第5話 サイレンサー
薄暗い夕方、静まり返った教室で生徒たちは、突然の校内放送に耳を奪われた。
「全校生徒に通告する。これより、サバイバル戦を開始する。勝者はただ一人となるまで続行。規則に従い、各自指定されたエリアへ移動せよ」
最初は冗談かと思っていたが、教室のドアが自動的にロックされ、校舎の外に通じるすべての窓や扉が塞がれていることに気づいた瞬間、場の空気が一変した。腕には知らぬ間に装着されていた装置があり、青白いディスプレイにはカウントダウンが表示されていた。
「これって…どういうこと?」クラスメイトの一人が声を震わせるが、誰も答えを出せない。装置に従わないと爆発するかもしれない、という恐怖に突き動かされ、仕方なく指定されたエリアへ向かうことになる。
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最初の指定エリアは体育館だった。生徒たちは無言のまま集合し、緊張した表情で周囲を警戒する。その中で、成績優秀で冷静沈着な黒田が声を上げた。
「冷静に考えろ。どうやらこれは、誰かが意図的に仕組んだものだ。そして、生き残りをかけたルールがあるらしい。だが、俺たちはパニックになる必要はない」
だが、すぐに異変が起きた。体育館の中央に現れたのは、運動部エースで喧嘩も強いことで有名な佐藤だった。彼は拳を握りしめ、周囲を見渡しながら不敵に笑った。
「悪いが、俺は誰かが生き残るまで待つつもりはない。始めるぞ!」
佐藤は隣にいた生徒に突進し、驚きと悲鳴が体育館に響く。黒田はその混乱の中、冷静に後退し、校舎内の地形を利用して逃げ道を探していた。
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その後の数時間、校舎内は戦場と化した。生徒たちは、それぞれ道具を武器に変え、机やロッカーをバリケードにして必死に生き残ろうとした。だが、次第に友情は崩れ、仲間だったはずの生徒たちが敵と化していく。
黒田は理科室に潜み、物陰から他の生徒たちを観察し、彼らの行動パターンを冷静に分析していた。彼は無駄な戦闘を避け、機会を待つつもりだったが、背後から不意に気配を感じる。
「隠れてばかりじゃ、生き残れないぜ」
振り返ると、そこには佐藤が立っていた。黒田は静かに傘を握りしめ、慎重に間合いを詰める。特注の傘が、最後の希望かもしれない。
「勝者はただ一人だ。それがこのゲームのルールらしいが…その座にお前がふさわしいとは思えない」
互いに一歩も引かず、次の瞬間、理科室で激しい戦いが始まった。
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キーワードは「サイレンサー」
サイレンサーの意味を持つ物、静かに決着をつけるか、もしくは音を立てずに敵を倒す手段が、黒田にとって勝利の鍵となるかもしれない。
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