水族館、イルカを待つ。
うみつき
0.プロローグ
口を開けばあの子達の話ばかり。
考えているのは、次はいつ会いに行くのかの予定。
小さい頃もどうやらそうだったらしい。幼い私を知っている人たちは皆、“本当に好きなんだねぇ”と、半ば呆れたように笑いを零してそう話す。
好きだったのだ、それくらいには。
こちらを見つめるあの瞳も。何であろうと勝てないと思わせるような美しいあの尾びれも。たまにそっぽを向くような気まぐれさも。全部が愛しくて仕方がなかった。
いつだって、あの子達が私の救いだった。私を生かしていたのは間違いなく、あの子達だった。
なのに。
いつの間にか、ただただ純粋に愛することが、どこか許せなくなっていた。あの子達と私は違う種族なんだぞ、その線引きは必要なんだぞ、だなんて気取ったことを意識して。好きでいること自体が苦しいと思うようになってしまっていた。
知れば知るほど、違いをわからしめられている気がして、その感覚は想像以上に辛い。私では、その責任を負えないんじゃないか、なんて考えまで発展してしまう程に。
きっとその過程で忘れてしまったのだ。いつの日かに覚えた、愛しさを。
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