可愛いあの子は番にされて、もうオレの手は届かない
天田れおぽん@初書籍発売中
第1話
オズワルドは劣性アルファだ。
オメガの香りは分からない。
愛しいあの子はオメガだけれど、同じく劣性だ。
アルファの香りは分からない。
ベータがほとんどを占めるこの国では、アルファはもちろんオメガも少ない。
特にオメガは人数が少なくて大切にされている。
オメガとアルファを番わせると、優秀なアルファの生まれる確率が高いからだ。
オズワルドの家の隣に住む男オメガの幼馴染リアンは、劣性ゆえに隠れるように暮らしている。
伯爵家の令息なのに。
貴重なオメガなのに。
劣性ゆえに隠されてしまうなんて理不尽だと思うのだが、リアンの父はそう思ってはいないようだ。
劣性オメガは家の恥。
だから隠しておくのが家のため、なのだそうだ。
オズワルドには分からない理屈だ。
くるくる天然パーマのかかった淡い茶色の髪に、金色に近い茶色の瞳、白い肌。
身長も女性とさして変わらず、華奢な体をしているリアンは抱きしめたらもろく崩れ去りそうに見えた。
キラキラ光る彼の存在は、オズワルドにとっては運命のオメガ。
香らないゆえに造花とも呼ばれる劣性オメガのリアンだが、性格も優しくて、ちょっとお茶目で、オズワルドには魅力的にしか映らない。
だから、いずれオズワルドはリアンを娶りたいと思っていた。
オズワルドは劣性であるが、アルファだから普通に王宮勤めをしている。
もう少し出世すれば、結婚を申し込みにいけるだろう。
劣性同士なら、お互いに匂いが分からない。
だからそれでいいじゃないか、と思っていた。
いつかは彼と一緒になりたい。
それが、オズワルドのささやかな願いだった――――
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