小姑

ど…どうしよ…


『巧実~?』


彼女…

え、彼女?

彼女なのかな

いやいやいや

じゃあ私は?

一緒に暮らしてる人?

でこの人が彼女?

なに?どういうこと?

そもそも私は何?



『早く開けろ〜』



しかも美人

細くて美人



「あ…あの…巧実さんは今いません…」


↑答えるな


『え、誰?』

「同居人…だと思います…」

『いいから開けてくれる?』

「はい…」


どうしよう…


決闘が始まってしまう!勝てる気がしない!


そうだ巧実さんにライン!



ピンポーーン



えぇ?!早くない?!



そっか…ここ三階だった。

階段のぼったらすぐだし、エレベーターが一階にあったら瞬間移動。



なんて言おう…

とりあえず謝る…?

だってこの人が彼女だったら、私邪魔した人だよね!

押しかけて住み着いてしかも毎晩あんなこと…!



ピンポーーン


よし…



ガチャ



「スミマセンでした!」



ドキドキドキドキドキドキ



まさか…損害賠償…?



「やだ~誰々?彼女だよね〜?」


へ?


「ちょー可愛いじゃん!

 巧実やる~うそ~若くない?

 めちゃ可愛い~

 え、てかなんで謝った〜」アハハハ


「や…」


あれ?怒ってない?

それどころかいきなりやって来た美人の彼女は


「そぉ?じゃあおっじゃま~」


ルンルンで入っていった。



え、誰?



「わ、もしかして夕飯作ってた~?」

「あ…はい…」

「わかった!野菜炒めだ!」


千切りキャベツです。


「わ~!アイロンもかけてある~

 うわ~ベランダ広くていいね~

 あ!バーベキューコンロ買ってる!

 いいな~これ欲しいな~」



ピンポーーン


え…今度は誰?!まだ来るの?!


「あ、来た来た~

 混んでなかったのかな~」

ピッ

「三階の左端よ~」



巧実さん…助けて…!



「綺麗にしてる~ありがとうね~」



ガチャ


な…仲間が来た…



「うわ~!」

「なんだ巧実はいいとこに住んでるな」

「テレビでか!」


三人も…



「「「ん?」」」



オワタ




「え、タクにぃの彼女?」




え…



「えぇ?!」



タクニイ…タクニイのニイって



兄って書きますか?




「巧実のパパでーす」



ちょ……



ヘナヘナヘナ



なんだ…家族か…



「大丈夫?」

「彼女ちゃんどうした?!」



って…


えぇぇぇ?!家族?!



「あ、ごめんね

 なんか嬉しくて~図々しくお邪魔しちゃった」

「いえ…」



「巧実の母です」



母かーーーい



彼女かと思ってしまったほど若くて美人。

パパも…や、パパまんま巧実さんじゃん

そして弟と妹?

明らかに巧実さんより若い。

というか、私より若い?



「あ…えっと、スズです」



「スズちゃん!」

「スズちゃんか~」

「これね、寿司と肉

 一緒に食べようね」

「パパ見て、巧実これ買ってるの!」

「うわ!

 俺が教えてやったのに先に買いやがって…!」

「バーベキューしようバーベキュー」

「えぇ~じゃあ回転寿司は?」

「せっかくプラレール持ってきたのにぃ」


「あ、彼女ちゃん

 この子妹の由奈でこっちは弟の拓郎」


「よ…よろしくお願いします!」

「いいのいいの敬語じゃなくて

 まだ中学生なんだから~」

「えぇ?!」

どういうこと?!


「巧実は遅いの?

 土曜だからいるかと思ったんだけど」

「そもそもタク兄が休みの日にいるわけないじゃん」

「だから連絡してからって言ったのに」

「だって既読スルーなんだもん

 東京戻ってきても全然帰ってこないし」


「先に食べちゃおう」


え、そんな

いいのかな

てか私はどうしたら…


「ママ、ちょうどキャベツ切ってあるじゃん

 バーベキュー用に」


それ千切りキャベツです。


「スズちゃん一緒にどお?」

ママさんは冷蔵庫からビールを出した。

「あ…はいいただきます」

プシュっと缶が開く。


「準備しちゃお~

 スズちゃんはバーベキュー大丈夫?」

「はい」


ベランダでは着実にバーベキューの準備が始められていた。

お気に入りのコンロの周りに、なぜかプラレールが組み立てられる。


「スズちゃんはどこの子?お勤め?」

「えっと、大学生です

 青山美芸大でピアノを」

「えーー!すごい!音楽学部?!

 うっそ、巧実なんの取り柄もないけど大丈夫?

 しかもおじさんじゃん!」

「全然そんな!」

「あ、このタマネギ使っていい?」

「はい!あ、私切り…」

無理かも

「じゃあ皮剥いてくれる?

 私おにぎり作っちゃお~焼きオニ~」

「はい」


私が想像する彼氏のお母さんって、やっぱ光輝のお母さんみたいな人かもしれない。

巧実さんの家族を想像したことはまだなかった。

だってまだ二人だけの世界だから。

正解を知ってしまった後だけど、想像してみるとホント、なんかピッタリ。

似てるかもしれない。


「ママ~、パパがちょっと来てって~」


キッチンに来た妹ちゃんと入れ替わり、「何よ~」っていいながらママさんは出て行った。



「これおにぎり作ってんの?」

「あ、はい

 焼きおにぎりにするって」

「それタク兄のエプロンじゃん…」

「いつも借りてて」

「タマネギの皮」

「え?」

「剥いたことないの?」

「あ…はいあんまり…」

「じゃあタク兄がご飯作ってるんだ

 タク兄ご飯作るの好きだしね」

「前から作ってたんだ~

 上手いからすごいなっておもっt」

「しゃもじしゃもじ…」

「あ、しゃもじはここに」


「はぁ?」


え?


「ここ、タク兄の家

 あなたの家じゃないよね」


えっと…


「はい…スミマセン…」



「ホント意味不明すぎるんだけど

 え、彼女これ?

 うちの家族みんな反対だと思うよ

 まじで美步ちゃんがよかったわ~」



ですよね


私じゃ…ダメだよね


巧実さんみたいに優しくて楽しくて素敵な人



私なんかじゃダメだよ



「な…なんかタマネギしみちゃった…

 顔洗ってきます…」



「家族団らんなんで、察してもらえますか?」



「はい…ごめんなさい…」




わかってたのにな


光輝の時にわかったことじゃん


こんなすてきな人


私じゃダメなんだって



学んでないな、私





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る