タイムカプセルにカギをかけた。
すごろくひろ
タイムカプセルにカギをかけた。
大学二年生の
でも、そんな部分がいいところだという友人もいる。同じ委員会のメンバー間でギクシャクしていた時期があったらしいが、あまりにも無頓着のまま、メンバーと関わって仕事していたため、次第に湊がいるから仕方ないと団結してきたという話を卒業後に聞いた。ともあれ、湊はヒトとの関わりにあまり運が恵まれなかった。しかし、そんな中でも仲良くしていた友人がいる。それには幾分か助けられながら、生きてこられた。
そんなある日の昼下がり、ポツポツと雨が降り始めているのに、湊はきづいた。
「あっ、洗濯……」
そういって湊は、居間に降りていき、庭から洗濯物を取り込み、洗濯籠へ放り込んでんでいく。そして、最後の一枚を
そんな友人の一人から電話があった。
『かわちゃん、大丈夫かい? 』
「たいちゃん、どうした? 」
幼馴染の
「なんか、あることないこと書いてあって、それが拡散されてて……。でも、かわちゃんが知らないままなのもって思うと……。ごめん」
「……うん、わかった。教えてくれてありがとう」
湊は落ち着かせながら、太一に答えた。
『かわちゃんの秘密も、暴露されてるみたいだし……』
「ひいた? 」
湊は、太一に尋ねる。数秒の沈黙が流れた。
『……僕は、かわちゃんの見方だから』
太一は続けてこう言った。
『これ、警察に通報した方がいいんじゃないか? これはあまりにもひどすぎるよ』
「大丈夫、いざとなったら削除依頼やら開示請求なりすればいいし。もう犯人はわかってるから」
太一は少し不満げだったが、わかった。と言って電話を切ろうとした。
『でも、無理はしないでね。君は、容赦なく追い詰めるのが得意なんだから』
「わかってるよ。」
電話は切れた。雨は強くなった。
*
「湊、明日のタイムカプセル預かってるわよ」
母親が、部屋の前に段ボール箱を一箱持ってきた。どうやら、少し前の小学校の工事の時に、たまたま母親が引き取って預かっていたらしい。ちなみに、明日は小学校の同窓会があって、タイムカプセルを開く予定なのだ。
湊は、母親からその箱を受け取り、中を覗いてみた。二十歳になったときに開ける。ガチャポンのカプセルが多くあり、 偶然開いていたタイムカプセルがあった。湊はその持ち主の名前を見つめる。
「結局、君は敵だったんだな」
彼しか知らないはずの秘密が、口外されてはならない自分の秘密が書かれていたブログ。なぜ彼がそんなことをしたのか、どうせ逆恨みか嫉妬か、歪んだ正義をひけらかして、自分を正当化させたかったのだろうと思うが、動機なんて湊にとってはどうでもよかった。
「さよなら」
そう言って、湊は彼の手紙に千枚通しで、力ずくで貫通させる。
「痛っ……」
先端が人差し指の腹に刺さった。血で滲んでしまったが、そのまま釘を一本突き刺して、それをこっそり彼のカプセルをしまった。そして、ベッドに入った。
*
次の日、起きると朝から家の中が慌ただしかった。チャットの通知や電話の着信もかなり多かった。
「湊、落ち着いて聞いて……」
母親が血眼になって、湊の肩をおさえる。彼のスマホの通知も鳴りやまなかった。
『昨夜十時頃、○○市の住宅で強盗殺人がありました。被害者は――』
このニュースで、緋炉が強盗に刺され、ダメ押しで猟銃で撃たれて亡くなったと知った。
湊は部屋に戻りタイムカプセルを開くと、緋炉の手紙を確認した。釘で貫通された手紙は一面血で濡れていた。しかし湊は不思議と何も感じなかった。心が軽くなった気がした。そして何を思い立ったか、スマホの連絡先から木次緋炉を消した。そして彼の手紙は釘を刺したまま、カギをかけて、タイムカプセルごと燃えるゴミとして集積場へ持っていった。
「あとは、これだな」
そして、近所のポストに郵便を一通出した。
「二度と戻ってきませんように……」
タイムカプセルにカギをかけた。 すごろくひろ @sugoroku_hiro
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