第109話 雨と傷口
何が起こったのだろう。
刀として存在するものが、常に抜き身であるか?答えは・・・
ムラサメは、もうひとつの姿として、一振りの刀でもある。鞘に変化し携行もできる。
つまりは、
そして、ムラサメは指示により、鞘として
放り出される者達は、一瞬、世界が暗転する。
そして、天より降った
ク海の波は退く。それこそ風呂の栓を抜いたように。
陸に上がってしまったら、宝というものは人の姿を保ってはいられない。本当の人でない者は、本来の器物の姿に立ち戻り、転がるのみ。それが、足元に懐剣、風車と虫眼鏡、そして銃と本が落ちていた理由だ。
シロウは銃を突きつけられた時、右手で
これしかなかったのだ。一瞬で全てをひっくり返すには・・・。
もともと、ユウジには
少女の瞳と銃口は震えているのは分かっていた。だからシロウは決断した。
己が撃たれようと
「
意を汲んで
ああ、また雨が降ってきた。
倒れる敵兵達が苦しみ、叫びうめく声が此処其処で木霊する。
倒れたシロウの右肩には溢れる血が。
二発目は逸れていたが、シロウの右肩には一発目の銃弾を受けている。
「なんで?・・・なんで傷がふさがらんと?」
サヤが必死に椀と戻った
シロウの首の紋章に戻った
「右肩の下に、細い何かが入ってる。血は止めることができても、これを取り除かないとこの傷はメルといえでもふさがらないみたいだわ。これは宝の力かもしれない。」
落ちた宝を拾い集めていたチエノスケが銃を拾って吐き捨てる。
「こいつ!だんまりを決め込みやがったっ。」
銃の宝はすでに錆始めていた。心を閉ざしている証拠だ。グンカイに拾われた本もすでに錆びている。
首を絞めてでも問い質したいが、ここはもうク海ではない。銃を猫娘の姿には戻せない。
「そうだ!ムラサメをもう一度艦に戻して、艦内に連れ込めばコイツも口が利けるのではないか?」
そうかもしれない。グンカイがもう一度
「ああ、派手にやってくれましたね。せっかく引き込んだ彩芭の兵も台無しだ。」
忘れもしないこの声。人がつい心を許してしまいそうになる優しく落ち着いた青年のものだ。
その青年は小雨の中、物憂げな顔でシロウを見つめる。
頬に滴る雫が、その顔の端正さを際立たせるかのように、つるんと流れ落ちる。
「・・・ロクロウ。」
「若、・・・ご苦労されているようですね。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます