第17編 青空だとテンションが上がる

1 雨の中


雨粒の悲鳴が耳を埋めていく。傘の下出るに出られず立ち往生。



2 末端冷え


歩くたび、雨が染みるつま先の、変わる色味、色褪せて。凍える指が気の毒で。



3 叫ぶ前


ヒーターに当てる素足、開く指。火傷する熱さが今は心地よく。しばしの快楽身を委ね。



4 冬のアイス


冷えたアイスに突き立てる銀の剣の勇ましさ。世界を救う切っ先に舌の鼓高らかと。



5 ゴロゴロ


机に広げた参考書、今日の分はとめくりゆき。横から飛び乗るモフモフが邪魔だと蹴飛ばす誘惑に。



6 寝落ち


火照る体に迫る魔の、うつらうつらと鈍る思考。閉じた両眼を見開くと流れる長針2メモリ。



7 不条理


落ちる先、闇深すぎて光あり。流れるままに風感じ。落ちた先に空広く。



8 寝起き


甲高いアラーム頭をつらゆいて。澱む心に鞭打つと、重苦しくも一日が音を立てて揺らぎだす。



9 とりあえず一杯


白湯気の香り溢れるコーヒーが舌に与える火傷の恐怖。苦みが体を揺さぶると瞼のつかえが消し飛んで。



10 青空だとテンションが上がる


憂鬱な気分で玄関開けたなら、目にするのは快晴で。瞳が旅する空の旅行。雲の合間をすり抜けて、縦横無尽のマニューバ。

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