第20話 婆様と本心
「しかし、つまびらかにしたいことが結構あるのぉ。」
若様がまた、もみあげを
「まずは、
ロクロウが
「現在、この城で若の意を汲んで行動できる宝の持ち主は五名おり、宝の数は六つ、その内二つは
サヤがシュンとして
「失くしちゃったんはウチのですね。すいません。」
ロクロウは、気にするなと微笑み、
「それは置いておきましょう。配下の五名の内三人はこの場にいる沖殿、サヤ殿と私。それぞれの宝が計四つ、沖殿の
「持ち主がいない宝は先日の銃、本そして大剣。調査中のがひとつじゃ。」
「えぇと。」
視線が若様に集まった。
「ん?我?我は宝は持ってないぞ。悪いか?」
まずかったか?いや今のは自分から絡んだよなという雰囲気が立ち込めた。
「我の
「次に状況です!」
若様の話の途中でロクロウが構わず話はじめる。この
「現在、我々のいるこの
「下手したら、次に沈むのはこの
若様はぶつぶつと絶対
ただロクロウは
「また、現状としては、数年前から若様のおじい様であられる
「国力を削がれているから、押し返すだけで精一杯じゃ。ええい
許さん、許さんぞぉぉと
「次にク海とアダケモノについて知識を共有、確認します。」
つまりは
ク海
・約八十年前に発生、徐々にその海面を上昇させている。
・
・海面下では自然も他の動物も通常通りの生態をしている。
・ク海面下では、人間のみが五感と精神に支障をきたす。
アダケモノ
・生態が不明。生物ではない可能性が極めて高い。
・硬い石化した鎧状のものをまとうため
・非常に
・ク海面より上に出ることができない。例外有り。
・人間以外の動植物を襲わない。
・人間および宝に反応する。
・・ということだ。
「しかしな。」
若様の独り言は終わったらしい。
「まずもって、このク海とアダケモノの目的、
「それを探ることが我等の役目・・・ということでしょうか?」
沖が訊く。
「そうだ。それとユウジの救出を並行して行う。」
少し会議が長くなりそうなので、ロクロウは新しいお茶を持ってくるよう女中に頼んだ。
「ふう、先は長いのぉ」
若様が新しく淹れられた茶を一口飲む。
「ああそうだ、
ロクロウも口を
「荷造りをしておられました。
若様が少し吹いてしまって、熱い熱いと慌てて椀を置く。
「やっぱりか?」
「あのようなご
若様はやれやれと頭を抱えた。
「あのぉ、婆や様とは?」
沖とサヤは置いてけぼりだったので尋ねてきた。
「ユウジの所の婆様よ。我の幼き頃の世話係でもある。物腰は柔らかいのじゃが、芯が強すぎてのう。一度物事を決めたら岩のようじゃ。びくともせん。」
「もともとお役目は
沈黙の後、フッと若様がため息をつく。
「
このサヤという娘はこのような身の上話には
「そうじゃ。我がユウジの最後の
「婆や様は何と
「残された遺族として、探索不要。ただ武士として孫を
「片城にはそのような婆様がいたのか。親不孝者め。」
沖がポツリと小声で漏らした。
「・・・しかし、
「
「行くなと説得せなんだのか?」
若様がちょっと口を
「最初からそのつもりでございました。」
ロクロウもちょっと口を
「うんにゃと言われたのであろう?」
「はい、最初に。」
「うんにゃと言ったらもう聞かんのじゃ。婆様は。何年か前の
「他人の迷惑、足手まといになることは極端にお嫌いになりますからな。」
ロクロウが飲み終えた茶碗を置いた。
「それで・・・何と言っておるのだ。」
「お役目を解かれた以上、ただの老婆。孫を探すことを最後の務めとすると。」
「なんと・・・。」なぜか沖は
「そもそも、ク海は目からして
皆、頭を抱えた。
「ああぁ、思い出した。」
「何をですか?」
突然のことにサヤが問う。
「ユウジが生まれた時のことよ。家族全員で笑っておった。婆やも幸せそうにな。我もだ。」
沖は視線が畳の
「これはいかん。」
若がすっくと立ち上がった。
「ああ、こりゃぁ、ただユウジのところに行きたいだけじゃの。」
つまるところそれが婆様の本心だろう。
「それで、もう発たれたのですか?」
心配するサヤにいえいえと首を横に振るロクロウ。
「もし、ク海に発たれるのならば、若様にご
「・・・ロクロウ!我に投げたな!。」
「
「ああっもうっ!ク海などよりよっぽど
「私もアダケモノ相手の方がよっぽど落ち着きまする。」
「若、腕の見せ所でございます。しっかり孝行してくださいませ。」
・・・悪いヤツ。
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