第27話 道標
帰京する両親との食事や会話は、いつも通りのあっさりしたものであった。大半は母が
一翔が
父は昨日の会話について最後まで言及することはなく、母は
一翔は人生を好きなように過ごさせて
「それで、お
佐伯牧師は一翔の左斜め奥に着席し、相変わらずの穏やかな表情で問いかけた。片や一翔は面接試験のような緊張を味わっていたが、意を決して話を切り出した。
「今日の説教…『
「
取り
『天使』との
だがただでさえ抽象的な相談がより
「一翔君が言うのは詰まるところ…神様に認められても、自分と同じ人間に認められなければ救われたとは言えない、ということですかね? そして現代社会に
「はい…
「差し
一翔は牧師に促される
『天使』のことを除いて牧師に対し包み隠さず自分を
「お悩みになるお気持ちは
推し量るような問いかけに、一翔は静かに
「そうですか…そうなると最もシンプルな提案は、やはり恋人を作ることでしょうね」
だが佐伯牧師があっさりと答えると、一翔は苦笑を浮かべた裏で
結局のところ『天使』から受けた提案の1つと変わらない到達点に、やっとの思いで受けたセカンドオピニオンもまた
「あはは…恋人ですか。日頃から大した出会いもないので、それもまた大変そうですね」
「そうでしょうか? 今時の若者は
「実は先月、うちの教会学校に昔通っていた女の子の結婚式をこの礼拝堂で
一翔も当然にマッチングアプリの流行については認識していた。先日父親になった友人のユーヤンも、同サービスで出会った女性と結ばれていたことを知っていた。
それでも素性の
「うーん…恋人って、やっぱり作らないといけないものなんですかね」
「
「そして配偶者の存在は社会に
『価値のある人間』という説教題を即席で作り上げたかのように、佐伯牧師は
『天使』が語ることのなかった具体的で客観的な意見には相応の説得力があり、一翔はその重みを
——たった1人でも他人に認めてもらえればそれでいい、か……。
「まぁ急いで結婚しろなんて言えませんし、
「そうですか…
一翔は牧師が着地させた結論を
「いえいえ。自分のことで一所懸命に悩める一翔君のことですから、他人にも寄り添って悩むことが
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