『ブキミッシュ』 中2の1


 ビョータンの前に立ちはだかることのできるものは、存在しない。


 だから、ビョータンは、易々と地球総統の前に現れた。


 『狼藉ものお〰️〰️💨』


 ダークグレーの警護の皆さんが、総統の前に固まったのだが、みな、バタッと一度に倒れてしまったのである。


 地球総統は、地球人類である。


 そのほうが、地球人がまとまるし、ダレ・モン・ソーダ星人が頭から出て行くより、なにかと都合がよい。


 また、地球人類は、やたら、権力が好きである。


 うしろで操ったほうが、より楽なわけよ。


 しかし、そこは、総統と言われるだけの人であるから、肝は座っていた。


 『あなたは、どなたかな?』


 と、総統は事も無げに言った。


 『わたしは、旅をする隠居です。世間では、ビョータンと呼ばれます。本名は、スレテ・トアリスと申します。宇宙の平和をひとり希求するものです。現在地球は、ダレ・モン・ソーダ星人と、オオ・ムカムカ星人に取り囲まれております。どちらも、地球を援護すると言いながら、実は、食い物にする悪辣な連中です。彼らが語る真実は、ほとんどフィクションです。たしかに、力はあるが、そこに真実はあまりないわけ。ダレ・モン・ソーダ星人の母星は、滅んではいないし、あなた方を地球から脱出させる気などない。また、オオ・ムカムカ星人のことは、すでに、ご承知か?』


 『ああ。地球近傍に、別の種族が集まっていることは、ダレ・モン・ソーダ星人さんから聞きました。また、わたしは、地球から脱出するつもりなどないです。』


 総統の現在の腹心は、ダレ・モン・ソーダ星人の優れた武士で、また、狡猾な科学者でもある、スリ・ポッ・クルである。スリ・ポッ・クルは、普段は人間の姿をしていて、つねに総統の脇に控えていた。


 しかし、いまは、その姿が見えていない。この会見では、表に出るのを、控えているのだろう。


 スリ・ポッ・クルは、しかし、一筋縄では行かないくせ者である。


 しかしながら、なんと、ビョータンの古い古い弟子でもあったのだ。


 つまり、スリ・ポッ・クルは、ダレ・モン・ソーダ星人であるまえに、マッシュ・マーローの騎士だったのである!


 マッシュ・マーローは、ビョータンの先祖にあたる、偉大な伝説の騎士長だった。


 すでに、冥界に入っているが、ときたま勝手な時に、突然に姿を現すとも言われている。その時は、宇宙の歴史の曲がり角になる時だとされている。


 ビョータンは、マッシュ・マーローの再来とも言われるほどの、傑物であった。


 しかし、総統は、ビョータンを知ってか知らずか、まるで、たじろがない。


 『旅の老人よ、地球人類は、おろかな戦争ばかりしてきた。人類の本質は、殺し会うことに他ならない。その根拠は、自己保身以外にはなにもない。それは、おそらくは、原子核が持つ構造に由来する。しかし、あなたは、知っているのですか? 宇宙のよっつの力すべてを体現する存在を?』


 『ああ。それなら、知っておりますぞ。』


 『ダレ・モン・ソーダ星人は、それを教えようというのです。それがわかれば、永久平和も夢ではない。』


 『なに? なるほど。なるほど。まあ、狡猾な詐欺ですな。そこの、にゃんこさん。そんな姿で盗み聞きか? おろかな弟子よ。』


 にゃんこさんは、スリ・ポッ・クルに変身した。

 

『さすがですな。あなたは、騙せないか。』



      🐹









 

 


 

 

 

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