15 本気の告白に向けて(アシュリー視点)
第21話
「……あのさ、アシュリー」
「ふぁい?」
「城下町の見回り終わってから、なんでそんなにしまりのない顔? エマがらみでいいことあったにしても、だいぶ顔のパーツが溶けてる」
「仕方ないでしょー? ちっちゃく手を振り返してくれたエマちゃんが可愛くて、思い出すとにやけちゃうんだもん」
「だもんって言われても……。とりあえず、今度こそ進展したって僕は思っていいの?」
「進展っていうか……ちょっとだけ、エマちゃんの感情が動いてる気がしてんのよ。そこへ強引に突っ込むつもりはなくても、俺って男を披露するチャンス到来はしたのかなって」
差し入れとお礼の交換や、今日の出来事をアレクに軽く説明して、今夜についても打ち明ける。
「改めて、本気の告白するよ。すっごいベタで、花束なんて買っちゃった。エマちゃんのイメージは変わらず野花でも、こういう時ぐらいね。あと、渡し損ねたオルゴールも。ベタだよねー」
「相手はエマだ。回りくどいより、きっといい。……伝わるといいね、今度こそ君の本気が。頑張って」
「頑張るけど、すっごい緊張もしてんのっ。なんて言っていいのか絶賛迷い中!」
「ごめん。それは僕にもアドバイス出来ない……」
「うん、知ってる。逆の立場なら、俺もアドバイス出来ない。こればっかりは、自分で決めなきゃね」
「アシュリーはかっこいいね。エマも、君のそういう部分に気づいてくれたのかもよ?」
「俺、駄目なとこばっか見せてるのになぁ」
「じゃあ、駄目な男が好きなのかも」
「おーいっ」
「あははっ、ごめんごめん。でも、だったら今日はもういいよ。自分の部屋で、今夜のための準備しておいで」
「いや、さすがにそれはね。仕事と
「……そうだったね、ごめん」
「気持ちは嬉しいよー。ぅんでもそういうわけなので、はい! お前も仕事頑張って! 今日は全体的に、いつもより巻きで行くよ巻きで!」
「ええっ!? なんで僕まで!?」
「俺ひとりが先にあがったら、お前もここぞとばかりにひとりで出歩いちゃうからでしょうが!」
「うわぁ……
なんて言いつつも、俺を応援したいからとアレクは本当に仕事を頑張ってくれて。おかげで、いつもより早く秘密基地へたどり着けていた。
まずは紙袋と、水に差している小さな花束を部屋の隅にある木箱へ隠す。
「はー……緊張するっ」
心臓の上に手を当てれば、ドッドッドッと、全速力した後みたいな音を立てていた。
告白される経験は、何度もある。
そっちの受け答えは慣れたもんでも、こんなの初めてなんだ。
(大丈夫。手順はいたって簡単。花束を差し出して、エマちゃんが好きです、俺の伴侶になってくださいって言えばいいだけで……)
君が花束を受け取ってくれれば、俺はきっと感極まって泣いちゃうな。
フラれても泣くけど、それは考えないようにしたかった。今だけは、期待と希望で心を満たしたかった。
「伴侶になる約束を交わせたら、君とデートしたいなぁ。馬で遠乗りとか、
お互いの休みが合えば、一日中ベッドでいちゃいちゃしたいなーとか。
お腹が空いたらご飯を食べて、繋がりたいと君が望めば、俺はいくらでも頑張るし。キスだけがいいって言うなら、ずーっと何度でもキスを贈るよ。
ベッドの上で、チェスとかしてもいいな。負けたほうが言うことを聞くって賭けたら、君は何を願うだろう。
(なんでもいいよ。俺、君の願いならなんでも叶えてあげる)
そうして一生、君を守るから。どうかお願い、俺のことも守ってよ。
俺の伴侶であり、俺だけの特別になって。俺も、君だけの特別になるからさ。
(ま、そこはもうとっくに誓いを立ててるか)
国のため、アレクのため、民のため俺は強くなると決めた。
君という存在も現れて、俺はもっと強くなりたいと望んだ。
剣を取り、一振り一振りを今まで以上真剣に振るほどに。
(……来た)
今夜は気配を消してないおかげで、すぐに気づく。
緊張もここに極まれり、だ。
その緊張も斬る気持ちで剣を振る音に合わせ、コンコン、木戸が叩かれた――。
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