黒魔法で何が悪い

第1話登録と初ダンジョン

やっと１６歳になったぞ。

１月１日生まれの俺は、早生まれだから高校１年生でもダンジョンに入れなかった。

覚醒者になった同級生は、モテモテで自慢ばっかりだ。

土日にダンジョンへ行って、１０万も稼ぐから羽振りがいい。

中には、ロレックスの腕時計をして来る奴までいやがった。

後で聞いた話だが中古で１１５万円だった。

そんな時計を持ってくるな！

１２月頃には２日で４０万も稼いだと自慢してたぞ。

俺なんかスマホで時間を見てるのに・・・・・・

そんな妬（ねた）みながらの日々も、おさらばだ。

１月３日まで休みだったダンジョンセンターに、４日にやって来たぜ。

冬休みも５日で終わりだ。

４、５日でダンジョンで覚醒してみせる。

正月三が日の次の日だから人もまばらだ。

「２２番の方どうぞ」

ヨシ、俺の番だ。

窓口でマイナンバーと申請書を見せる。

ダンジョン年齢引き下げにより、マイナンバーも１６歳に引き下げられた。

事前に郵送したから朝一で市役所でもらって来た。

「綾野安信（あやのやすのぶ）さんですか？」

「はい」

「書類も揃ってるので３０分後に冒険者カードが出来上がります。それまでカードを持ってお待ちください」

新たな１２番のカードをもらったよ。

ああ、３０分が遅く感じる。

「１２番の方どうぞ」

飛んで行った。

冒険者カードを奪うように取って外へ出る。

ここから歩いて２０分のダンジョンに向かった。

『吾妻ダンジョン』、それがダンジョンの名だ。

交番みたいな建物の中に、ダンジョンの出入り口があるハズだ。

それに監視カメラがあっちにもこっちにもあった。

２４時間監視続けて、ダンジョンから人々を守っている。

そんな建物に入った。

建物内にも監視カメラが・・・俺を監視しているみたいに動いたぞ。

その動きにゾクッとする。

『一般人は立入り禁止です。ダンジョン法に触れる恐れが有ります。すみやかに退去してください。冒険者の方ならカードリーダーにカードを読ませて入場してください』

そんな機械の声が響いた。

頑丈な檻があってカードリーダーに冒険者カードを「ピッ」と・・・

檻のドアが「ガチャ」と解除された音が響く。

そして勝手にスライドして開いたぞ。

勇気をだして中に入った。

それを確認したようにドアが勝手に閉まった。

「ガチャン」とロックされたぞ。

男女ロッカールームの男の方へ入る。

女の方には、カードリーダーがあった。

これって差別だぞ。

文句を言っても仕方ない。

予約したロッカーを暗証番号で解除して開けて着替える。

ロッカーの中には、自衛隊推奨の陸自戦闘長靴Ⅲ型が入っていた。

それにバトルメイスも入っている。

【バトルメイス】

長さ　　　　：８０センチ

グリップ　　：１６センチ

ヘッドの長さ：３２センチ

ヘッドの幅　：１５センチ

重量　　　　：３５０グラム

販売価格：２万６８００円

【陸自戦闘長靴Ⅲ型】

販売価格：１万１８００円

合計３万８６００円は、学生の俺にとって痛い出費だ。

持って振ってみる。

なんか軽いかも・・・嫌、何回も振るから、これぐらいがいいかも・・・

いよいよ地下ダンジョンに挑戦だ。

階段を１段１段踏み締めて下りる。

やっぱ地下だから薄暗い・・・あ、あれが光コケか・・・

横幅１０メートル高さ１０メートルの通路があった。

一番分かりやすいダンジョン通路だ。

そんな通路を歩きだす。

５分が経過した頃に「ギギャ、ギギ」と鳴く声がした。

これってゴブリンの声だぞ。

俺の中に緊張が走り抜ける。

メイスの握りに力が入る。

右の通路からゴブリン２人が出やがった。

身長１４０センチの緑の肌で、口から尖った牙が見えている。

その醜い顔をこっちに向けやがった。

ああ、ついてない。

１階なら１人のハズなのに・・・

もう目の色を変えて走りながら棍棒を持ち上げたぞ。

あ！その持ち上げた棍棒で、後方のゴブリンの顔を叩きやがった。

痛がってかがむゴブリン。

すまなそうにゴブリンが見ている。

めちゃスキだれけだぞ。

だから走りながら右手のメイスで頭をぶっ叩く。

凄い感触が手に伝わる。

頭を陥没させて倒れるゴブリンは、ピクピクしながら息絶えた。

え！俺の目と残ったゴブリンの目が合った。

ああ、めちゃくちゃな叩き合いだ。

しかし、リーチの長い俺の攻撃がようやくヒット。

棍棒を手放すゴブリン。

その肩にメイスが食い込んだ。

膝をつくゴブリンの頭にメイスをフルスイングしてぶっ飛ばす。

あ！レベルアップしたぞ。

綾野安信（あやのやすのぶ）

Ｌｖ１

ＨＰ１０

ＭＰ２０

黒魔法new

なんと覚醒した証の魔法を習得したぞ。

しかし、クズ魔法と呼ばれる黒魔法だった。

ちょっと最悪だ・・・卑下（ひげ）しても仕方ない。

前向きに考えよう。

絶対にダンジョンで稼いでみせる。