第2話 銃器の発明された異世界で装備品が弓だった

深夜。


転生先の世界と現実世界は時刻が同じだった。


真夜中の街に放置された正太郎。




正太郎は、何を成し遂げれば現実世界に復帰できるのか肝心な事を聴けていなかった。




「どうしよう…何を成し遂げればいいのか…」




しかしここで正太郎はピンと来たのだ。




「トワイライトジェネシス―西風の魔物とプリンセス―」とは…




このゲームの主人公である勇者レモンハートは、まず20歳の時、この世界で一つしかない大学(帝国学術院)を飛び級で卒業する。その1年後に婚約者メルセデスと結婚する。メルセデスの祖父で帝国正教会の枢機卿であるスィスィデが主催する結婚式で幸せな時間を過ごす。




しかしレモンハートは、結婚式の主役にも関わらず、駆け付けた帝国軍の衛兵に捕らえられる。そして悪魔崇拝の嫌疑で裁判になり、最後はインフェルノ監獄に幽閉されてしまう。それら全てが枢機卿スィスィデの謀略だったというシナリオだ。




34歳の時に革命軍の手で脱獄に成功するまでの14年間はゲームが進展しない。




その後革命軍の力を借りてレモンハートが復讐に成功する(教皇になっていたスィスィデの教皇軍を倒す)と、パンドラの箱が空いて魔王トワイライトジェネシスが出てくる。




「馬鹿な!私の力で封印し続けていたというのに!」と言われる。




魔王が降臨するまでの歳月はプレイヤーの実力による。


つまり主人公が脱獄してから教皇軍撃破までのゲーム内時間の縛りは無い。




ゲームは魔王が降臨してからの話がずっとアップデートされ続けていて、エモンのような重課金の廃人は、とっくの昔に教皇軍を倒して、ひたすら勇者軍の新・強キャラに課金したり、魔王軍の新・強キャラを倒したりして遊んでいた。




正太郎は、


「今がゲーム内時間でいつなのか知る必要がある…!」


と思った。




主人公・勇者レモンハートが20歳の時、ゲーム内時間とはウンウンビウム暦10856年だ。いまウンウンビウム暦何年なのか…




正太郎は、親切な人を探した。




親切な女の人は、


「ウンウンビウム暦10869年ですよ!ハンサムな御方!」


と教えてくれた。




革命軍がインフェルノ監獄を襲撃して勇者レモンハートを脱獄させる1年前だった。ついでだから親切な女の人に鏡を見せてもらった。




鏡に映った正太郎の顔は、見た事のないイケメンだった。




親切な女の人は、


「天が生み出したような凛々しい御顔ですね♡」


と言った。




正太郎はこの世界で超絶技巧超イケメンだった。




エモンはどんな顔に転生したのだろう…。




正太郎は、


「革命軍って何処にいますか?」


と聞いた。




親切な女の人は、


「きゃああああああ!革命軍が来たわぁああああ!」


と叫んで逃げて行った。




しかし20メートルくらい逃げると、また立ち止まって何事も無かったかのように歩き出した。遠くから観察していると、まるでゲームのキャラクターのように動いている。




正太郎は、この世界がゲームの中である事を再認識した。




正太郎は、別の老人に、


「ここは何ていう街ですか?」


と聞いた。




老人は、


「ポインヨタウンじゃよ」


と答えた。




正太郎は、


「ポインヨタウンは革命軍の支配地域だったはず…そうか…!まだ支配されていないんだ…!インフェルノ監獄襲撃前に革命軍がここに来て帝国軍を蹴散らすのだな…!街の人も何人か死んじゃうんだろうな…!街にいたら危ないか!」


と気が付いた。




正太郎は、今の自分に何が出来るのか把握する所から始めようと思った。




装備は、弓だった。




正太郎は、


「おかしいな…」


と思った。




この異世界は銃器が発明されている。


ライフル銃やピストルが存在する。


剣、槍、銃、魔法、そういったもので敵と戦うのだが…。




正太郎は、


「弓が装備ってどういうことだ…弓は武器じゃなくて狩人設定の装飾か何かか…」


と思った。




…正太郎は知らなかった。




正太郎が転生したのは未実装キャラクターの「ハートのキング」だった。




現実世界では再来月にリリース予定の勇者軍・強キャラ「ハートのキング」




装備品は【ハートのキングの大弓:ハートのキングは袋のモノを取るように敵陣で、敵総大将を射抜きました。後世のあらゆる猛将の手に渡ったものの、ただの弓でした。ハートのキングは弓の名手だったのです】だった。




老人は、


「この御時世(※ゲーム内で銃器が発明されているという意味)弓を使うのであればとんでもない名手で御座いましょうな」


と言うと、スタスタと歩いて行った。




正太郎は、弓を構えると、確かに何でも射抜けそうな自信がそこはかとなく湧いて来た。




「俺は…!弓の名手…!なのか…?!」




正太郎は、そう思うと、まず革命軍がポインヨタウンに侵攻した際に死なないようにする事が先決だと考えた。




「ポインヨタウンに一番近い帝国軍支配地域はイグラードベリーという都市だった気がする。イグラードベリーまで何キロメートルだろうな…」




正太郎は、その日の晩はポインヨタウンで野宿をして、翌朝になると都市イグラードベリーへ向けて歩き出した。


距離にして30キロメートルの道だ、1日あれば到着すると思われた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺が間違ったネトゲ廃人を転生させた話し 藤倉崇晃 @oshiri-falcon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画