異世界で魔物大好き二度目の生物学者ライフ ~妾達魔物陣営が世界の中心でありんす~

ゼータ

プロローグ

 子供は平気で昆虫をいじめたり、殺したりする。それを親は必死で止めることはない。人間にそういうことをするときは必死に止めるのに。


 なぜなのだろうか?



***

 地面の中に、一人の小さな少女と10体ほどの人間ではない生き物が集まっていた。

 その生き物の中には黒い胴体が3つ繋がった者、ブーンと大きな羽を広げる黄色い者、白い綺麗な羽をしまい賢そうに静かにしている者など全員がバラバラだった。

 そしてその中にいる人間の少女はさらに馴染めてなかった。年齢は5歳くらいだろうか、いや身長的にもっと子供かもしれない。服装は真っ黒のドレスで土の中にいるとは思えない格好だ。

 それなのに少女はその場で最も偉いかのように、みんなの前で話している。


「妾達の準備は完了したでありんす。チマチマするのもみんな殿飽きたでありんしょう。そろそろ攻撃、いや殲滅を始めるでありんすか」

「「はい!」」


 その者たちは人間が聞き取ることができない、波長で会話をしていた。

 そしてここから世界は変わり出す。

***


 

 私は露光ろこうりん、普通の家庭に生まれた可愛いものが好きな普通の少女だった。

 4歳頃に庭で飛んでいるチョウに目を引かれた。そのチョウの羽は薄い黄色で黒い線が入っていて美しい模様ができていた。特に羽の後ろの方のチョンっと飛び出ているところが可愛かった。あとから知ったがその部分は尾状突起といい、そのチョウの名前はナミアゲハという。

 私はそれからチョウに興味を持つようになった。チョウを捕まえて虫かごで飼うようになった。一日中捕まえたチョウを見ていたし、珍しいチョウを捕まえるために一日中外を駆け回ったし、チョウのことがかかれている図鑑をずっと眺めていたりした。それほどチョウが大好きになっていた。

 チョウを飼ったり、図鑑を見ていて気づいたのだが、チョウは羽化できる確率は1パーセントくらいしかない。それにチョウは成虫(みんなが思い浮かべる羽を持ったチョウ)になってから2週間くらいで死んでしまう。死ぬときはヨボヨボとなり色も悪くなってしまう。個人的にだが不自然なシミができたり黒っぽくなってしまうのは悲しい。

 せっかくの綺麗な模様や張りのある羽が失われるのはとても悲しかった。

 そのため綺麗な状態で保管したいと考えるようになり、捕まえたチョウを標本にすることにした。生きているチョウを殺すのは罪悪感があったが、綺麗な状態で保つためにはしょうがないと思った。

 普通に飼う用のチョウももちろんいた。飛んでいる姿、花の蜜を吸っている姿も美しいから。

 5歳になる頃には、チョウ博士になっていた。近くでとれるチョウはすべて標本でまとめた。

 それ以降はチョウ以外の昆虫にも興味を持つようになった。今までは可愛いからチョウに興味を持っていたが、このときには全ての生き物が可愛く見えていた。

 それからたくさんの昆虫を標本にしたり、飼ったりした。



 小学生になり初めての友達ができた。私は自分の昆虫コレクションを友達に見せたら、キモがられた。私は理解できなかった。なんでこんなに可愛い子達を嫌うのか。

 友達は友達ではなくなった。いや、もとから友達ではなかった。

 このころにはゴキブリなども標本にしていた。

 家族からはやめなさいと注意された。もちろん止めることはなかった。

 なぜなら止める理由が分からなかったから。同級生は可愛いシールを集めたりしているのに、なぜ自分だけが可愛いものを集めてはいけないのだろうか。普通に理解できなかった。

 家族から否定されるような昆虫はこそっりと保管することにした。

 私はそれから人間を信用しなくなった。

 誰も生き物が好きな私を受け入れてくれないのだと思った。

 今思うと、家族と同級生に受け入れてもらえないくらいでと思う。しかし、大人になっても結局は誰にも受け入れてもらえなかったからこのときに人間を信用しなくなって良かったと思っている。


 

 それからも昆虫について勉強したり、捕まえたり、飼ったり、標本にして飾ったりした。

 この頃には美しい、可愛いだけではなく、生き物たちが生きている厳しい環境も好きになっていた。たとえばカマキリは共食いすることがあるが、それも好きになっていた。

 だから綺麗に保存する用と飼う用の少なくとも2匹はそれぞれ集めるようになった。もちろん動いてるのが美しいからという理由もある。

 20歳になるときには世界中の昆虫を覚え、新しい昆虫を発見したりした。

 気づけばかなり有名な研究者になっていた。知名度とかはどうでも良いが、研究というか好きなことに使えるお金が増えることだけは嬉しかった。

 それ以降は昆虫以外の生き物にも興味を持った。

 50歳頃にはノーベル賞とかいう大きい賞ももらった。別にどうでも良かったが、金がたくさん手に入った。でもインタビューとかで人間と関わるのは気持ち悪くて、いつも吐きそうだった。

 70歳頃引退した。家の中で飼える程度の生き物は飼っていたが。足腰が悪くなり研究できなくなった。

 


 私はずっと一人で研究をしてきた。理由は人間はクズだから、信用できないから。

 信用できない理由は先ほど述べた通りだ。

 そして人間がクズだと思う理由は、人間が地球で一番偉いと思っていることだ。

 人間は肉を食べるために生き物を殺す、魚を食べるためにも生き物を殺す、蜂蜜を食べるために蜂を利用する。子供は平気で昆虫をいじめたり、殺したりする。例えばアリの巣に水を流したり、昆虫に向かって石を投げたり。それを親は必死で止めることはない。人間にそういうことをするときは必死に止めるのに。逆に野生の熊が人を襲うとまるで悪者扱いする。

 なぜだろうか?

 人間は他の生き物を自分たちより下だと思ってるからだ。

 私はそうは思わない。全ての生き物は平等だと思う、いや人間だけは下等生物だと思う。なぜならクズだから。



 引退してからはアニメを見た。もちろん家で一人。人間とは関わりたく無かったから。

 初めの方は暇でやることがなかったからという理由だけで見たのだが、すぐにアニメにはまってしまった。

 理由はアニメの中には自分が知らない生き物がたくさん登場するから。

 だから異世界転生や転移なども知っていた。

 今私がいる床には魔法陣があった。まさにアニメのあれだ。



 私は異世界に転移した。



ーあとがきー

初めの1話だけ後書きを書かせていただきます。

この物語は10万字弱までは毎日投稿します(文庫本1冊程度?)

区切りが良いところまでは書いています。

それ以降は未定になっています。理由は代表作の「異世界でアニメキャラになりきる二度目のオタクライフ」の毎日投稿と、新作を書きたいからです。

私事ですがご了承ください。

もちろん時間ができたら続きを書く予定です。

(世界観は決まってるので続きも書きたい気持ちはあります)


ー補足ー

この物語の露光凜(生き物学者)は「異世界でアニメキャラになりきる二度目のオタクライフ」にでてくる露光凜(中学生プロ棋士)とは違います。パラレルワールド的なものと思ってもらえたら良いです。

あとタイトルが似てますが話は別なのでこちらだけ読んでもらって問題ないです。

ややこしくて申し訳ないですが、個人的に露光凜というキャラが好きなのでまた主人公にしてしまいました。

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