第2話 辛さに溺れる夜

激辛麻婆春雨を食べ終え、体の芯まで火照ったまま帰宅した麻美と健二。二人の舌はまだヒリヒリと痛み、顔のほてりも収まらない。二人はそれぞれシャワーを浴び、何とか体を冷まそうとしたが、その刺激的な辛さは体から抜けることなく、かすかな痛みと熱として残り続けていた。


麻美は髪を乾かしながら、ふと健二の方を見つめる。シャワーを浴びたばかりの彼の顔は、どこか艶っぽく見えた。肌が赤らんでいるのは辛さのせいだが、それが妙に色気を帯びているように感じられる。麻美の中に、言葉では説明できない感覚が芽生え始めた。


「まだ、辛いね…」


麻美がそう呟くと、健二も小さく笑って頷いた。「ほんと、体の中まで辛さが染み込んでる気がする。なんか変な感じだな…」


二人はベッドに座り、ただ互いを見つめた。その時、麻美は健二の手を握りしめた。彼の手はまだ温かく、二人の間には言葉にできない何かが流れているようだった。辛さに耐え、共に戦ったその夜の出来事が、二人を以前よりも親密な気分にさせていた。


「こんな辛さ、もう一度味わいたくなるね」


健二が微笑みながら言うと、麻美は少し照れくさそうに笑った。「変だよね。でも、なんかこう、熱くてドキドキする感じが忘れられない…」


その言葉がきっかけとなり、二人は自然と引き寄せられるようにお互いの唇を重ねた。辛さに敏感になっている感覚が、触れるたびに電流のような刺激を生み出す。麻美の肌が健二の肌に触れると、激辛麻婆春雨の余韻が蘇り、まるで火に包まれたような熱が体中を駆け巡った。


二人は絡み合い、辛さの余韻に溺れるようにその瞬間を共有する。汗が再び滲み出し、肌と肌が触れるたびにその熱が伝わっていく。言葉はいらなかった。ただ、互いを感じることで、その夜の辛さと情熱が一つに溶け合っていく。


「まるで麻婆春雨みたいに、辛くて甘い…」


麻美がそう呟くと、健二もまた息を整えながら答えた。「この感じ、クセになりそうだな…」


辛さと情熱が溢れたその夜、二人は激辛麻婆春雨がもたらした未知の快楽に包まれ、完全に身を委ねていた。

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