第11話 hentaiエルフ

「強くならないと」


そうは言ってもベットに座って虚無を眺めているだけで行動を起こす気がない。差を感じたから絶望したとかではない。

グリージョ・オノーレやベッロ・オッディオと会ってみてわかった。自分はまだ弱すぎる。グリージョ・オノーレと戦った時、グリージョの決定的な隙がなければ捕まっていただろう。ベッロ・オッディオに関したら、出会った時に敵と感じ取れなかった。攻撃でもされたら何もできずにに死んでいただろう。白蛇江を討伐してもうじき二年も経つのに慢心していた。

魔人ウラノスを調べ忘れていたことなんて、今はどうでもいい。


俺は人族の男の中である程度魔力量があるからと優越感に浸っていた。自分の方が優れていると。この二日間でわかったことは戦いや殺し合いにおいて性別は関係ない。性別を抜きにしたら、俺は中の下だろう。学園では魔力量が多い方ではあるが世界をみればそうでない。魔法使いにおいて最も名誉ある”魔女”に匹敵するほどの魔力量をこれから目指せるかと問われると、正直不可能に近い。

少し早いが夕食でも食いにいくか。気分転換だ。

そう決めて、部屋を出て階段を降りていく。


人にみせれる表情をしていないだろうから、人差し指を使って口角を上げる。

前世からずっと自分のことを批判してきたじゃないか、このぐらいのことに慣れていない自分にうんざりしている。もっと悪く自分を言ってきたじゃないか。なに苦しんでいるんだよ。そんなんだから転生しても変わろうにも変われない。


普段なら気にしない一階の明かりがいやに明るく見えていた。


「コア」


また階段付近のイスに座って酒とつまみを嗜んでいるスピオルさんから声がかかる。普段と変わらない雰囲気なので重要なことではないと判断する。


「はい?」


「依頼人からコア宛てに手紙だ」


手紙が投げて渡されたので掴み、一体誰が送ってきたのか見ると、


「兄貴か」


「兄貴?」


「ええ、そう呼んでいます、実際の兄ではありませんよ」


「そうか」


「はい、ありがとうございます」


「ああ」


手紙の内容は部屋に戻ってからでいいだろう。まさかスピオルさんが護衛している商人が兄貴だったなんて驚きだ。厨房に向かい、注文を頼む。

近くの席に座り、手紙を鉄扇と逆の位置にある内ポケットに入れる。


「相席いいですか?」


聞き覚えのある透明感がある声。そこに立っていたのは金髪碧眼の美女。現実では考えられないほどのボキュンボンをしており、特に太腿が太く、ムチムチなのが特徴である。前世なら男性ならおもわず三度見するレベルである。俺からするとベッロの方が好みなのでさらに何も思わなくなっている。


「どうぞ」


「ありがとうございます」


満面の笑みを浮かべ、座る。料理がのったトレーごとにテーブルの上にそっと置く。

このビッチを評価することは辞めている。無駄だから。カリベルトのことに集中した方がまだ良い。


「席は他のところも余っているぞ、処女ビッチ」


このビッチはノンゼノンと名前であり、破られた膜を元に戻す魔法や一時的に男性の性器に似たのを装着させる魔法などを開発した。魔法学会での発表会において伝説となった発言を残しており、”人の本能を増長させることが私の人生をかける目的である。人は本来動物と同じであり、知性という差があるため、絶対的地位を得ている。だが結局は人も動物であり、本能に従うことは恥すことか?いやそうではない。私が手本を見せよう”その後、性別に関係なしに襲ったことが問題となり、魔法学会を追放された経緯をもつ。

さらに一部地方では男漁りで有名な人物と知られており、”男はいついかなる行動において一人にさせるな、襲われるぞ”という言い伝えがあり、その言い伝えが発生した元凶である。


ノンゼノンは魔法学会から直接堕ちた天才と明言されるほど能力は優秀である。魔法の質、魔法の種類、魔力量など、どれをとっても魔女にふさわしいのだが......このビッチの頭の中は下半身なのだ。いや、こいつ、胸も使うから...下半身じゃなくて変態か。


「知っていますよ、でも気になる獲物いたのですから、あと、やっぱり優しいですね。私の種族を呼ぶことを避けてくれて」


「面倒なだけだ」


ノンゼノンはエルフである。しかし容姿をどこからどう見ても人族である。エルフ耳とかそういった人族と違う姿にしてしまうと人がいるから変装魔法を使っていると前、本人から聞かされた。


「そうですか、今、嫌な気持になっている君を私が慰めてあげましょう、今すぐトイレに行きますか?それとも食事後、部屋に行けばいいですか?」


「ノーセンキュだ」


ボロボロとはいえ仮面いつも通りの表情を見破ってくるところとか、本当に面倒だ。でもノンゼノンはいつも変態だという考えがあるから読みやすい。


「どうぞ、注文の品」


厨房からおばちゃんが出てきて、できたばかりの料理がのったトレーをテーブル、俺の目の前に置いてくれる。うまそうだ。


「ありがとうございます」


「あいよ」


ノンゼノンとは前に襲われたことで知り合いになっている。

入学してすぐ、宿屋とはいえ、初の一人暮らしになり、少し忙しくしていた時があった。夜遅くに宿屋に向かっていると物陰から現れたノンゼノンに押し倒された。そのままおっぱじめようとしてきたので鉄扇で腹部を叩きつけ、逃げた。もちろん手加減はしている。それ以降、俺を見かける度に話しかけては喰おうとしてくる。俺も男なので性欲があるが、ノンゼノンに関しても全くそういった欲が湧いてこない。


「そういえば生徒会選挙に推薦人として出るだってね」


「なんで知っているんだ?」


まだ発表前。知っているのは職員と生徒会選挙出馬者のみなはずだ。

単純な疑問だった。


「夜の時間に聞き出したよ、職員から」


そういえば魔法学会の時があったように女性もいけるんだった。失念していた。


「ちゃんと情報が正しいのか二人に聞いたよ、同じタイミングで」


「それ三人でしたことになるよな?」


「そうだよ」


相手とか聞きたくない。多分俺が知っている教師な気がする。でも弱みを知ることができるのか。うーん、悩ましい。


「誰かは伏せておくわ、君だと間違いなく悪用するだろうから」


「悪用じゃない、情報の正しい使い方の一種だよ」


「私からした悪用よ、私としたことを情報として脅迫するのは。ベットの上で得た情報なら合法だけど」


脅して演説する場所の確保を狙おうとしただけなんだが。絶対江戸カルエは演説の邪魔してくる。するならされてもいいよね。


「まぁ、諦めるか。いい加減食べていいか?」


「そうね、目的は話すことじゃなくて、このあとすることに対する体力をつけるために食事することだからね」


俺は思わずノンゼノンに対してすねを蹴る。

一体誰がするかよ。


嫌な気持ちが緩和されていることを見て見ぬふりしている自分はノンゼノンからの魔の手を回避して次の日を向かうことができたのだった。










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