第14話 SMの男
SNSで津山武彦(S)は、根源的な悩みを告白していた。
「―相手の望まぬことを強いて、その意に反した行為を行う際に表れる、意思や身体の相克に感じるのであり、支配欲とは違うんだ。だから、相手が屈服した途端、快楽は消え、その相手には二度と興奮できない。私は他人を、使い捨てることしかできないんだ」
トロ山トロ夫(M)は、津山(S)を気の毒だと思った。自分が津山の指示通りに屈辱的な姿態を晒してあげても、津山(S)は決して満たされることはないのだということを理解したからだ。
「津山さん辛いね。僕たちには、相手を育てていく未来があるのに」
トロ山(M)は、これまでに自分が賛美し崇拝し礼賛し日参し謙り、罵られ唾棄され愚弄され打擲され踵で踏まれ、そのようする快楽に中毒した幾人もの女王様を思って快美に震えた。
「SはMだ。そしてMはSだ」
以来、津山武彦(S)の消息はSNS上から途絶えたのであった。
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