第12話 この事実は痛すぎる

朝起きる、早く起きすぎたので二度寝する。

真昼の刻の少し前に来てくれと手紙に書いていたので時間はある。


「あらら、こんなにたたせていいのかしら」


横に変態がいなければ、二度寝できただろうね!

内心怒りを覚えながらも全裸になって横たわっている変態がなんかを言っている。


「私が耐久性固さの確認をしてあげようか?」


「辞めろ」


人の生理現象を見て、言うのがそれか?まじで、なんで全裸なんだよ?いや全裸に関したら一部全裸で寝る人のいるはずだ。よし、全裸であることはどうでもいいとして...よくないけど。それ以上に二度寝したい。


「二度寝する、変なことを言ったら追い出すから」


昨日の食事後、ノンゼノンは何かを思い出したような顔して真っ青になっていた。聞くとどうやら普段泊っている宿屋の借りている期間は今日までだったそうで、俺の部屋に泊まらせてと懇願してきた。下心があるからもしれないと最初は考えていたが、途中で俺が折れて許可した。もちろんノンゼノンが襲うことは禁止にして。


二度寝することにした。横の変態が何かをしだしことを無視した。流石に人の部屋を汚す行為をするほど心がないやつではないと信じている。

途中、柔らかいものがくっついた時、起きようと思ったが面倒になって辞めた。



~~~~~

~~~~~~


「サトウ商会にようこそ、お待ちしておりました」


俺は兄貴に会うために商会にやってきた。

ノンゼノンに耳元で囁かれ起こされなかったら遅刻していた。起こしてくれたことに感謝するがあの変態に起こされたのは恥である。


「あの、サトウアキラさんに呼び出された鎌江コアです」


俺は受付の人に昨日もらった手紙を差し出す。が断られる。


「ご案内します」


慣れたように案内されていく。実際何度も来ている。

兄貴こと佐藤さとうあきらさんとはもう七年の仲である。兄貴は転移者であり、初めは同郷の者として仲良くなっていった。


「どうぞ」


アンティーク風な木製の扉の前まで案内される。案内してくれた方に一礼をして、なんの躊躇いもなく扉を開ける。


「ちょ、誰...コア君か」


「兄貴来ましたよ」


「全くせめてノックくらいしてくれ」


「次の自分に期待してください」


俺は開けた扉を閉めた後、鉄扇を手にもち、ノイズをかける魔法を発動する。


「いつも助かる」


「まぁ、完璧じゃないですけどね」


このノイズをかける魔法は話している言葉を全てノイズに変え、周りに聞こえないようにするのではなく、単語の数か所の言葉に不規則にノイズを入れ、周りからすると途切れ途切れになるような効果である。


対面するように設置されたイスに座る。

兄貴は新聞を手に持って、座り、渡してくる。


「これは?」


そう言いつつ、見出しを見ると、


【ルンデバルト王国崩壊!!!】


ルンデバルト王国がセレーノ教の襲撃によって崩壊させられたことが書かれていた。ルンデバルト王国第二四代女王ルンデバルト・エーリカは磔に、女王を除いた王国にいた人たちは全員串刺しになっていた。よってセレーノ教嫌悪幹部ベッロ・オッディオによるものと当局は確信している。王都の大門が雪山になっていたことから争った形跡があり、魔力鑑定の結果、女王エーリカによるものと判明。セレーノ教に一矢報いたことになる。今後、他国に旅行していた一部の上級貴族は急いで帰国し、臨時政府を設立。女王の娘ルイーベはセレーノ教が襲撃する前に行方不明となっており、現在捜索中。

磔にされている写真と串刺しにされている民の写真の計二枚が貼られていた。


......不味いな。いくら面識があるからといって殺すことに抵抗があるタイプではない。それ以上に活発の幅が広がっていることに危機感を覚える。


「見ての通り、でも...おかしいと感じたことがあったんだ」


兄貴は俺の方を向きながら、真剣に話し始める。

ただ聞くことしかできない。


「新聞に書かれている一部の上級貴族は襲撃を受ける日の昼に旅行に行ったんだ、襲撃があったのは夕方、しかも急いで旅行しにいったようなんだ......わかったと思うけど、偶然にしてはできすぎてる。一つ仮説が生まれてくる、それはルンデバルト王国は事前に知っていた可能性がある」


事前に知る方法?如何せん俺はセレーノ教についてあまり知らない。せいぜい七人の幹部の名前と何を担当しているかぐらいである。


「天敬書と呼ばれてる本だ、わかりやすく言い換えるとセレーノ教の聖書だ、更新が来ると言う違いはあるが.........それを読めばセレーノ教の大体の行動がわかる。通常において天敬書をもてるのは幹部だけ。だがルンデバルト王国が持っていたとしたら?それが可能性である。過去、紛失した天敬書があるのか調べてみたら一冊だけあった......魔神ウラノスが討伐され、セレーノ教が誕生した時、だから五百年前ということになる」


あまりにも壮大な話だ。でもそれが紛失した天敬書の価値を極限までに高めている。


「つまり五百年前に紛失した天敬書をルンデバルト王国は極秘に所持していたということか?」


「私はそう考えている。本当に見つかれば確証を持てるけど、今はわからない」


十分にあり得る話だ。昼の前までグランテノールにいたベッロは天敬書の更新がきたことによりルンデバルト王国に向かわなくてはならず、夕方に到着した。距離は最速で一週間といったところだが、俺が思うに空間を弄る力があるはずなので距離は関係ない。じゃあ、この時間の差はなんだ?


「天敬書にかかることは、時間指定は書かれることはあるのか?」


「ある、噂では夕方から襲撃が始まったと言っているさ」


この問題は解決した。つまりベッロは天敬書に従い、夕方からルンデバルト王国を襲撃、しかし事前に知った女王は一部の上級貴族を逃がし、王国が完全に滅ぶことを回避することを選択したが、昼ぐらいに更新が来たため急いで逃がした。ルイーベが行方不明なのは逃がした上級貴族を女王は信用していなかったから。女王は残り、民と戦うことでルンデバルト王国のことを悲劇だとより印象づけるため、もしくは天敬書に女王が死ぬことが条件に入っていた。今の俺ではこれぐらいが限界か。


「この事実は、痛すぎるな、兄貴」


「......ああ」


ルンデバルト王国なんてどうでもいい。詳しいことを知ったってそこまで意味をなさない。でもセレーノ教によって一国が崩壊した、いや滅亡したというがなす意味はこれからの生活に関わってくる。


ふと、俺は生徒会選挙に対する意欲が無意味ではないかと考えてきていた。



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