逆襲

 シボレーが停まり、運転席から島川が降りた。 「じゃあコレ借りるぞ」

 そういって筧は助手席を降り、運転席に

移動した。

「行先くらい教えてよ」

「お前は知らねえ方がいいんだ」

「けどさ」

「心配すんな。これで全部終わるからよ」 「・・・・」

「ソレはどっか安全なトコにしまっとけ。

いいな?」

 筧は島川が腹に挿したリボルバーを

見て言った。


 島川は走り去るシボレーを心配そうに見送ると 鍵を開け、自分の店に入った。


 カウンターに入ると冷蔵庫を開け、 ショートのハイネケンを取り出す。

 瓶ごと煽った時ー ドアが開き、

男が入ってきた。

「悪いね、今日は営業してないんで」

 男は無視してカウンターに腰掛ける。 「・・・・なあ。聞いてる?」

「出せよ」

 男は正面に立つ島川を見もせず、煙草に火を

点け言った。

「あ?」

 島川の顔が歪む。

「いいから出せよ」

 男は煙を吐き出してもう一度言った。 「・・・・やべえ奴かよ」

 島川は呆れる様に小声で笑うとー

「何が欲しい?ビールか?」

「金」

 男は初めて島川を見据えて言った。

「あ?」

 島川が警戒の表情で男を見返す。

「どっかのバカ野郎どもが、他人騙(うた)って

せしめた金だよ」

 男の言葉に、島川は腹に挿していた

リボルバーを抜いた。

 廃工場でぶっ倒れてた2人組の片割れか!?

「何しに来やがった!?」

 島川が銃口を向けた男に吠えた時、

裏口の方から物音がした。

 島川が銃口の向きをそちらに変えた刹那、

ビールサーバー用の 5ℓ生ビール樽が飛んできた。

 島川は咄嗟に引き金をー 引く間もなく、

スチール蓋が外されたビール樽がリボルバーを

持つ手を直撃。

「ぐあっ!」

 樽から放出されたビールを浴びた島川が

手の痛みに顔を顰(しか)めながら、床に落ちた

リボルバーに目をやると目の前に誰かが立った。 「!?」

 大男が島川の額に チョーパンを決めた。

「ぐはああああぁっ!!」

 島川は叩き付ける様に両膝を床につくと

そのままうつ伏せに倒れ悶えた。


「あ~あ。死んだんじゃねえの?」

 腰を上げ、カウンター越しに倒れた島川を

見ながら直也が言った。

「バカ。死なねぇ程度にしといたよ」

 床に落ちたリボルバーを拾い、カーゴパンツの後ろポケットに挿しながら鉄男が言った。

「よお、もういいぞ」


 鉄男がそう言うと、裏口から勇次が

やってきた。

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