第66話 順番と報復
もう、お天道様は、一番高いところまで登っている。
シロウ達は、
「なんじゃありゃぁ。」
天守閣に大きな大きな大ムカデが巻き付いているのだ。
この城は西方面に郭を設け、その他方位は
傍から望むその城は、すでにアダケモノの手に落ちたように見える。
「こりゃぁ、やり返し甲斐があるというもんじゃ!」
昨日の晩の話
「
みんなの視線がシロウに集まった。
いいかげんどうするか決めねばならない。ここには長く居られないのだ。
「ふむ。若。
「グンカイ、まだこの目で見ておらぬ。それにあのタロウの兄上がやすやすと敗れるとも思えぬ。まず、
「ごもっとも。」
「そして、我は多く民を北へ着の身着のままにがした。その責をとらねばならぬ。」
「こんなことになってるなんて思ってもなかったもの。」
サヤは、若様のせいではないと言わんばかりだ。
「サヤ、指導者は全てに責を負うのだ。
「では、心配事をあげまする。まず、兵力が皆無であること。先の城下の戦いで、アダケモノの総攻撃と火災で統制が崩れ、兵は逃げ散りました。再び会合できるとは思えませぬ。我々は戦える者は三人じゃ。普通なら、これでは落ち延びるのも難しいというもの。しかも傷つき疲れ果てている。」
シロウは目を閉じてグンカイの話を聞いている。
「そして、敵の戦力、兵力が未知数であること。北の
グンカイは続ける。
「最後に、我々は
「この場所は
チエノスケが目を押さえた。
「つまりは、まだこの上にはまた違う仇の花が咲いておるということか。・・・よくもまぁ次々と。」
アダケモノの心配と恐怖がまだ去っていない。
「状況が混沌としすぎて、どうしていいか分からないですね。」
「行き当たりばったりになるな。まぁ逃げるにしても周りは敵とク海だらけ。当てがない。」
チエノスケとグンカイも腕組みをしたままだ。
シロウが言い出した。
「ああ、あれじゃ。体を洗う順番!。」
「湯あみのですか?。」
チエノスケが目を丸くして、それが何か関係がと聞いた。
「おう!我は体を洗う時、頭から洗うのじゃ!皆は違うのか?」
「いえ、私もそうですが。」
チエノスケはピンとこない。
「もう、ごちゃごちゃ悩まず、汚れは上から落としたいのじゃ!。」
本来の若様らしさが戻ってきたらしい。
「上とは、
グンカイが笑う。
「ウチも掃除する時はまず上の埃から落としますよ。それに・・・。」
サヤは明丸を見た。
「サヤ、そなたの狙っていたものと会えたようじゃの。」
サヤはモモの甲羅越しに明丸を撫でる。
何も言わない。
シロウはその様子を見ていた。
「最初から悪意は感じていなかったのだ。だから逃げた時、追わせなかった。」
チエノスケを見る。彼はうなづいた。
「本当に気をつけるべきは、隣に座っている鹿だったからの。」
シロウの目は淋しそうだった。
「あの時、一か八か、大江殿をサヤ殿の見張りにつけた訳ですね。だから私だけを連れて戦いに出た。」
チエノスケも少し気持ちが落ち着いたようだ。
「ふふ、あの戦いで死ねばそれまで。生きて帰れば、何か分かるだろうとは思っとった。」
今は火は使えない。川原の石の影に隠れて休んでいるからだ。
まだ月は半分も欠けてはいない。 川はやわらかくその姿を水面に映す。ここは・・・ク海なのに。
「それにしても、まさか婆やがあんなに美しい
シロウは深く、多く傷つき過ぎた。
「若、見張りはこのグンカイとチエノスケにお任せあれ。今日はおやすみください。」
元お傅役は何かを思ったのか、早く寝ろと言う。
シロウは微かに笑うと
「このところやられっぱなしじゃ。ここらでやり返さねばのう。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます