第2章閑話「ペルシダ達の戦い」
プーバはビルの中を駆け走る。
他にも騎士や闘士がプーバに続きビルの中を駆け回る。
反対側のビルにもそうだ。
机や崩れた天井のがれきをかわして、あらかじめ空いている窓に飛び込み次のビルへと飛び移り、出来るだけ相手に気づかれずに近づく。
プーバが与えられた命令はとにかく敵を倒すことだ。
だが魔力を出して本気で戦うことは出来ない。
なので奇襲を挟んで相手の戦闘態勢がまだ固まっているところを叩かなければ数を減らせない。
ここだとガラスを突き破って敵を前に立った。
空気を感じる。
戦場の空気だ。そう本能で感じた。
でもその臭いは嗅ぎなれた臭いとは違う。
燃料と火薬の臭いだ。
この世界に来て、それが血と焼けた肉に加わり地獄の光景に移り変わる。
プーバは手に力を込めて地面をぶん殴った。
地面は割れ大きな穴が出来る。
その衝撃で人は吹き飛ばされ後から続く闘士が電気信号魔法で気絶させた。
とにかく敵を吹き飛ばす。
プーパは身体魔力を練って、腕を二本作り、そのまま加速した。
敵に向かって走り、敵の間をすり抜け、身体魔力で作った腕が相手を殴り、倒していく。
相手の体が動かなくなれば仲間達が電気信号魔法で気絶させることが出来る。
他の人も上々だ。
敵を電気信号魔法で気絶させている。
剣を振り、まだ状況を呑み込めていない人を一掃する。
プーパは走り続けた。
とにかく前へ、前へ。
奇襲が決まったが当然ながら敵はまだまだ数が多い。
特に魔石を持ったこちら側の人間を倒せていない。
速く魔石を持った人物を無力化しなければ。そう思った矢先、直ぐにそれは現れた。
王級光魔法、光の球が道路を削りながら味方ごと全てを呑み込もうとしている。
「めんどくせえな!!」
プーパはその光の球の前に立った。
魔法は仮物だ。
魔法で作られた物は全て不安定で崩れ去りやすく、魔力を維持、そして形を保たなければそれは消え去る。
特に光魔法など大きな魔力を使う魔法ほど維持が難しく直ぐに霧散する。
なら内部に魔力を加えれば、形を作ることも阻害できる。
武器を持った人間では無理だ。
常に体を武器とし、体を見つめ続けた闘士だからこそなせる技。
プーパは全身に、そして手に多く身体魔力を流す。
そして光の球に拳をふるった。
光の球はプーパの拳によって穴が空き、そして空中に霧散された。
この技は防御魔法よりも魔力を消費せずに済む。
そして何より更に魔力を加えれば。
魔術師はその衝撃で後ろに飛び、奥にいる仲間を引き込みながら遠くに飛ばされた。
そのまま攻撃に転じることが出来るのだ。
残った相手はプーバを見て、戦闘態勢に入った。
全身を防御魔法で固め、そして接近して剣を振る。
「歯の二本、三本我慢しろよ!!」
プーバは身体の魔力を全て腕に集中させる。
そして次々と無力化していった。
そのエリアの戦場はプーバによって支配されていく。
力による圧倒。身体魔力によって人の力は上げられ、反射神経は良くなっていく。
王級闘士。その肩書にふさわしくプーバは出てきた相手をそく無力化していった。
そのプーバを狙うかのように突然地響きがした。
ロボットだ。
ロボットが目の前に三体現れた。
問題はロボットだ。目の前に現れるロボット。
ロボットを倒すほどの魔力を使うことは出来ない。
そもそも本気を出したところでロボットの方が総魔力量は多い。
本気でやれば倒せるだろうが、そんなことに魔力は使えない。
この後の戦いのためにロボットは戦わない方がいい。
プーバは魔法使いや騎士と戦う方が得意だ。
だから味方がいる。
ロボットが迫ってきた。
おそらく魔力の高いプーバを捕まえるためだろう。
だがプーパの体に触れることが出来なかった。
大きな音が鳴る。
そこには宙に浮いたペルシダがいた。
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ペルシダは足に確かな手ごたえを感じた。
ロボットが分解される。
手を斜めに向けて上昇かつ体を制止させた。
そして次の場所に移動する。
ペルシダはその操作に未だ慣れていない。
あまりにも急すぎた。二週間でここまで動かせた自分をほめたいところだ。
ジェットスーツ。
ペルシダは宙に動いていた。それだけではない。飛んでいるのだ。あんなに高かったロボットが、ビルが今は同じ高さにペルシダはいるのだ。
魔法がなくともこんな空を飛べるとは夢にも思わなかった。
ペルシダ自身そこまで魔力が多い方でもない。だからこそこうやって空を飛びことに少しばかり目を輝かせるものが有る。
移動の手段が乏しいペルシダのために大翔が作ってくれたのだ。
だが制御が難しい。
意識して、頭の中で使い方を確認していないと直ぐに制御が出来なくなってしまう。
気を付けること、意識すること。
ペルシダは大翔との会話を思い出した。
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「まじか……」
「上手くいけたね」
そういって流河が驚いた顔でペルシダ下から見ている。
対照的にペルシダというよりこのジェットスーツなのだろう。
ペルシダは浮いていた。
どんどん流河と大翔の距離が遠くなっていく。
「兄貴もやってみる?」
「やりたいけど、確かにやりたいけどさぁ……!! もうちょっと魔法に対するロマンってもんがさぁ!!」
「魔法検知が出来ないし。魔力を使わなくていいし。何より機動性が上がってペルシダさんの生存率を上げれると思うけど」
「何にも言えねえ!!」
そう二人の声が気になったせいで気が散ってしまい制御が難しくなった。
思わずペルシダはスイッチをオフにする。
体が地面に落ちていく。
ペルシダははねた。
下に何か跳ねるものがある。トランポリンというらしい。
下に力を入れると跳ねるのだ。
何回もはねてペルシダが下に着地する。
最初空を飛ぶのでと言われたときは全く意味が分からなかったが、それは分からないはずだ。
人間が魔法を使わずとも空を飛ぶということを。
「制御が難しいだけど、どうしたらいいの?」
「意識するのは両腕と背中から出る風力を三点で当てること。それで体の向きやスラスターを加速しすぎた時はその方向に腕を向けてください。大事なのは地面や壁にぶつからないように常に体を宙に浮いておくこととその方向に背中のスラスターを向けておくことですかね」
そういわれ、再び練習する。
縦だけではなくビルを使ったり、高度を変えてサンジゲン的な動きを練習する。
「すごいわね」
「持続時間は10分です。あらかじめ本体と燃料は何個か設置しているのでそれとどうしようもなくなったら防御魔法を使うことです。生身の状態なら確実に壁のシミになるので」
「確かにこれを使うなら必須だな」
確かに少し制御がずれてしまえば地面やビルに体を突っ込んでいきそうだ。
元々山間部での救助や相手の船に乗り込むぐらいで両手を下にするだけでいいという。
それは姿勢制御もあまり必要とせず、ほとんどが1次元で済むだろう。
またあまり高さを必要としていないからだ。
魔法もない世界ではそれ以外の使い道はないだろう。
だが防御魔法や回復魔法がある世界、特に相手がロボットという場面では、立体移動はかなりの有効手段だ。
「兄貴もやってみる。いろんな人の意見があるし」
「お前さっき壁のシミになるかもって言ってたのにやるわけねえ……」
「へえ、ペルシダさんがぺしゃんこになっても知らないよ」
「…分かったよ!!」
という言い合いがあった後、流河が制御できなくて半泣きなった所は思い出さなくていいだろう。
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再びビルの中に入り、ペルシダは場所を移動する。
どろーんがロボットを攻撃してくれる。
ミサイルによって視界は閉ざされ、ペルシダの位置はばれなくなる。
ペルシダの役割はロボットの破壊だ。
そのための技も教えてくれた。
ペルシダはプーバに言われたことを思い出す。
「身体強化魔法は三つ技がある」
「三つもあるんですか?」
「ああそうだ。二つは無意識にやっている威力の増加と速度の増加だ」
「だがこれらは調整できる方がいい。腕だけでなく、足や体に力を入れれば更に強い力を出すことが出来る」
ペルシダはそしてもう一つ気を付けないといけないのは物理攻撃だ。
車花と大翔に色々調べてもらって分かったことがある。
ペルシダの異能は、魔法の効果を打ち消すことが出来る。
だが身体強化魔法や魔法で加工された物質には効果をなくすのだ。
例えば氷魔法の氷は打ち消すことが出来るが、火魔法で空気中の水蒸気を凍らし氷の粒手になると、その礫をなくすことは出来ない。
大翔の異能で発した熱探知に反応しないが、サーモルライトというものには反応するという。
おそらく異能は精神魔力に反応するのではないかと結論付けられた。
相手はショットガンをペルシダに銃を向けた。
ミサイルをばらまき、機関銃で中々近づけない。
このままでは倒せない。
今までのペルシダならそう思っていただろう。
地面に魔力を刺してペルシダは減速する。
ペルシダは地面を蹴ると同時にジェットスーツを使う。
ペルシダは宙がえりの状態で後ろに下がり、ビルに手足を付けた。
そして腕に魔力を、ジェットスーツの出力も最大にして加速する。
ロボットは後ろに下がろうとしたが、距離は縮んだ。
相手は銃を撃ってきたが、ペルシダの加速力に勝てない。
そしてペルシダは身体魔力を腕に込めた。
身体魔力はまっすぐロボットに向かってロボットに触れる。
そしてロボットは崩れていった。
異能が身体魔力に付与することは分かっていた。
これなら遠距離でも相手を無力化出来る。
「大丈夫ですか?」
「ああ」
プーバはそうやってペルシダの頭を撫でてくれた。
「良くやってくれたな。助かったよ」
そうプーバは労ってくれた。
ペルシダは認めてくれたことに思わず戦場で笑顔になった。
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