麻婆春雨の快楽
星咲 紗和(ほしざき さわ)
第1話 激辛の誘惑
麻美と健二は付き合って3年になる、食べることが大好きなカップル。特に辛い料理には目がない二人は、今夜も新しい挑戦に胸を躍らせていた。二人が足を運んだのは、激辛麻婆春雨が名物の中華料理店。「辛さの向こう側を体験せよ」と、キャッチフレーズが刺激的に掲げられている。
「本当に辛いのかな?いろんな激辛料理、もうかなり食べてきたけど」
健二がそう言うと、麻美も「余裕よね!」と笑顔で返す。運ばれてきた麻婆春雨は、見るからに真っ赤で、花椒と唐辛子の香りがテーブルいっぱいに広がる。湯気に混じって漂うその香りが、すでに辛さを物語っていた。
「じゃあ、いただきます!」
二人は一斉に箸を伸ばし、春雨を一口。最初の瞬間は、しっかりとした旨味が広がり、「意外といけるかも?」と安心しかけた。しかし、次の瞬間、猛烈な辛さが舌から喉へと襲いかかり、まるで火がついたように痛みが走る。二人は驚きと共に目を見開き、咳き込むことすらできないほどの衝撃を受けた。
「か、辛い…!これ、ヤバい…!」
麻美は額に浮かぶ汗を拭きながら、必死に水を飲もうとするが、水ではこの辛さが収まらない。むしろ、水が触れるたびに口の中がヒリヒリと痛むように感じられる。健二も同様に、何度も口をパクパクさせ、耐えがたい痛みに顔をしかめている。
しかし、二人はその辛さに抗えない何かを感じ、もう一口、もう一口と箸を止めることができなかった。辛さと痛みにのたうち回りながらも、その刺激がやみつきになっていく。
「どうしてこんなに辛いのに…止まらないんだろうね」
麻美がつぶやくと、健二も息を整えながらうなずく。「不思議だよな…でも、なんかクセになる…」
二人は辛さに涙を流しながら、ただひたすらに激辛麻婆春雨を食べ続ける。お互いの顔を見れば、同じように汗まみれで、真っ赤な顔。そんな姿を見て、思わず二人は笑い合ってしまう。
「辛さに負けたかも。でも、これは…クセになるね」
麻美の言葉に健二も同意し、二人はこの一皿を何とか食べきった。体中が火照るような感覚に包まれ、まだ辛さが体に残っているようだ。辛さに体が震え、妙な気分に浸りながら、二人はそのまま家路についた。
辛さの余韻が残るその夜、二人はまだ知らない。この激辛麻婆春雨が、ただの一皿にとどまらない、二人に新たな快楽の扉を開く体験の始まりになることを…。
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