第23話「尖ったデザイナーズマンション」

 今日は新たに取り扱うことになったデザイナーズマンションの内見に行くことになった。

 クライアントからは「特別な体験ができる場所」として勧められたが、その説明にはあまり魅力を感じなかった。どうせ、デザイナーズマンションといっても、打ちっぱなしのコンクリート壁だとか、トイレとベッドが隣り合っている奇抜な間取りだとか、特に目新しいものはないだろうと考えていた。


 マンションに到着すると、外観は確かにスタイリッシュで洗練されたデザインだった。中に入ると、広々としたロビーには奇抜なアートが飾られ、なんとも言えない不穏な雰囲気を醸し出していた。どうやら、このマンションは普通の住居とは一線を画す何かがあるようだ。

 内見を始めると、各部屋には最新の設備とともに独自のテーマが施されていた。例えば、ある部屋は「宇宙」をテーマにしたデザインで、天井には星が描かれ、壁には銀色の装飾が施されていた。

 他には「母」をテーマに肉色に曲線の壁の部屋、「チャクラ」をテーマに光る人体の絵が壁にでかでかと描かれ、とインド風の装飾をされた部屋……。どの部屋も落ち着けそうにない。

 しかし、何とも言えない違和感を感じるのは俺だけなのか。無理にテーマを押し付けられているような気がしてならなかった。


「デザイナーズマンションって、どうも俺には合わないな」と、ふと心の中で呟いた。


 その時、背後から声がした。

「おっしゃる通りです、田中さん」

 現れたのはここを手がけたデザイナーだった。彼はニヤリと笑いながら、


「このマンションには特別なエネルギーがありますから、住む人によって全く違う印象を与えるんですよ」と言った。


 その言葉を聞いて、ますます気味が悪くなった。特別なエネルギーなんて、聞こえはいいが、オカルトかおかしなスピリチュアルの常套句だ。

 デザイナーの言葉を真に受けるのは危険だと思い、俺は適当に流して内見を続けた。


 結局、社長に報告するために事務所に戻ると、俺はマンションの内見の印象を伝えた。すると社長は、まるで興味がないかのように、


「まあ、そんなもんだろう。今は面白い物件が多いから、選択肢は豊富だしな」と呟いた。


 このデザイナーズマンション、何か不気味な魅力を持っている気がするが、今は関わらないのが得策だろう。あの独特の雰囲気は、少なくとも俺には居心地の悪さしか感じられなかった。

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