詠集 「水飴の河の流れに溺れて」

劇団騎士道主催

第1編 綿菓子

1 秘密結社


記憶の底で埃をかぶる、合言葉を呼び戻し、唱えて開ける錆びた柵。転がる椅子と一脚立てて脳裏に浮かぶ「座ブーメラン!」



2 ボイスレコーダー


埃をかぶったレコーダー、興味本位で聞いてみる。カビの生えたアニメの曲に懐かしみ、割って入るご飯の声。振り向いたその先に青い雲が光ってる。



3 伊豆の踊子


読んでないけど説明する。傷心旅行の行先に伊豆を選んだ3回生。夜はうたかた、幻想境界。永遠地獄の迷宮へニヤリと誘うパフォーマー。



4 思い出


何年か振りにやってきた夏の避暑地は様変わり。記憶に中にあるものはどこかが変わってなくなって。だけれど厚手のジャンバーがバッグの中から顔を出す。。



5 風邪を引く


熱とだるさに耐えきれず、氷の水風呂恋焦がれ。ハグする相手はスノーマン。心地の良さに油断して、消える私の恋心。



6 綿菓子


甘ったるい味に飽きた綿半分。分かっていたけどつい頼む。差し出す先は夜の闇、今更気づいた日没に糸引くザラメのほろ苦さ。



7 猫である吾輩


猫である吾輩はお気に入りの場所で寝る。猫である吾輩は餌のありかを知っている。猫である吾輩はこの子の未来を見られない。



8 金魚


鉢の中、泳ぐ金魚をひとつかみ。両手のひらで転がすと白く柔らか珠となり、指で引っ張り練りまわし、透き通った飴の幕。



9 瓦割り


重ねた瓦を叩き割る。飛び散る破片が目にしたものはパンチングマシンの光り輝く笑い顔。ものに意味などありはしない。自分の意味を抱くだけだ。



10 カリュパノス


カリュパノス、レノ、アディグブラル、カリュパパノパラス。ジグ、カリュパノス、ロロリリンデイ、モリキダール、カカルプウノプ、カリュパノス。

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