第16編 星座占い

1 消えた秋


喉通る、からから空気に縮こまり吐き出る小声で問いかける。「秋はどこに行きました?」



2 意味なし


健康を気にして階段足を向け、上がる呼吸と体温と流れる汗の不快さを、おかずに啜る替え玉よ。



3 角砂糖


固めた砂糖を銃に込めて撃ちだせば、煌めく粒子を蒔きながら広がる夜空の星のよう。



4 再開


歩くことを止めたなら、二度と追えない背中あり。一歩踏み出す覚悟とは延々伸ばす手の痛み。



5 星座占い


星座の宿命上から順、見ていくうちに決まる予定。運気はジェットコースター、上がって下がってトルネード。



6 徹夜


朝日浴び、くらくらする目を一擦り。爽快感はないけれど清々し事この上なし。



7 帰郷


墓石に水をかけた記憶の日々。顔も知らない人たちの姿は浮かばず手を合わせ。父母の笑顔を前にしてかける言葉は、ただいま、と。



8 寄席


噺家の言葉の水流激しくて、人波の波乗り出遅れ呆然と、目にする惨めさ噛み締めて。たまにできる小ウェーブ、乗って見せてご覧あれ。



9 柿食えば


柿抱え夕暮れ時に頬張れど、鐘は鳴らず過ぎ去って。カラスが3羽飛び囲い吐き出す声は嘲りに。



10 歌手


歌歌い、喉が痛みに震えると湧き出てくるのは劣等感。焼き付いた上の背中は遠すぎて息も吐けずに追い求め。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る