異次元へのフライト
岸亜里沙
異次元へのフライト【前編】
羽田発、旭川行きのJAL国内線。
客室乗務員の
空席だったはずの座席に、一人の老人が座っていたのだ。
離陸前には誰も座っていなかったのを、鈴森は確認しており、他の座席の乗客が席を移動したのかと思い、声をかける。
「すみませんがお客様、航空チケットの座席番号を確認させていただいても、よろしいでしょうか?」
すると老人は、ポシェットからチケットを取り出すと、無言で鈴森に手渡す。
そのチケットを見て鈴森は目を疑う。
座席番号42-C。
確かにその座席の番号のチケットだった。
「失礼致しました。こちらお返し致します」
鈴森は頭を下げながらチケットを返す。
もしかしたら座席を間違えていた乗客が、正しい座席に座り直したのかもしれないと考え、鈴森はあまり気にする事なく業務に戻った。
しかし暫くして鈴森がまた座席番号42-Cの横を通った時、鈴森はその場で立ち止まる。
「えっ?」
鈴森は思わず、声を出す。
老人が座っていたはずのその席に、今度はスーツ姿の男性が座っていたのだ。
「あの・・・お客様、航空チケットの座席番号を確認させていただいても・・・」
鈴森が言い終わる前に、男性はスーツの内ポケットからチケットを取り出す。
番号を確認するが、やはり42-Cの番号だ。
「し、失礼致しました。お返し致します」
一体何が起きているのか、鈴森には理解が出来なかった。
先程までその座席に座っていた老人が、他の座席に座っていないか機内を調べるが、奇妙な事に何処にも見当たらない。
あまりにも不思議な出来事に鈴森は混乱し、先輩客室乗務員の
「
橋本は愛嬌たっぷりの笑顔で笑う。
その顔を見た鈴森も頬を緩める。
客室乗務員のノウハウを教えてもらっていた頃から、いつでも冷静で可愛らしい橋本の姿は、鈴森にとって憧れの存在だった。機長からも客室乗務員として絶大な信頼を得ている橋本の存在が機内に居るだけで心強い。
不可解な事だが、今の所、問題も起きていないので、鈴森は気にしないようにと自分に言い聞かせる事にした。
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