リクの「最強」に対する思索と覚悟






オーガとの戦いを終え、リクは傷だらけの体を引きずりながら、小さな焚き火の前で静かに座っていた。炎が揺れ、赤く染まる彼の瞳には、どこか遠くを見つめるような光が宿っていた。


戦いに勝った。だが、心は晴れなかった。


(倒せた。けど、それで終わりじゃない。)


繰り返す「やり直し」の中で、リクは数え切れないほどの死と恐怖、敗北と苦痛を味わってきた。時に涙を流し、時に立ち上がれなくなりそうになりながら、それでも前へ進んできた。


最強――それは、単に誰にも負けない力のことではない。

絶望して、逃げ出したくなっても、もう一度立ち上がること。

失敗を恐れず、何度でも挑み続けること。

「やり直し」という力が与えてくれたのは、そういう“諦めない心”だった。


(俺にとっての最強は……誰かを守れる強さだ。)


初めてその言葉が、胸の奥から自然に浮かび上がってきた。


自分だけが生き延びるためではない。

誰かのために戦えること――それが、本当の強さだと思えた。


リクは拳を握った。


「この力は、過去を嘆くためにあるんじゃない。未来を掴むためにある。」


彼の中に宿った決意は、どんな死よりも、何度でも立ち上がる理由になる。

やり直しの痛みも、心を蝕む恐怖も、きっと無駄にはならない。


最強とは、己を超え続ける者のことだ。

そして、失った時間さえ背負って、誰かを救える存在のことだ。


リクは立ち上がった。焚き火が、彼の背中を照らしていた。


***


暗闇の森での苛烈な戦いは、リクにとって決して特別なことではなかった。なぜなら、彼はこの世界の常識を超えた存在――転生者だったからだ。


この世界のハンターたちは、命の危険を常に意識しながら慎重に戦っていた。一度死ねば二度と生き返ることはできないのが当たり前であり、だからこそ誰もが安全マージンを取り、確実に勝てる相手としか渡り合わなかった。無謀な挑戦は即死を意味し、多くの若き冒険者がその代償を払っていた。


しかし、リクは違った。彼に備わったスキル『やり直し』は、死を迎えるたびに時間を巻き戻し、何度でも挑戦をやり直せる。つまり、死ぬリスクを恐れる必要がないのだ。この圧倒的なアドバンテージにより、リクは安全マージンを取らず、常に格上の敵に挑むことができる。失敗しても経験は消えず、むしろ勝利へのヒントを手に入れられるため、通常のハンターたちとは異なる、独自の成長曲線を描いていた。


彼が冒険するのは、広大な大陸『エルデニア』。その地は多様な環境に彩られ、南の灼熱の砂漠地帯から北の凍てつく山岳地帯まで、多くの危険と秘宝が眠っている。エルデニアには大小さまざまな王国や自治都市が点在し、人々は日々魔物の襲撃に怯えながらも生き抜いている。強力な魔物が徘徊する森や荒野、古代の遺跡が散らばる地域は冒険者たちの腕試しの場であり、その中で名を馳せることが一流ハンターの証でもあった。


だが、命を賭して挑むのが普通の世界で、リクの存在はまさに異質。彼が歩む道は、誰も踏み込めなかった領域へと続いている。

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