殺し屋 1万〜3万
鷹山トシキ
第1話 殺し屋
片桐家は名家であり、膨大な財産とともに、その影には複雑な家族の事情が渦巻いていた。長男の片桐竜太は資産家として成功を収め、片桐家の財産を堅実に守り続けてきた。一方で、次男の片桐拓也は幼い頃からその影に隠れ、父親からの期待を受けることなく育った。そのためか、拓也は闇の道に身を投じ、冷酷無比な殺し屋として名を馳せていた。
竜太は家族の名誉を重んじ、すべてを支配しようとする一方で、拓也はその支配から逃れ、自由と復讐を望んでいた。父親が亡くなり、莫大な遺産の相続が問題となると、二人の間に眠っていた確執がついに表面化する。竜太は冷静沈着に遺産を管理し、家の未来を見据えようとするが、拓也はその相続に異議を唱え、兄に対する長年の恨みを露わにする。
互いに譲歩することなく、兄弟の争いはやがて命をかけた対決に発展する。竜太は家族の絆を重んじるがゆえに、拓也の破滅的な生き方を憂いていた。しかし、拓也はそんな兄の言葉を嘲笑し、自らの力で家族の運命を変えるべく動き始める。
彼らは父親の残した豪邸で最後の対決を迎えることとなった。豪邸の薄暗い廊下を抜け、広間で睨み合う二人。竜太は周到に計画された罠と財力を駆使し、兄としての責務を果たそうとする。しかし、拓也もまた殺し屋として培った鋭い戦闘技術と冷酷さで応戦し、兄の計略に一切の容赦をしなかった。
壮絶な戦いの末、どちらが勝者となるのか、そして片桐家の未来はどうなるのか――それはまだ、誰にも分からないままだった。兄弟の対立は、名誉と復讐、そして家族の絆を巡る壮大なドラマを織りなしていた。
小さな洋館の一室で、資産家・片桐が倒れていた。ドアも窓も内側から鍵がかかっており、誰も出入りできないはずだった。唯一の手がかりは、彼の指先に残された「E」の血文字。
警察は不審に思い、片桐の息子、健一を取り調べる。彼は父と確執があり、犯行を疑われた。しかし、健一にはアリバイがある。
捜査が行き詰まる中、探偵の黒田が密室の謎を解き明かす。「これは外から紐を通し、鍵を操作したトリックです。そして、"E"は犯人の名前のイニシャルではなく、"EXIT"のヒントだったのです」。
真犯人は執事の江口。彼は財産を手に入れるために密室を偽装していたのだった。
江口が逮捕された数日後、洋館に再び不穏な影が差し込んだ。片桐家の相続手続きを行う弁護士が、館の玄関に封筒を置いていったのだが、その封筒には「見た者には死の報酬を」という不気味なメッセージとともに、片桐の遺産に関する極秘情報が書かれていた。
黒田がその内容に気づいたとき、背後から冷たい気配を感じた。振り返ると、全身黒ずくめの男が立っていた。彼は無表情で、「遺産を狙う者を始末するよう依頼された」と告げると、銃口を向けた。黒田は冷静に身をかわしつつ、相手の素性を見抜こうと考えた。
「依頼主は誰だ?」
男は微笑むと、「依頼人の名は…片桐だ」と不気味に囁いた。その瞬間、黒田は気づく。これは片桐が仕組んだ遺言の一部かもしれない――一族を巻き込み、誰が本当に信頼できるのかを試す、最後の試練だったのだ。
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