第3話 利害の一致

翌日、授業が終わって、私はやはり、いつもの帰り道を歩いていた。バリケードテープに囲われたマンションは焦げ跡だらけになっている。そんな残骸の前に、佇む1人の少女が居た。


私は特に気に留めるでもなく、その横を素通りして終わり。その筈だった。


「空間魔法・王級 "亜空間"ハイパースペース


誰かが魔法を詠唱したのが聞こえた。同時に、どこからともなく、欧米系の長身の男が姿を現す。


「…、もう、来たんだ。」


「ああ、マンション火災から多くの命を救ったんだって?野次馬が撮ってた動画を投稿したんだろうな。バッチリお前の魔法が映ったニュースが全国放送ってワケだ。」


「……。」


「そこまで頭が回らない程馬鹿じゃないだろ?何がしたかったんだ。」


「ただ、放っておけなかっただけ。」


「ハッハッハッ。病的なお人好しは父親譲って所か。まあ良い。お前も親の元へ送ってやるよ。」


「待って!この子は関係無い!今ここで戦ったら_」


「…あのなぁ、顔見られた時点でお前ら両方消す以外の選択肢はねぇんだよ。」


「…状況は良く分からないけど、あなたを倒せば良いのかな。」


「あ?テメェなめてんの_」


"白い闇"ホワイト・アウト


「ッ!?」


「簡易詠唱魔法…!? あなたは一体…」


「下がってて」


「(チッ。油断した。まさか偶々横にいたガキも魔術師だったとはな…。だが、こんな目眩しくらい_)」


「召喚獣・"アイリッシュエルク"」


「____殺しちゃっても良いから。」


「クソッ!古代種かよ…!」


氷でできたエルクの大角が男に突き刺さる直前、彼は自ら張った次元隔離の壁を解除した様だった。先程までの3人しか居ない並行世界から、私と彼女は現実世界へ戻っていた。


「…えっと、その…。」


「あなた、追われてるの?」


「う、うん…。」


「…事情は良く分からないけど、私の家に、来ない?」


「……、え?…ごめんなさい。私、行かないと…。」


「行くってどこに?当てはあるの?」


「それは…。」


「それに、私はあなたに興味がある。」


「興味?」


「昨日の魔法、凄かった。まるで、あなたの感情が直接伝わってくる様で…。こんな感覚、初めてなの。あなたの事を、もっと知りたい。」


「でも、私と一緒に居たら、きっとまた、今日みたいに迷惑をかける事になる。」


「構わない。」


「え_」


「それでも良いから、行こう。」


「え、ちょっ」


どうして彼女を家に連れ込んだのか、私にも良く分からない。ただ、何となく、彼女なら、私の胸に空いた穴を埋めてくれる。そんな気がしたから。

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