第25話 相談の方法
父・
税理士の見識を
ただそれはそれとして、父の方から繰り出される要件に見当が付かなかった。
「どうしたの?」
一翔の身長は同世代の全国平均よりも多少上回っていたが、父は恐らく180cmには達していると思われ、見上げた顔は
「母さんと話してたんだが…ここにもう
「えっ!? …ああ、うん。
「…何か用事があるんなら、別に優先してもらって構わないんだが」
「いや…大丈夫、何もないから」
「それじゃあ、また明日…」
一翔はそう言って、今度こそリビングから脱出しようと足を踏み出した。父に苦手意識があるわけではなかったが、2人きりというのもまた居た
「一翔、少しはゴルフ上手くなったのか」
だがそれでも父は
ゴルフ場関連の企業に勤務する以上、仕事の理解を深めるためにもゴルフの練習は必要であった。一翔も一時期は近場のレンジを訪れていたが最近はさっぱりであり、肝心のスコアも120を切れればマシな方であった。
他方で父もまた職業上顧客とゴルフをする機会は多く、持ち前の運動センスを
「…大して変わってないよ。ゴルフ場での立ち回りには慣れたけど」
「そうか…それなら仕事の方もまぁ、上手くはやってるのか」
「…うん、それなりには」
ぎこちないような会話が続くなか、一翔は
父と仕事の話を交わしたことは振り返っても
「ならいいんだが…ずっと引っ掛かっていてな。余計なお世話かもしれないが、一翔は
案の
「だからこんなことを言うのも
伝える必要性に
それが子の親としての当然の姿勢なのかは一翔には
「…そんなに遠慮がちになるなら、
思わず一翔の口から
「そうか? おまえは葬儀の
その切り返しを受けて、一翔は表情を硬くした。
父は昔から
税理士も接客業の領域とは不可分ではないものの、父に関しては臨床心理士の域に触れているのではないかと思うことが多々あった。その父は一翔の反応を踏まえて、更に言い聞かせた。
「悩みがあるなら早めに相談して解決しておけよ。世の中には手遅れになると深刻になる悩みもあるものだからな」
ここまで話が進むと、一翔はすっかり後に
『家族や仲の良い友人だからこそ、重要な相談は
「じゃあ父さんは、何か重要な悩みを抱えているとして…一体誰に相談するんだよ」
その質問の瞬間を、一翔はリビングのどこかから『天使』がはっきりと注目していたような気がした。一方の父は、
「相談の内容に
「そんなに上手くいくものか?
「別に結論としてそうなる分には構わないだろ。相談が成り立つのなら、それ以前に
結局父との会話は、その問いかけを境目になし崩し的に終わった。一翔はそれ以上何も言い返すことが
父の言い分は職業柄
——父さんの言う通りだよ。せっかく提案してくれた意見を
——だから『価値のある人間』の成り方なんて相談を後腐れなく
祖父母宅の玄関を出ると、またぶり返した夏日の陽気がじっとりと一翔を照らした。だが
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