祠を壊しただけなのに

烏の人

第1話 チャリで祠に突っ込んだ

息抜きにゆるーく、始めさせていただきます。

―――――


 北澤きたざわ あきら(16歳)。今日俺はチャリで祠に突っ込んだ。祠はぶっ壊れた。もうそれはそれは見るも無惨に跡形もなく消し飛んだ。


「やっ…べぇ…。」


 いや、どうすんの?これ?自治体に連絡?それ以前に警察?つか、系車両の事故だろ?携帯ここ繋がんねぇんだけど?

 己の家が山にあることを本当に恨むよ。


「あー、君、それ壊しちゃった?」


 嘘だろおい!無精髭のおっさん降臨しちゃったよ?


「え、あ、はい…事故っちゃって…。」


「そっかぁ…残念だけど、君もうすぐ死ぬよ。」


 ここまでがテンプレ。


「そ、そんなことあるんですか?」


「あるよ。」


「嘘だあ。」


「んだよ、昨今話題のテンプレルートなのに興味なさげだな。」


「だっていないってわかってるもん。」


「言うねェ小僧…んま、軽口もその辺にしときな。」


「なに言って―――――。」


 突如として襲ってきた胸痛。な、なんだこれ?こんなこと今まで一度も…。


「ほれ見たことか。怒りを買った。」


「な、なんなんですか…!」


「まぁまぁ、落ち着きたまへよ。小僧君。」


「何が起きてるかわかるんだったら助けてくださいよ!!」


 締め付けられるみたいに胸が痛い。呼吸もまともにできない。まさか本当に…呪い…?


「いやぁ、俺が助けたんじゃあ意味がねぇんだよ。んてことでだな。」


 そう言うとおっさんはもがく俺の額を指差す。


開心眼変見鬼かいしんげんへんけんき


「…!?」


 まばたきをすれば見えなかったものが見えてくる。


「どうだ、これが今のおまえについているまじないだ。」


「な…なに…これ…。」


 俺の胸を踏みつけているのは、かろうじて4足の獣とわかる見た目をした白いだった。


「さて、おまえだったらどうする?」


「どうするもなにも助けてくださいって!!」


「うーん…駄目かぁ…。」


「駄目ってなんですか!駄目って!!」


「いやぁ、そのままそれ調伏してくれないかなぁとか思って。」


「んなもんできるわけねぇでしょうが!!」


「いやぁ、ワンチャン君神社生まれだから行けるかなぁって。」


「なんでそんなこと…ってか…まじでもう限界…。」


「はいはい、わかったわかった。」


 そう言うとおっさんは2本指でフッとその場を払った。それだけなのに、俺に乗っかっていたあの巨大な獣は消える。


「楽に…なった…?」


「まあ、こんなもんやろ。」


「ま、待ってください!!何したんですか!?」


「何って、助けてって言うから助けたんじゃないか。」


「あなたは…いったい…。」


 結局、霊能力会得イベントは逃してしまった。まあ、別になくてもいいんだけど。と、言うか本当に存在するんだな…幽霊とかって。


 長い階段を登り、鳥居にたどり着き足が止まる。


「な…。」


 そう言えば…俺は今、言わば視える状態。それを忘れていた。


「なんじゃこりゃ!!??」


 我が家に張り巡らされた蜘蛛の糸を見てそんな言葉を吐くのだった。

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