箱庭
私はただそこに座っているだけだというのに、いったい何がそんなに珍しいのでしょうね、人間たちは代わる代わる私の前に立ち止まって、じっとこちらを見つめたり、口元に手をあてて考え込むような仕草をしてみせたりするの。彼らと同じかたちをしているというのに、いったいどうしてかしら、皺が寄ったスカートの裾をほんのすこし直すことすらできずに、私はただ、彼らを見つめ返している。いつもそうよ。
照明は私の肌にきまった陰影を作るの。それをが私をいちばん美しく見せる角度なのだと人間は言ったわ。美しい、美しいと人間は口を揃えて言うけれど、何のことだかさっぱりわからないの。彼らの鳴き声か何かかしら。私がここへ移るよりもずっと前。お天気の一つもお目にかかれなくなってしまうよりもずっと前に、そよ風に乗って、小鳥たちがこうやって、揃いも揃って同じ言葉で鳴くのを聞いたわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます