仲間との別れの時

 

リクとマリーは、パーティーのキャンプに戻る途中、緊張感を抱えていた。心の中で決意したことを仲間たちにどう伝えるべきか、二人は何度も言葉を考えていた。


「この後どう言えばいいかな…?」リクはつぶやいた。



「正直に伝えればいいと思う。私たちがどうしてこうしたのか、ちゃんと理由を説明するのが大切よ。」マリーは少し不安そうに微笑み、リクを励ました。


キャンプに到着すると、仲間たちが焚き火を囲んでいた。カインがリクを見つけて笑顔を向け、「おかえり、リク!どうだった?」と尋ねる。


リクは一瞬ためらったが、心を決めて前に進み出た。「みんな、ちょっと話があるんだ。」



仲間たちの視線が集まる中、マリーはリクの隣に立ち、彼の背中を押すように手を添えた。リクは深呼吸をして続けた。「私たちは、パーティーを抜けて、一緒に行動することに決めた。」



「えっ?」仲間たちの間に驚きが広がる。カインが目を丸くして、「なんでそんなことをするんだ?」と問いかける。



「私たちは…それぞれの道を進むことにしたんだ。」リクは言葉を選びながら説明を続けた。「僕には、もっと強くなるための目標がある。だから、マリーと一緒にやっていくことにした。」



「それが理由なのか?」カインは不思議そうに尋ねた。「他に何かあったんじゃないのか?」



リクは瞬時に考えを巡らせた。やり直しのスキルのことを話すべきかどうか悩む。しかし、仲間たちにはそのことを知られたくなかった。「そういうわけじゃないけど、今はこの道が必要だと思ってるんだ。」彼は言葉を濁し、曖昧な表現を選んだ。



仲間たちの間に不安な空気が漂う。「リク、私たちもお前を支えるためにいるんだ。別に無理して離れる必要はないんじゃないか?」カインが再度問いかける。



「でも、マリーと一緒に行くことを選んだ。これからは、もっと成長したいと思っている。」リクは言い切った。



マリーはその言葉を聞き、リクの横で微笑んでいたが、仲間たちの反応が気になった。「私たちのこと、心配しないで。私たちもリクを応援してるから。」彼女は仲間たちに向かって言った。



一瞬の静寂が訪れ、仲間たちの表情がさまざまに変わる。カインが少し考え込み、「じゃあ、またいつでも戻ってきてほしい」と優しい眼差しを向けた。



「ありがとう、みんな。本当に感謝している。でも、僕はマリーと一緒に進む道を選んだんだ。」リクは仲間たちの温かさに触れ、胸が熱くなった。



カインたちも頷きながら、「また会える日を楽しみにしているからな!」と声をかけ、温かい雰囲気の中で見送られた。



リクはマリーと顔を見合わせ、二人とも同時に微笑んだ。「行こう、マリー。新しい冒険が待っている。」



「うん、一緒に行こう!」彼女は元気に答え、二人は新たな旅立ちに向けて歩き出した。



仲間たちの背中を見送りながら、リクは心に決めた。これからはマリーと共に、自分の力を試す冒険に挑むのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る