学校イチのマドンナが、実は地雷で、魔法少女だった話

冬 秋

第1話 地雷少女なんですか?

「あー、病んだ。病んじゃいました」


暗い部屋の中、青白い光を浴びて少女は自らの手首を引き裂いた。


❖❖❖


「朝か、、」


窓から入り込む日差しで目を覚ます。


スマホの画面を見て、メッセージアプリに入っている通知の内容を確認する。


『トウマ君大好きだよ』


そんな内容を確認して、自分の頬をつねる。

痛い。すごく痛い。


「夢じゃ、ないんだな、、、夢じゃないんだな!!」


ベッドの上にたち上がり、ガッツポーズ!

朝の気だるさを忘れるぐらいの喜びが湧き上がってくる。


なぜなら俺、17歳童貞の朝霧トウマは。


昨日、彼女ができました。


「っしゃおらー!!」


「朝からうるさいわよ!!」


1階から聞こえてくる母さんの怒鳴り声は無視しておこう。


❖❖❖


「じゃ、行ってきます」


身支度を整えて玄関を開ける。


「今日、夜ご飯は?」

「家で食べる」

「そう、行ってらっしゃい」


エプロン姿の母から送られて家を出る。

母、朝霧メイ。年齢不詳(と言うか知らない)。肌は白く、流れるような髪が後ろで縛られている。見た目はかなり若々しい。

近所では前々から美人と有名なのだが、ここ最近は妙に若々しくなってきている気がする。


そんな母を背にして、1人で学校へ向かう。


幾つか角を曲がってところで、背中を叩かれた。


「いてっ」

「やっ!おはよ!トウマ!」


振り返ると、艶やかな長い金髪をたなびかせて笑う、ギャルがいた。黒ギャルではなく、肌が明るい白ギャルで、アイラインが横に綺麗に引かれている。簡単に言うと、美人な部類である。


「ミサ、朝からどつくのはやめてくれ」

「死んだ魚みたいな目を復活させたいのさ!」


おや、唐突な悪口ですか。


「生きた仏みたいな目の間違いじゃないか?」

「え?何言ってんの?」

「⋯⋯」


こいつは小学校からの幼なじみの夏神ミサ。中学から明るい部類で、見た目通りモテ子だったが、高校に入ってからは白ギャルと化した。いやしかしモテる。むかつく。


「で、彼女できたってホント?」

「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれた。これを見ろ、、」

そう言ってスマホの画面をミサに見せる。

メッセージアプリのトーク画面で、件の言葉が綴られている。


『トウマ君大好きだよ』


それを見たミサは絶句する。


「どうだ、驚いて声も出ないか」

「いや、え、だって、相手って、慈羅じらさんなの、、、、?」

「そうだ、驚け」

「……だって、慈羅さんって、学校のマドンナじゃん、、」


そう、俺、朝霧トウマの彼女、慈羅じらネコ

は、学校イチの美女なのである!!(自慢!!!)


「遊ばれてるんじゃないの、、?」

「バカ言うな、ネコさんに彼氏がいた、遊んでた、なんて噂を聞いたことがあるか?」

「、、ない、、けど、、」

「疑うな!ネコさんは正真正銘俺の彼女なんだ!」

「ま、まあ素直にすごいと思う。おめでとう」


どこか浮かない顔をしてミサは祝福をしてくれた。

そこから話題は変わり、ミサの好きな人の話題になった。


「私は好きな人はいないかな」

「ほんとか?ミサはモテるじゃん」

「好きな人からじゃなかったら意味無いでしょ」


そんな会話の途中でポッケの中のスマホが何度かバイブレーションした。

大した事じゃないだろうと思って、ミサとの会話を続けた。


その後も何度かスマホが震え、


「やば!今日日直だった!先行ってる!!」


そう言ってミサは1人で学校まで走っていった。


そしてまたスマホが震えた。


「なんだよ、うるさいな、、」


スマホを覗くと、大量のメッセージアプリからの通知。そしてそれは今も通知の数をモリモリと増やしている。


「え、こわ、なんだこれ」


通知タブを触ると、メッセージの送信者は噂のネコだった。

内容は以下の通り。


『返信遅いよ』『まだかな』『一緒に登校しようね』『まだ寝てる?遅刻しちゃうよ』『遅い』『トウマ君のお家向かうね』『今どこ』『隣にいる子だれ』『ねえ』『なんで』『ひどい』『私だけじゃないんだ』(etc...)


おやおや、、、何かかなり様子がおかしいようですね。

と、途端にゾクリと背筋に殺気を感じる。

恐る恐る後ろを見ると。


電柱の影から半分だけ顔を覗かせて、こちらを見つめる(ほぼ睨んでいる)ネコだった。


美人が睨むと恐ろしいというのはアレは本当だ。

ゴゴゴォと、効果音がなりそうだ、、、


「ネ、ネコさん、、?」


そう言ってから何秒が経った?何分?何時間?少しの時間がかなり長く感じる。


ゆっくりとゆっくりとネコが電柱から姿を現した、、、、。


その手には、、、

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

学校イチのマドンナが、実は地雷で、魔法少女だった話 冬 秋 @Mis_____Aki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画