと身をせ、低木の蔭に姿を消した。正確にいえば、クルツが発砲する直前にしんを変えたのだが、それはほとんど同時に見えた。

「えい、すばっしっこい野郎だぜ……!」

 舌打ちして、ライフルの弾倉をこうかんする。

 戦闘がはじまってから数分はたっていたが、銀色の敵は一度も発砲してこない。最初にライフルを吹き飛ばしてやったので、敵は近接戦用の武器しか持っていないのだろう。

「へっ……。だからって、近づけると思ってんのか?」

 どすん、どすん、と二連撃。いずれもしいところで当たらない。

「照準がくるってんじゃねえのか、おい?」

 はんしんはんでクルツが言うと、M9のAIはそれに応じ、

ネガテイブだんどうせつていはんない

 そのはずだった。照準システムの調整は、いつもしゆつげき前にねんりに行っている。

「だとすると……」

 敵のかいせいのう──専門的にはらんすう回避といった──がだんちがいなのだ。逃げもしないし、応戦もしないのに、これだけけられるのはいじようだった。

 ひょっとしたら、敵ASの性能はこちらとかくかそれ以上かもしれない。世界のすいじゆんの一〇年先をいく〈ミスリル〉の兵器と互角以上……?

「そんなはずがあるか。くそっ」

 敵機は砲弾の回避を楽しんでいるように見えた。右に、左にと走りながら、クルツのしやげきだまにとる。

「なめやがって……」

 時間が押していた。はやく敵を片付けて、宗介たちを拾わなければならない。

「ひとしば打ってやる……か?」

 クルツは一計を案じることにした。

 敵からきよかせぐそぶりを見せ、大型ライフルを数発射つ。まるで敵の性能にとうわくいだいたかのように。いをとると、今度はひざをついてしっかりと銃をかまえる。

 そこで、たない。ライフルを見下ろし、ボルを何度か手動で動かして見せる。もう一度かまえ直し──それでも撃たない。

 敵はしんに思う。

 クルツは大型ライフルを放って、腰から単分子カッターを抜く。コンバット・ナイフによく似た形の、せつきんせんようへいだった。

 敵も単分子カッターを抜いて、一気におそいかかってきた。

「かかった……!」

 ライフルのこしようと見せかける作戦だった。

 クルツのM9は身構えた。敵との距離がまったところで、いきなりナイフを投げつける。きよをつかれた敵は、とっさにナイフを打ち払い、姿せいくずした。そのときにはすでに、クルツはわきに置いていた大型ライフルを構え直していた。流れるような、ようですばやい動作だった。

 この距離なら絶対に外さない。回避ものうだ。

「くたばれ」

 発砲。ほうしんから飛び出した五七ミリ砲弾は、敵ASのどうたいに──


「走って、走って、走って!」

 人質ゆうどうはんの兵士たちが叫んでいた。アイドリングを続ける輸送機に、人質グループがなだれ込んでいく。

 マオのM9は、片方の輸送機のそばで、人質の列を守るようにして膝をついていた。かいに敵は見えない。あらかたせいあつしてしまったのだ。そうこうしややASなどを失ったの兵士たちは、先を争うように逃げてしまっていた。

「生徒がひとり、連れ去られたままなんです!」

 列から離れ、人質の一人が誘導班にうつたえていた。スーツ姿の女で、ちょうどマオと同じくらいのねんれいに見えた。

「探しにいかせてください! その子は副会長もやってる女子で──」

 マオは外部スピーカーを入れた。

『そこのセンセー、カナメは別の便びんで帰るよ』

「べ、別の便? あなた、なんで私の生徒の名前を……」

『いいから。はやく飛行機に乗って!』

 うろたえながら、女性教師はしたがった。

『別の便で帰る』とはいったものの、時間が心もとない。宗介たちは現われないし、クルツは今でも戦闘中だ。三〇秒前に『ちょっと手こずる』と交信してきたきりだが……。

「ウルズ6、まだなの?」

 マオは無線で呼びかけた。おうとうはなかった。

 人質グループと誘導班がもれなくしゆうようされ、そうの後部ドアが閉じはじめた。

「ウルズ6、はやくソースケたちを連れてきな」

 やはり応答なし。

「ウルズ6、応答せよ。ウルズ6」

 返事はない。

「クルツ、こんなときにふざけてんの!? 怒るよ?」

 それでも、クルツはこたえなかった。


 かつそうの上で、宗介は後ろを振りかえった。クルツは追ってこない。

 その一方で、輸送機は滑走をはじめようとしていた。あれに乗るのはもうだ。てつ退たいするASの輸送ヘリに拾ってもらうしかない。

 だが、むこうがこちらに気付いてくれるだろうか?

(それも無理だ)

 炎と煙で、かいがひどく悪い。上空からでは、発見できないだろう。

 そこで、東の方角から十数発のほうだんが飛んできた。基地のあちこちにちやくだんして、な爆発を起こす。うち一発は、宗介とかなめの五〇メートル手前でさくれつした。

「な……なに?」

「敵の……ぞうえんだ」

 ひたいの汗をぬぐって、宗介は言った。身を低くして、建物の蔭に隠れる。

 敵の増援が来た以上、ASの輸送ヘリさえ自分たちを待っていられないだろう。なんとかしなければ……。

 しかし、ごうりゆうてはなさそうだった。

 そうしているうちに、ジェット輸送機がごうおんをあげ、彼らの前をつうしていった。

「ああ。……いっちゃった」

かたがない」

 暗い事実がおおいかぶさってきた。宗介とかなめは、味方との合流に失敗しつつあるのだ。


 二機のC─17輸送機は、でこぼこの滑走路をそくしていった。

 ひどくれる。機体に当たる小石の音。エンジンがかんだかい声を出し、つばさがぶるぶるとふるえた。右翼の三〇メートルほど先で爆発。乗客たちはめいをあげる。

「立たないで! 落ち着いてください!」

 兵士の一人がさけんだ。

 ほとんどの生徒が息を飲んでいたが、信二だけは、はらはらとなみだを流していた。

「風間くん、こわいの?」

 たまたまそばにいたきようこがたずねた。

「いや。うれしくて……。M9の実戦をもくげきして、C─17に乗れたんだ、もう死んでもいい……」

 意外なほどの早さで、輸送機はVR──しゆ上げ速度に達し、空へとい上がった。後から続く二番機も、ほどなくりくに成功した。

 その二番機に向けて、敵の歩兵が、けいたいしきの対空ミサイルをった。輸送機の磁迷こうはつして、対空ミサイルは目標を見失い、そのまま基地の北に落ちて爆発した。


 西の空へと輸送機は飛び去った。エスコート役のブイせんとうが、ぴたりとい二機を守る。マオはそれを見送り、

「いちばんのやつかいごとんだね……」

 ぽつりとつぶやいた。

『パーティーは終わりだ。敵の大部隊が近付いている』

 ASをそうする役目の大型ヘリが、彼女らのそばにこうしてきた。

「待って。ルズかられんらくがないわ。ソースケと女の子も……」

『こちらテイワズ12だ』

 上空でけいかいにあたる攻撃ヘリから連絡が入った。

『いま、M9のざんがいを発見した。ウルズ6のものと思われる。基地の北の川だ』

「……なんだって?」

 マオは青ざめた。

『バラバラだ。どうたいも真っ二つになっている』

 いったいなにが? 胴体──つまりコックピットが? そんな──

「オペレーターはなの!?」

かくにんできない。煙が強くて……』

「オペレーターを探して。ウルズ6を。ソースケは?」

 せんのむこうで、ヘリのパイロットがつばを飲み込む音がした。

『……マオ。俺もそうしたいが、クルツやソースケをそうさくしている時間はない』

「一分でいい。あたしも──」

 それを新たな声がさえぎった。

『捜索はげんきんする。ただちにてつ退たいせよ』

 命令を出したのは、小型のていさつヘリから全体をとっていたカリーニン少佐だった。

「少佐……!」

『増援部隊が橋をえた。げいげきもこちらに向かっている。一分でぜんめつするぞ』

 をいわさぬくち調ようだった。さらに少佐は、

『テイワズ12へ。M9の残骸にざんだんすべてをち込め。ネジ一本でも敵に渡すな』

『……テイワズ12、りようかい

「やめ……」

 攻撃ヘリが、北の川めがけてロケット弾をはつしやした。遠い爆発。クルツ・ウェーバーのASは燃え上がり、粉々になった。

『ウルズ2。輸送ヘリとのドッキングを急げ』

 れいこくな少佐の声に、しゆんかん、マオはくるおしいまでの怒りを覚えた。のどのすぐ下まで、『人殺し』という言葉が持ち上がってくる。しかし彼女は、それをなんとか苦労して飲み込んだ。大変なろうりよくだった。

「……ウルズ2、了解」

 少佐は正しい。敵は本当にすぐそこまで来ていた。


 こうどうのうになった機体から、ガウルンは湿しめった大地に降り立った。

「くっ……」

 きゆうりようしやめんに倒れ込んだ、銀色のASを見上げる。きょうぶそうこうばんが大きくひしゃげ、中の部品がろしゆつしていた。アクチュエーターの安定剤が血液のようにしたたり、かんせつのあちこちが煙をあげている。

 このAS──〈コダール〉はオーバー・ヒートのじようたいだった。とっさに未完成の『ラムダ・ドライバ』をどうさせたために、どうりよくけいがショートしたのだ。敵の攻撃ヘリに発見されないように、丘の木立に隠れるのがせいいつぱいだった。

 ラムダ・ドライバ。

 それは人類がこれまで発明した機械とは、まったくしつな力を作り出すシステムだった。オペレーターのこうげきしようどうぼうえい衝動、そうしたしきぞうふくし、てきな物理力にへんかんする機能を持つのだ。専門家は『きよげんせきりよくせいせいシステム』などと呼んでいる。

 こんなシステムがふきゆうしたら、現代の戦争はまたしてもさまわりすることだろう。しかし、それはまだ先の話だ。ノウハウも情報も足りなさすぎる。知識のげんせんを手に入れなければならない。

 それこそが〈ウィスパード〉、そのためのゆうかいだったわけだが──

「役立たずめ」

 こしようした機体にどくづいて、基地の方角を見る。

〈ミスリル〉のヘリとVTOL戦闘機は、すでに西の空に飛び去っていた。

「カリーニン……。あのキザ野郎……」

 まさかこれほどすばやく、救出作戦を実行してくるとは、ガウルンも予想していなかった。九〇三便をハイジャックしてから、まだ半日しかけいしていないのだ。

 しかもごていねいに、飛行機に仕掛けた爆弾までもしよされてしまった。予行演習もなく、ていさつはんも出さずに、あんなしゆうをぶっつけ本番で行うなど、とくしゆ作戦のじようしきでも考えられない話だ。

 だが、相手がカリーニンならうなずける。〈ミスリル〉にやつがいると知っていたら、すこしはたいさくも打てたのだが。

〈ウィスパード〉の娘と、カシムにも逃げられてしまった。大黒星だ。

「許さんぞ。くそっ」

 そこで部下の一人から通信が入った。ガウルンは日本語で、

「俺だ」

『私です。消火作業にあたっていた兵士の一人が、みようなことを』

「なんだ?」

『さきほど、基地の西のフェンスのあたりで、しんしやもくげきしたと言っています。娘を連れて、から走り去ったそうです』

「若い男か?」

『わかりません。とにかく、西に逃げたと』

 ガウルンはほくそ笑んだ。

 ついてる。カシムたちは仲間に合流できなかったのだ。西に走れば、海岸だ。なんとかそこで味方にかいしゆうしてもらう腹か。この基地から海岸までは、おおよそ三〇キロほどある。どう急いでも、では朝までかかるだろう。

 このAS──〈コダール〉をしゆうりするにもじゆうぶんな時間だった。

「まだまだ……これからだ」


 基地から離れた暗い山中を、宗介とかなめは歩いていた。すでに火災や爆発、兵士たちのさけび声も聞こえてこない。ただ風の音と、まつてる二人の足音だけがひびく。

「ねえ、本当にだいじようぶなの……?」

 よろめく宗介のらだを支えて、かなめは言った。

「これで安心はできないが……あの基地から離れるよりほかせんたくはなかった」

「そうじゃなくて、あなたのこと。どこか、調子が悪いんじゃ……」

 あいかわらずのむっつり顔だったが、ひたいにはびっしり玉のあせを浮かべている。全身どろまみれで、ワイシャツがべったりと血にまみれていた。

「やっぱり休もうよ。このままだとあなた……」

 かなめが暗い声で言うと、宗介は立ち止まり、はいやみに目を向けた。彼はしばらくちんもくしてから、

「ああ。すこし……待て」

「え?」

 彼は木の根に腰かけると、赤黒くよごれたワイシャツをいだ。タンクトップ姿になった宗介を見て、かなめは悲鳴をあげそうになった。

 左のわきばらに、するどい金属片が突きさっていた。CDを半分に割ったくらいの大きさで、血にれててらてらと光っている。さっき、銀色のASにやられた時のだろう。そうとうげきつうであろうことは、かなめにもように想像がついた。

「そ……それ……」

「運が……良かった。内臓や大きなどうみやくは傷ついていない。……上着のポケットにびんまったケースがあるはずだ。それを」

 彼は金属片を引き抜き、くぐもったうめき声をもらした。かなめはあわてて自分の着ていたえりのポケットをさぐり、小さなケースを手渡した。

 ケースに入っていたアルコールで、傷口を中までせんじようする。見るからに痛々しいその作業を、かなめは正視していられなかった。彼の手つきはしっかりとしていたが、そのひとみはうつろで、どこを見ているのかわからない。

「反対側のポケットに別のケースがある……。中からテープを探してくれ」

「……これ?」

 彼はテープを受け取って、傷口を仮止めした。シャツを切りき、ほうたい代わりにどうに巻いていく。かなめはケースの中をさぐりながら、

「い、痛むんでしょう……? ここに、モルヒネがあるみたいだけど」

 恐る恐る言ってみた。

「いらない」

 そう答える宗介の言葉は、死人のようにせいがなかった。こんちゆうや人形と話しているようなかんを覚え、かなめは急に不安になった。

「でも、だってあなた──」

「俺が眠ってしまったら、だれが敵と戦う」

「そんな……」

「いくぞ。敵が追ってくる」

 彼は重たげに立ち上がると、ふたたび暗い木立を歩き出した。

(なんなの……?)

 かなめは大きなじようりを感じた。

(なに、この人? なんで、こんなが平気でできるわけ……?)

 自分の身体をかいのようにあつかって。痛みをして、出てくる言葉は『敵』、『敵』、『敵』……。これではまるで、あの人型兵器──ASと同じではないか。そこまでして、彼をき動かすものは何なのだろう?

 まったくわからない。

 せんこく──あの基地での戦いの時から感じていた、宗介に対する言い知れぬ恐怖が、彼女の中でいよいよ大きくなってきた。姿すがたかたちは人間と同じでも、目の前の若者がまったく別世界の生き物のように見えた。いまは彼らを追いつめたテロリストよりも、むしろ宗介の方が恐ろしかった。

「どうした、どり

 かなめがぼうちしたままでいると、宗介が振りかえった。

「はやくしろ。敵が来る」

「…………」

あいが悪いのか」

「こ、来ないで」

 近付く宗介から逃れるように、かなめは後ずさった。

「あたしに近付かないで」

 宗介がひたと立ち止まった。

 沈黙。

 怒っているのか、いらだっているのか。りつけられるかもしれない。もしかしたら、なぐられるかも。いや、それよりも──この男は無言のまま、どこかの冷たいやみの奥に、自分を引きずり込んでいく気では……?

 背中を向けて逃げ出したいしようどうられた時、かなめははじめて気付いた。

 暗がりのむこうの宗介は、思わぬ相手からひらちをくらったような表情をしているだけだった。

 彼は、なにかを言いかけ──だまりこみ、うつむいて、ようやく口を開いた。

「俺のことが……恐いのか」

 彼女には答えられなかった。

「たぶん、自然な反応だ。君から見れば、確かに俺は……」

 血に汚れた横顔に、いやしがたいほど深いどくかげがさした。

(え……?)

 かなめはどきりとした。

 どうして彼は、そんな顔をするのだろう?

 どうけいの対象にきよぜつされ、それを自分でも納得していて、さびしげにため息をつく……そんな人間に共通の顔。身体の傷ではなく、別のなにかが痛いはずなのに、悲しいかな、それにえるだけの強さも持ってしまった人間の顔。

 彼はうずくまるように、痛む脇腹を押さえながら、

「……だが、いまはまんして欲しい。いまの俺が考えているのは、君をに日本に帰すことだけだ。逃げ切るほしようはできないが……俺を、信じてくれないか」

 せんはそらしたまま、どこか弱々しい声で言う。その彼の姿から、しつな戦闘機械のおもかげは消えていた。

「もし、この件が済んだら……君の前には二度と現われない。約束する。だから……」

(そんな……)

 戦闘で傷つき、ぼろぼろになって、それでも自分を助けようとしているひたむきな少年。その相手を『来ないで』などとこばんだことに、彼女は強いざいあくかんを覚えた。

 彼は、いつしようけんめいあたしを助けようとしてたんだ……。

 いま、こうして痛いのを我慢するのも。ひどく『敵』をけいかいするのも。なにからなにまで機械的・ごうてきに考えるのも──

 全部、あたしを助けたいから。そうしないと助けられないから。

 転校初日から自分をしつこくけまわしたのも。どれだけめいわくがおされようと、学校でドタバタ暴れまわったのも──

 敵のこわさを、彼はよく知っているから。

(そうだったんだ……)

 めつけるようなせつなさといとしさが、なみのように彼女を襲った。

 らだしんが熱くうるみ、全身がる。心臓のどうが早くなり、頭にみるみる血がのぼる。彼女にとってははじめての感覚だった。

 くつなどでは説明できない、感情のうず

 自分の中ではげしく二転三転する気持ちを、どう表現したらいいのかわからずに、彼女はけっきょく、ただ答えた。

「……うん」

「助かる。ではいこう」

 そう言いながらも、宗介の表情が晴れることはなかった。

 彼の足取りは、前よりはしっかりしていた。破片が突き刺さっていた時は、歩くたびに激痛がしたのだろう。それがいまでは、すこしは楽になったと見える。

 一〇分ばかり歩いたところで──

 何のまえれもなく、宗介が立ち止まった。

「どうし……」

「静かに」

 宗介は右手でサブマシンガンをかまえた。先のしげみにじゆうこうを向け、だんなく前へみ出していく。かなめも、やみの中に人のはいを感じた。押し殺した息づかい。きぬずれの音。まさか、もう追っ手が?

 宗介がマグライトをけた。

 しげみの奥の低木に、男がひとりりかかっていた。

 息もえだえといった様子だ。全身ずぶ濡れで、黒い作業服を着ている。いや、これは作業服ではなく、ASオペレーターのそうじゆうふくだ。ブロンドの長髪は乱れ放題で、白い顔には泥と血がこびりついていた。

「クルツ」

「よお……。おそかったじゃん」

 クルツ・ウェーバーは口のはしり上げて見せた。それから、力なく前へと倒れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る