第23話 烏丸鏡花

 私は生まれながらに何でも出来た。勉強も運動もピアノもデッサンも書道もダンスも習い事は何でも出来た。


 けどねー、全部つまらなかった。私には一つの物事にかける情熱?ていうのが生まれながらに無かったんだ〜。


 全部出来ると言っても、私より勉強が上手い人もいるし運動が上手い人もいる。ピアノやデッサン全てに対している。


 けど別に一番になりたいわけじゃないんだ〜、ただ純粋に楽しみたいだけ。両親からは続けていけば楽しいと思う日が来ると言われてたけど。さっきの習い事全部1年間続けても分からなかった。


 中学校の頃には私がおかしいんだって事に気付いて、自分の人生に絶望してた。楽しいと感じられない人生に何の意味があるのか分からないから。


 けどね転機が訪れたんだ。私、中学校でイジメられたの。理由はとある女子の好きな人が私を好きになったっていう大したことない理由。


 学校で初めて無視され、殴られ、水をかけられ、髪を引っ張られた。それで


 ――初めて生を実感出来たんだ〜。


 初めはイジメられることが好きだと思ったけど違った。イジメられることには段々と飽きてきたからだ。それで分かった。私はただ刺激やスリルが大好きなんだと。


 そっから先は色々試した。私をイジメいた人達の秘密をそれぞれ暴露して人間関係壊したり、受験間際でイジメの証拠と共に訴えたり、浮気男を修羅場に落としたり、色々した。


 他人の人生を操る征服感、一歩間違えば転落するスリル、アハハハッ自分でもどうかしてると思うくらい独裁者向きな性格だよね!


 でもこれでいいの。じゃないと私は生を実感出来ないから。



 ◆



 私は振った男、天城龍征を見る。その表情は強張っている。


 ※叱るため頑張って怒った顔にしてる。


 アハハッ、怒ってる怒ってる。けど優しいね、怒りに身を任せて行動しないなんて。でもそれはやっぱつまんない。


「私がどうして龍征と付き合ったと思う?」


「俺に惚れ」


「周りからの評価が最悪だからだよ」


「………」


「そんな人と付き合ったらどうなるんだろ。って期待してたんだけどな。蓋を開けてみれば全てにおいて普通、周りからの評価なんて嘘っぱちのただの普通の良い人だった。

 けどね、その時思ったんだ。こんな普通の良い人が信頼してる人に裏切られ、騙され、理不尽な仕打ちを受けたら、一体どうなるんだろうなって」


 貴方はずっと優しかった。この1ヶ月間、貴方は文字通り全力で私に対して尽くしてくれた。


 普通の人にとっては、きっと幸せな恋人生活を送れたと思う。


「ただそれだけの理由で貴方と付き合ったし、それだけの理由で貴方を振って学校中の悪者にした。怒った?」


 昨日まで普通の優しい人が、一体全体どんな風に変わるんだろう。周りを一切信用しなくなる?女性恐怖症に陥る?はたまた怒りによって復讐者となる?


「うん怒った😡………けど、少し一人にさせてくれ」


 彼はそう一言だけ言って、屋上から姿を消した。


「………つまんない」


 まだ実感がわいてないのかな?物理的に被害があったら変わるかも。



 ◆



 私、藤崎莉央は今までの会話を録音テープで保存した。


 私はすぐさまパソコンの方にも録音のデータを送る。そして烏丸鏡花が屋上を出るまで身を潜める。


「これで、決定的証拠は揃った」


 これをバラせば龍征の汚名は返上される。けどまだしない。


 私はブロックしていた龍征のLINEを解除して、放課後公園に呼び出す。



 ◆



 俺はいつの間にかブロックを解除されて何故か莉央に呼び出された。多分これはきっと


「告白に違いない!」


 なるほど、なるほど、俺が鏡花に振られたこのタイミング。そうとしか考えられない。


 けどすまない莉央、流石に振られたばかりだとちょっとキツい。


「というわけで復縁しなければ付き合うから1年くらい待ってくれ」


「一人で何言ってんの?」


 おっと、俺の独り言がソフィアに聞かれていたようだ。


「………一応いつも通りで安心したよ。けどあの噂はどうゆう事?」


 俺は少し考える。言い訳をしてもいいがここ、学校では話せないな。俺といるとソフィアの印象が悪くなる。

 少し好感度が下がるが、関わらせないのが無難だろう。


「後で話す」


 俺はそう一言だけ言って………全速力で走った。有無を言わさぬ最善の行動。ふふふ、誤解や勘違いなんか与えてたまるか!最高速でぶちかませ!!


「………バカ」


 マジで都合いいなこの耳





あとがき


 あああ、ニートになりたい。

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