私が悪役令嬢!?~その道極めてやります~

黒兎ありす

第1話 私が悪役令嬢!?

 16年前パプリコット侯爵家の長子としてメリアは生まれた。

 3年後に弟のロデアーノが生まれ、両親の寵愛がそちらに向かおうともメリアはそこそこ満足していた。

 なぜ『そこそこ』かと尋ねられれば、①お嬢様は贅沢し放題、②金髪碧眼の西洋美人で可愛がられる(両親以外)、③何はともあれ異世界ライフ、と苦労続きでバットエンドだった前世の記憶が影響してるとしか言いようがない。


 超がつくほどのブラック企業で、過労死寸前まで馬車馬の如く働かされた末の死を経験した身でなら、異世界でお嬢様に生まれ変われただけでめっけものだと思っていたのだ…そう12歳の誕生日までは。


 ことの起こりは12歳の誕生日、その日は特別な誕生日になるはずだった。

 その年は『婚約発表会』が同時開催される手筈になっていたからだ。

 初カレが成人後だった前世からすれば、異世界常識、婚約早過ぎない?と思っていたが、何と何と10歳オーバーでは遅いくらいだそう。

 ならば受け入れよう婚約!と意気込んでいたわけだが…、相手は王族で王位継承第2位と知ってからは、何かイヤーな予感はしていたのだ。

 美人侯爵令嬢で王子様と婚約…チートすぎやしないかと。


 そう、それは突然降りかかった。

 メリアが緊張を紛らわそうと御手洗…メイクルームへ向かったところ、先客に気づいた。

 この世界特有な天然ピンク髪の同じ年頃の少女が、メイク用の椅子に座っていた。

「モブだし、関係ないっちゃ関係ないにしても、これが断罪の始まりって考えたら憂鬱よねー」

 独り言にしても、やけにハッキリ耳に届いたに思考回路が一時ショート寸前。


「え、断罪って!?何いわゆるゲーム世界転生とかラノベ世界転生とか!?」

 これまた大きな呟きに、パッとピンク髪少女が振り向く。

「キャー!!やだ!悪役令嬢が転生者パターン!?」

 悲鳴より何より少女の発する全ての言葉に頭がクラクラした。

「待って、待って、悪役令嬢って私か!」


 それはね、家名を知った時も多少違和感ありましたよ…、なんだかお菓子にありそうな家名だなぁーって。

 でも西洋っぽく、なかなかにリアリティある世界に馴染んでからは、それなりに平和だったわけで…。

「それがよりにもよって悪役令嬢って、聞かなくとも分かる!それ断罪ルート行き確定ね」

「やだぁ!面白いんですけど」

 キャピキャピしたピンク髪…名前はミラ・パルモ伯爵令嬢は自身を『完全なるモブ』と紹介した。


 ミラ曰く、この世界は『ブルーボン王立学園物語』というゲームの舞台らしい。

 主人公は平民出身で聖魔法(まれ)持ちで、本来貴族しか入れない王立学園に特待生として入学してくるらしい。

 そこで出会うは、ブルーボン王国の第二王子アレクシス、王道王子様キャラを筆頭に以下騎士やら魔術師やらが名を連ね(忘)、中には教員まで…ほんと王道かよ!な攻略対象者たち。

 そしてそして、アレクシス王子の婚約者にして主人公の邪魔をする最大の敵、悪役令嬢…が私らしい。

 攻略対象者によってライバルキャラは異なるが、その誰もにひっついてくるのがメリルと?

「それでね。かならずメリル…様は断罪されるんですよ!」

 取ってつけたような敬称なんてどうでもいい。

「断罪ルートってアレ?国外追放、修道院行き、とか?」

 真面目な顔をしたメリルに対して、ミラはとにかく同郷転生者ハイなのか満面の笑みだ。

「それは王子以外のルートね。王子ルートの断罪は

「ど、どれい…ってマジ!」

 令嬢らしからぬ、口の悪さが露見したのにも気にならないくらいの衝撃だった。

「あと何気に落ちるが違う意味合いに聞こえたんだけども…」

 え、テヘ!(舌出し)じゃないわ!!

「もしかして、このゲームは年齢制限アリ?」

 ゴクリと喉がなるのは恐怖からで、期待はしてない全く。

「アハ、それなら私出来なかったわー」

 分かりにくい発言にイライラしながら詳しい説明を求めると、高校生だったミラ(前世)がプレイしていたので全年齢対象オールクリアに結果胸を撫で下ろした。

 良かった奴隷堕ちで無理やりルートとか、誕生日にどんな未来カミングアウトかよ!と卒倒する展開にならなくて。

「とはいえ結末最悪が奴隷、軽くて修道院ルート?」

 それってお金持ちお嬢様暮らしの終焉を意味するではないか!

「無理無理、そもそも王子と婚約じたいが違和感ありまくりなのに…断罪とか冗談じゃないわよ」

プラスかと思っていた結婚が実はマイナスでした、とかシャレにならないから!

気持ちとしては全力疾走したかったけれど、そこは生まれた時から貴族令嬢、可憐にスタスタ早歩きが精一杯。

「あ、ねぇ…ちょっ」

ミラの声もドップラー効果で消えていく。





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