気配を消せ!

「ヤバかったぁ・・・・」

ガラケーを助手席に放った。

まだ動悸が収まらない。

 勇次はグミを何粒か口に放り、

ガシガシと噛んだ。

 そして前方の家を注視した。


 数分後。


 フロントガラスの向こう、上着を羽織った

お父さんが現れた。

 勇次は慌てて、ガラケーを取り出すと

鉄男を呼んだ。


「で、出てきました」

鉄男が電話に出るなり、勇次は言った。


ー父親か?母親か?ー

変わらず、弱弱しさは拭えないが

太い声が言った。


「えと、お父さんです」


ーよし。後を尾つけろー


「尾つける?」


ー父親が、サツや誰かと落ち合ったり

連絡を取り合う様ならすぐに連絡しろー


「わ、わかりました」


ーいいか?絶対気づかれるなよ。気配を消せ。

対象を凝視して見逃すなー

 鉄男は念を押す様に言った。


「は、はい」


ーもう一度言う。何かあったらすぐ連絡しろ。 わかったな?ー


「・・・・わかりました。何かあったら、すぐ」


通話が切れると、勇次は慌ててハイエースを

降りた。


 気配を消す。そう意識しながら。






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