生き物エッセイ集
百合之花
第1話 金魚は可愛い
最近やたらと日記的なようでエッセイ的な何かを書きたくなり、それを誰かに見て欲しくなってきたので書こうと思う。
記念すべき1回目は比較的受け入れやすい生き物について語るほうが良いかなと言うわけで、知らない人などいないであろう金魚についてである。
おそらくは知名度100%の魚である金魚。
元もとは黒よりの地味な銀色の魚であるフナが突然変異を起こして赤色として生まれてきたものであり、それを突然変異ではない遺伝的に安定させた魚が金魚である。
この金魚、他の魚と違って非常に面白い特徴がある。
それはめちゃくちゃペットに向いている魚である、ということだ。
実は魚というのは結構な知能を持つらしい。
動物の知能を測るテストに、ミラーテストと言う鏡に映る自分を認識できるかどうかのテストがある。
鏡に映る自分を、自分の姿が映っていると認識できるかどうかを測るテストであり、類人猿やゾウといった一部の生き物しかクリアできなかったテストを一部の魚はクリアできるのだという。
さらにまた別の魚は人の顔を識別し、さらには横顔であっても認識できるのだとか。
意外な知能の高さが金魚にも発揮されているのか、金魚は「懐く」。
まあ、厳密にはそう見えるだけだと思うのだが、金魚は飼い主が水槽の前に立つと餌クレ餌クレとすごくアピールして近づいてこようとする仕草を見せてくれる。
人慣れした鯉がたくさんいる池で餌をくれと淵に寄ってくるあの姿を思い浮かべて貰えればいい。
これが実に可愛いのだ。
他の魚では知能が意外と高いと言っても、こうはいかない。
爬虫類や両生類などもそうであるし、基本的には慣れたそぶりは見せてくれるものの、金魚ほどに近づこうとはしてくれないのだ。
どうにも最低限の警戒心は残したままである事が多い。
さらに金魚の素晴らしいところは胃がない魚、無胃魚と呼ばれる魚であることもそうだ。
胃がないということは胃液で溶かす時間がなくなり、食べ物がお腹の中に入っている時間が短くなる。
自社の研究所を所持してる、魚などの餌を開発、販売している有名メーカーには調べによると、食べたものや水温にもよるが一部の金魚用のエサであれば3時間も経たないうちに排泄口付近まで送られるのだという。
つまりは食べたそばからすぐに小腸へと餌を送られるために、お腹がいっぱいになりにくいことから、結構な大食漢であり、その分餌やりを楽しめて、フンが多いのも「こんなに食べたんだねぇ感」を感じられるのもまた金魚の可愛いところである。
だからといって別に燃費が悪いわけではなく、個体や品種、環境にもよるが数週間の断食ぐらいへっちゃらで、餌やりを忘れたりするズボラな人や出張が多いなんて人でも飼えるのもまたありがたい限りである。
むしろ餌を与えないほうが糞などが減る分、病気になりにくくなったり水換えの手間を少なく済ませたりできる。
まあ、楽しい餌やりを控えた場合、「じゃあなんで金魚を飼っているんだ?」となりかねないので、敢えて餌やりを控える金魚好きは居ないと思うけれども。
沢山餌を食べて、ぷりぷりと立派な物を出しているのを見るのは満足感に似た、なんとも言えない気持ちを抱くもので、金魚飼育における1番楽しい部分だと個人的には思う。
さらにはそれを何年も続けて大きく立派に育った金魚の姿ときたら、鱗の一つ一つの形や色調を眺めて、なかなかどうして、グッとくるのだ。
その姿を肴に酒を飲めるレベルだ。魚だけに!魚だけにね!いや、まあ私はお酒は一切飲まないのだが。
とはいえ。
もちろん良いところばかりではなく、悪い部分というか、扱いにくいところもある。
まず、金魚は他の魚との相性が良くない。
長所としてあげた大食漢で餌喰いがいいという点は短所にもなりえる。
金魚と別の魚を同居させると金魚ばかりが餌を取ってしまい、他の魚と一緒に飼う場合、なかなか餌を行き渡らせにくいのだ。
これは金魚同士であっても起こり得ることで、後から他の生き物を飼いたいっとなった時に別でスペースやら水槽やらを用意しなくちゃならない場合があるのは些か扱いにくい点である。
餌を生き渡らせようとするとより沢山の餌を一度に入れなくてはならず、それによる水質の悪化や、ピンセットなどで他の同居生物に金魚に食べられないように手早く与えたりという余計な手間暇が必要になるため、これぞと決めた1匹のみを飼うのが1番スマートなやり方である。1匹のみを集中して育てた方が大きくなり易くもなるし。
まあ、金魚にハマると、あの柄の子も、この品種が、あのレア個体は…とあれこれ欲しくなって、金魚は比較的大きくなる(品種にもよるが平均して15センチ前後。環境や遺伝、品種にもよるが最小が10センチくらい、最大サイズになると60センチを超えてくるという)魚な上に品種や産地ごとに分けた方がトラブルが少なくなるというベターに従って、結果的に水槽がやたらと増える羽目になるのだが。
次のデメリットが水の汚れである。
大食漢であるということは、たくさんの排泄物を出すということである。
餌を少なくすれば、その分フンも少なくなるが、楽しい餌やりを控えるなんて!ってことでつい餌をやりすぎて水質悪化からの病気で死亡、なんてのは金魚初心者あるあるである。
金魚の場合、特にエラ病という病気が個人的に1番怖い。
水中に普通に存在する細菌や寄生虫がエラで悪さをすることで発症する病気で、その名の通りエラが病気で機能しなくなるのだが、これがタチの悪いことに見た目では一切わからない。
一見すると健康に見えてしまうのだから恐ろしい。
私の経験上、初期状態で気づいてから治療(一度水換えを半分くらいしてから、0.5%濃度の塩水になるように塩を混ぜた水で飼育)を開始すれば比較的楽に治るのだが、初期症状を見逃してしまうと短期間のうちに急に死ぬ、ということになる。
進行が早い、というか死ぬまでの期間がかなり短く、急に悪くなっていって急に死ぬ病気なので、注意が必要である。
突然死したように見えてしまうのが厄介な点。
たまたま死んだように見えてしまうのだ。
初期症状はエラの動きが早いとか言われるが、私は餌を食べる食べないで判断している。
いつもどおりの量しかやってないのに食べ残しがあったり、食べてもすぐ吐き出している姿を確認したらすぐに治療開始である。
金魚が餌を食べないのはカレーは飲み物とか言っちゃう人が急に何も食べなくなるに等しい異常事態である。
なんなら他の病気であれば金魚の場合、餌を普通に食べる。
もちろん放置しすぎて重症化するとべつだ別だが、普通に飼っていて、ある日急に餌を食べなくなった場合は何かしらの別の病気のように見えても、エラ病を併発している、ないしはエラ周りに何かしらのトラブルがあることは疑おう。
これらのトラブルを避けるためにはとにかく水質の維持が1番である。
毎日水換えできれば良いが、一般的には濾過器をつけて1週間か2週間に一部の水換えをするというのが基本だろうか。金魚の場合、全然間に合わないことがある。
特に小さい水槽に複数匹飼っている場合だ。
個人的には小さい水槽(横幅30センチくらいの手頃な大きさのタイプ)の場合、1匹が安定して飼えるギリギリ。2匹目は…まあ水換え頻度を上げて、餌やりを控えめにしたり、濾過器を大きな物にすれば何とかなるかな?レベルだ。
かといって水替え頻度が多いとそれはそれで水質が安定せずに病気がちになったりする。
私の場合、あえて底砂は敷かず、流れが緩やかな場所を作るように水流を調節している。
こうするとフンが一部の底に溜まり、後からまとめてスポイトなどで纏めてとれるので管理が若干楽になるのだ。
さらに金魚のフンを食べてくれるマメタニシやレッドラムズホーンなどを一緒に飼うのもおすすめ。
タニシをはじめとする貝類は金魚と相性のいい数少ない生き物のうちの一つだと思う。
なにせ金魚のフンが餌になるので、わざわざ貝類用に餌を与える必要がなく、水替え頻度が多いことで水槽の壁面に生えやすい茶ごけを食べてくれたりもする。
タニシに至っては濾過摂食という水中の有機物を濾して食べることで水質の維持にも役立ってくれる最強のクリーナー生物である。
もちろんタニシ自体もフンを出すのでフンが完全になくなるわけではない。
しかし、胃がない分、消化吸収しきれない栄養が含まれた金魚のフンを食べることで、水の汚れの原因の一つである栄養分をタニシが消化。
結果、フンの総量自体はタニシのフンとしてカサが減り、金魚のデメリットである水の汚れやすさをも緩和してくれるのは実にありがたい。
さらには水質の良い悪いも判別してくれる。
マメタニシはサザエのような蓋を持っており、水質が悪くなると殻にこもって身動きを取らなくなる。そうなったら水換えをしよう。
なお、同じタニシの仲間として大型のマルタニシやオオタニシというのが売っているがそれらは餓死しやすく、水質悪化に弱いのでおすすめできない。
また、マメタニシは私自身、金魚の糞を食べるのかを確認済みではあるが、この2種が金魚の糞を食べてくれるかは分からない。
デカい分食べる量も多そうではあるが…
ただ、マメタニシよりも水質に敏感なため、水質の生きたバロメーター替わりとしてはマメタニシ以上におすすめである。
ちなみに底砂を敷くと、フンを始めとした余分な栄養分を分解してくれる細菌類の住処になるため、水質が安定しやすくなる。が、定期的にメンテナンス(底砂の中に堆積した分解しきれなかった汚れなどを掃除する必要がある)が必要だったり、水槽を片付けるときの手間暇を考えて私は敷かない派である。
メンテナンス性重視が私の飼育スタイルなのだ。
他にも色々書きたいことはあるが、それはまた次の機会に回して、次回はカタツムリについて書きたいと思います。
最近買い始めたミスジマイマイは可愛いという話になる予定。
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