受け流し人形
訓練場に並ぶ学生たちに、教官がそれぞれの模擬戦エリアへと誘導していく。リク、マリー、カインも別々のエリアで個々のスキルを試されることとなった。
リクの前には、試しの相手となる模擬戦用の木製人形が並べられていた。その人形たちはただの練習用ではなく、魔法で少しだけ反応するように設定されている。攻撃すれば反撃が来る仕組みになっており、力の加減を誤れば簡単に返り討ちに遭うという代物だ。
「リク・アスター!」と教官の声が響く。
リクは深呼吸し、周囲の視線を気にしながらも真剣な表情で前に出た。手に持つのは簡易な剣――学園支給のもので、今の彼の戦力に応じてあえて非力な武器が渡されている。初めは自分の力だけでどこまで通用するか、そこを見極められるのだ。
「まずは一撃、確実に当てることだけ考えろ」リクはそう自分に言い聞かせ、剣を構えた。木製人形がかすかな動きとともにゆっくりと接近してくる。
リクは勢いよく踏み込み、攻撃を繰り出す。――が、人形は彼の一撃を軽く受け流し、反撃の腕をリクに向けた。
「くっ!」リクはすぐに後ろへ飛びのくが、予想以上に反撃の速さが鋭く、冷や汗が背を伝う。
「さすが、訓練用でも容赦はないな…」リクは苦笑いを浮かべつつ、再び集中する。ここで挫けるわけにはいかない。彼はさらに工夫を凝らし、今度は動きに変化を加えつつ、再び木製人形に近づいていった。
次の一撃、リクは力強く踏み込み、相手の側面から切りつける。今回はうまく決まったのか、人形が少し揺れるのが見えた。
その瞬間、リクの内にわずかな手ごたえが生まれた。彼はこの手応えを信じて、集中力を高めたまま連続攻撃を加え、反撃をかわしつつ徐々に攻勢に出る。少しずつだが確実に攻撃が通っている手ごたえを感じていた。
「やるじゃないか、リク!」訓練を見守るマリーがその様子に微笑みながら小声で応援していた。
そして、やがて人形が大きくバランスを崩し、その動きが止まる。リクの最初の模擬戦は成功だった。
「よくやった、次は君の番だ!」教官の声が響く中、リクは少し肩で息をしながらも、初めての成功の達成感に浸っていた。これが、彼の新たな一歩となることを感じている。
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