ビターなハニーミルク
yuki
ヒモ × ぼっち
1000円
「スズ、気持ちよかった?」
「あ…うん
すっごい気持ちかったよ」
美来くんはいつもそう聞いてくる。
腕枕で、抱きしめられながらキスされながら、私は感想を述べなくてはいけない。
「俺も」
「そっか、よかった」
「キスしていい?」
美来くんのキスは
ぶっちゅーーー
なんかべたべたする。
嫌なわけじゃないんだけど、手の甲で拭きたくなるの。
「もう一回したくなった」
「でもバイトが」
美来くんの右手が襲いかかる。
「気持ちいい?」
「あ…うん」
「声出していいよ」
言えない。
痛いんですけどって。
早く終わってくれないかなって、頭のどこかで考えてしまうんだけど、私は気持ちよかったあの時を思い出して、それらしい声を出す術を身につけた。
光輝としたときは、そんなこと思いもしなかった。
ただただ気持ちよくて、意図せず声は勝手に出た。
幸せだった。
だけどよく思い返したら、私と光輝は、初めてだったあの日しか遂げていなかった。
あの日のあの感覚は忘れていない。
と言うか、美来くんと付き合うようになって鮮明に思い出した。
だって美来くん
痛いんだもん。
思い出さずにいられないの。
美来くんのワンルームのアパートには、私の着替えもあるし化粧品なんかも置いてある。
ベッドのある寝室兼リビングの隣の部屋は、大小たくさんのキャンバスと油のにおい。
床の絨毯はカラフルに色が落ち、無造作に重ねられた画集や、絞り出された絵の具のチューブが散らかったアトリエ。
描きかけのキャンバスのモデルは私。
抽象的すぎてどの辺がどこなのか不明だけど、美来くんにはこう見えてるらしい。
「私バイトあるから行くね」
「うん」
大学デビューで始めた居酒屋のバイト。
昼間は学校やピアノの練習があるから、必然的にバイトは夜。
住居費や必要経費はお父さんが払ってくれるけど、流行の服や化粧品を買ったり、遊んだりするお金は自分で稼がないといけない。
居酒屋のバイトは大正解。
めちゃウマな賄いが出るから夕飯代が浮く。
準備を整え、夕方18時からのバイトに向かう私を、優しい美来くんは見送ってくれる。
狭い玄関でスニーカーを履くと、美来くんはぎゅっと抱きしめ
「スズ、好きだよ」
耳元で甘い台詞を言ってくれる。
私には美来くんしかいない。
「バイト休めないの?」
「今日は無理…人少ないんだもん」
狭い玄関でキスをして、なかなか離してくれない美来くんの手はTシャツの中に入ってくる。
何の遠慮もなくブラを押し上げ、反対の手はスキニーの中に突っ込んでくる。
「ちょっと待って」
「したい」
スキニーはグイグイ下げられ
「後ろ向いて」
「や…待って
ホントにもう時間ない」
「ちぇ…」
「ごめんね」
離してくれたから服を直し、美来くんのキスに答える。
「バイトのあとこっちに帰ってくる?」
「明日の授業の準備もあるし家に帰るね」
「そっか…」シュン…
可愛い
「あと30秒キスしよ?」
「うん」
可愛くてときめいて、大好きだなって思う。
なのに口を拭きたい私。
「じゃ、行くね」
「うん」
ドアを開け、出ようとすると
「あ、スズ」
美来くんが呼び止めた。
「1000円は?
ご飯食べられないよ俺」
「あそっか、今日の分まだだったねごめん」
私は黒のお財布から1000円出して、美来くんに渡した。
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