第22話 気配りのできる者
2024年10月11日 金曜日。宣告された死まで残り24日。
澄み渡った青空の下、
穏やかな陽光は礼拝堂を気高く
一翔は今日もまた
だがその一方で、死を悲しむからこそ乗り越えるという因果関係が成り立つのであって、果たして自分は本当に祖父の死が悲しかったのだろうかという疑問に改めて直面していた。
単に
昨日固めた意志を決意と呼ぶにはあまりにも空虚で、その
当然にそのポーズは日に日に使い回せるはずがなく、何かしらの動きを求められることは確定的なのだが、その『何かしら』への関心は依然として低調なままであった。
「お兄ちゃん、駅まで送っていってよ」
一翔は気が付くと、妹の
火葬と納骨が終わり、遺族と牧師とで予約していた中華料理屋にて昼食を囲み、お開きになるまで一翔は
その状態のまま店を出た矢先、スーツケースを引き
「え、なんで?」
「なんでって…お父さんはお母さん乗せてお
両親は週末まで
その際に今日中に帰京する
そんな妹は引き締まった小麦色の身体を喪服で包み、グレージュのセミショートヘアを風で揺らしながら
「
「え? 浜松駅まで送ってくれるんじゃないの?」
「なんで?」
「なんでも何も、どうせ暇なんだから断る理由ないでしょ。荷物あるんだからその辺
「…とても送迎してもらう人間の態度とは思えねぇんだけど」
今年
両親に似て幼い頃から運動神経に
快活で人懐っこい性格は
来年には式を挙げる予定である一方で、体育教師を目指すため通信制大学にも通っているらしく、一翔には
「あー、でもせっかくだからどっか寄り道してもいいかもなぁ。この辺に観光名所的なところないの?」
後部座席でスマホをいじっていた
浜松駅まで十数kmの距離をカーナビでルートを設定している以上、
そもそも一翔は8年ほど浜松で暮らしているにも
「ねぇよ。葬儀で来てる身なんだからふらふらしてないで真っ
「つまんない男だなぁ。じゃあ何かおすすめのお
「なんでおまえはそんなに旅行気分なんだよ」
「失敬な。ちゃんと職場の人達にシフト調整してもらったお礼とかで配ること考えてんの。お兄ちゃんこそ3日も仕事休んでるのにそういうの探さないわけ?」
「俺の会社からは供花があったから、香典返し的な返礼品がもう手配されてんだよ」
「ふーん。それはそれは、兄上はいい
一翔はバックミラー越しに映る
兄としての視点では、妹のがさつで気分屋な
「まぁお
脈絡のない話題の転換を受け、一翔は
母からも振られたテーマに再三触れることにはうんざりしていたが、目的地までの大通りは交通量が多く思ったように車を進められず、
「いねぇよ」
「気になっている人もいないの?」
「いない」
一瞬だけ『
そもそも恋人のいる・いないのマウントは
だが身構えていた一翔の予想に反し、
「何も無いってことは無いと思うんだけどなぁ。お兄ちゃん
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